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日本の水産業と魚たちを守る
魚食文化×サステナブル・シーフードへの取り組み

2022.4.14
日本の水産業と魚たちを守る<br><small> 魚食文化×サステナブル・シーフードへの取り組み</small>
photo by tkyszk

世界が空前の魚食ブームに沸く中、日本では魚の生産量・消費量が減少し続けています。日本の魚と魚食文化を守るためにできることを考えていきましょう。

日本の水産業について。そして、私たちができること。

太平洋クロマグロの親魚資源量の回復予測〜現行措置を継続した場合〜 (水産庁『令和2年度水産白書』より)
※初期資源量とは、資源評価上の仮定を用いて、漁業がない場合に資源が理論上どこまで増えるかを推定した数字

近年、漁業・養殖業の生産量、食用魚介類の消費量は世界的に増加している。ところが日本では、その流れに逆行するように生産量、消費量ともに減少。「消費量が減少しているのは世界の主要国で日本だけ。日本はもはや魚大国ではないのです」と、水産庁の山本隆久さんは言う。その危機から脱すべく、国は日本の魚そして魚食文化を守るために、さまざまな取り組みを行っている。

基礎となる水産資源を維持・回復し、適切に管理するため、国と都道府県が連携を開始。現在日本の海にどれくらいの魚がいるのか、調査を進めている(調査対象は2021年度で192魚種)。また、2020年12月の改正漁業法(新漁業法)の施行に先立って決定されたロードマップでは、2030年度に漁獲量を444万tまで回復させることを目標とし、最大持続生産量(MSY/資源を減少させず、持続的に利用できる最大の収量)をベースとした漁獲可能量(TAC)を設定。水産資源の持続的な利用確保を目指している。

TACによる資源管理は世界的に広まっており、資源量が回復しつつある魚種もいる。たとえば太平洋クロマグロ。ピーク時の資源量は約16万tだったが、2010年には1.1万tまで減少した。これを受け、日本も参加する中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)が2015年から管理を強化することになった。その結果、2018年には2.8万tまで回復。2024年までに4.3万tまで回復させるという目標達成にめどが立ったことで、昨年末のWCPFCの年次会合では、2022年から漁獲枠を増やすことが決まった。

こうした水産資源の適切な管理と合わせ、注力しているのが水産業の成長産業化。沖合養殖や輸出の拡大を目指す取り組みがはじまっている。いずれにおいても注目されているのがマーケットインの発想。消費者の多様化するニーズや、輸出先国・地域の食文化に合わせた生産・流通・加工・販売を行うことで、日本の水産物の価値向上や販路拡大を目指す。

また、漁村の活性化にも力を入れている。日本の漁業就業者は年々減少し、高齢化も顕著。これに対し国は、人材の確保・育成のための事業へ支援を行うなどして、新規就業者数を確保するとともに、就業環境の改善、生産性や所得の向上を目指している。また、ブルーツーリズム(漁村での体験型観光)や直売所、漁港レストランなど、海や漁村に関する地域資源の価値や魅力を生かしながら、漁村の人々の所得機会の増大を図る取り組み=〝海業〟も推進している。

「いろいろな取り組みを行っていますが、何より大切なのは国産の水産物を食べること」と山本さん。日本での食用魚介類の自給率は、1964年度の113%をピークに減少傾向にあり、現在は57%(2020年度)。つまり日本で食べられている魚介類の約半分は輸入品ということになる。日常的に魚や水産加工品を食べていると思っていても、原料が輸入品であることも少なくない。いまこそ国産の水産物を選び、食べるとき。それが日本の漁業者への応援となり、水産業を盛り立てる力になる。

 

海に囲まれた日本の漁獲量とは?

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text: Miyu Narita illustration: Yusei Nagashima
Discover Japan 2022年2月号「美味しい魚の基本」

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