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香川の風土をたどる
名建築・アートの旅へ
前編|建築家・丹下健三が表現した“モダニズム”に浸る

2026.2.20 PR
香川の風土をたどる<br>名建築・アートの旅へ<br><small>前編|建築家・丹下健三が表現した“モダニズム”に浸る</small>

うどん県として親しまれる香川は、多様な表情を有している。そのひとつがアート県としての一面だ。各地に美術館があり、名建築も多数。「アート県かがわ」に至った背景とともに、おすすめのスポットを紹介していく。

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「アート県かがわ」の礎を
築いた存在とは?

香川は暮らしの中にアートが息づいている。「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」や「香川県立東山魁夷せとうち美術館」のように建築としての評価も高い美術館が多く、彫刻家の流政之やイサム・ノグチをはじめ世界的アーティストが手掛けたパブリックアートも点在。

香川県立東山魁夷せとうち美術館の外観

さらに建築家・丹下健三の代表作で、国の重要文化財指定の「※香川県庁舎旧本館及び東館」、建築家ユニット・SANAAの設計でユネスコの国際的建築賞「ベルサイユ賞」最優秀賞に輝いた「あなぶきアリーナ香川(香川県立アリーナ)」など、名建築と称される公共施設も枚挙にいとまがない。

※現在は両棟合わせて「香川県庁舎 東館」

香川県庁舎の外観

今日の「アート県かがわ」の礎を築いたのは、1950年から6期24年もの間、香川県知事を務めた金子正則だといえよう。金子は田園都市構想によるインフラ整備や讃岐うどんのブランディング、日米親善の増進といった幅広い県政により、戦後の復興に尽力。一方で「政治と芸術はひとつのものである。ともに人の心を豊かにするために捧げなければならない」との信念をもち、県庁舎の建設、庁内に新設したデザイン室でのデザイン戦略研究、優れたクリエイターの招聘など、芸術・文化振興に多大な影響を与えた。

とりわけ県庁舎の存在は大きく、1958年の竣工以降、香川の建築・アート領域の発展へ寄与する起点となっていく。

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建築家・丹下健三が表現した
“モダニズム”に浸る

《香川県庁舎》
アート県かがわの礎を築いた街のシンボル

戦後、空襲によって焼け野原となっていた香川・高松の街。だからこそ金子は県庁舎の再建にあたり、「民主主義時代の県庁建物としてふさわしいように」と丹下に設計を依頼する。丹下が手掛けたモダニズム建築の画期をなす県庁舎は、まさに香川の新時代の幕開けを象徴するものとなった。

香川県庁舎の1階ロビーには猪熊の陶板壁画『和敬清寂』が。竣工当時から使われているベンチなどの家具は、丹下健三の研究室のデザインで桜製作所が製作。中央・コア部分を挟んだ反対側は県庁舎の資料を展示する建築ギャラリーに

柱や梁の構造、連続する小梁と大梁、勾欄付きのベランダといった日本の伝統木造建築の様式を鉄筋コンクリート造で表現。県民に開かれた場にすべく、ガラス張りの1階ロビーや開放的なピロティも導入した。庁内には画家・猪熊弦一郎の壁画、インテリアデザイナー・剣持勇の家具、後に木匠・ジョージ・ナカシマの家具製作を継承する「桜製作所」がつくる木製家具などが採用された。金子の方針で、庵治石などの県産の資材も多用している。1958年に県庁舎が竣工を迎えると丹下の国際的な評価は一段と高まり、国内外からの視察が相次いだ。それと同時に、香川は時代を彩るクリエイターらを惹きつけていく。

「丹下建築で最も成功したピロティ」といわれ、通りから自然と立ち寄れる。床には県産の石が敷き詰められ、丹下らがデザインした石灯篭が設置されている

そのキーマンとなったのが香川で生まれ育ち、金子の旧制丸亀中学校(現・丸亀高校)の先輩にあたる猪熊である。猪熊は県庁舎建設計画で苦心する金子に建築の重要性を説き、丹下を推薦した人物。交友関係の広さと面倒見のよい朗らかな性格もあって、イサム・ノグチ、建築家・山口文象や谷口吉生らさまざまな縁を香川と結び、故郷へ貢献した。

建築家・丹下健三の初期代表作であり、民主主義の精神を体現したモダニズム建築の傑作。コンクリートで構成した日本の伝統木造建築、有機的につながるオープンスペース、多くのクリエイターとの協業による「芸術の総合」、中央に背骨のように耐震壁を集約したセンターコア・システムなどが評価されている。2019年に耐震改修工事が完了した現役の県庁舎では、竣工時から変わらず1階ロビーやピロティ、南庭が開放され、多くの県民に親しまれている

香川県庁舎
住所|香川県高松市番町4-1-10
Tel|087-831-1111
開庁時間|8:30〜17:15
休業日|土・日曜、祝日
料金|無料
www.pref.kagawa.lg.jp
 

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香川のまちを彩る
新たな建築スポット

《あなぶきアリーナ香川(香川県立アリーナ)
瀬戸内の景観に溶け込み、高松の街とつながる

高松港、JR高松駅に近接し、アクセスもしやすい。メインアリーナの収容人数は中四国最大級で、トップアーティストのライブも多数開催している
写真提供=香川県

2025年、香川のウォーターフロント「サンポート高松」に誕生した新アリーナ。設計はSANAAが手掛け、メインアリーナとサブアリーナ、武道施設を瀬戸内海に浮かぶ島々のような一枚の大屋根が覆い、駅、広場、港までがゆるやかにつながるひとつの公共空間を目指したという。

写真提供=香川県

メインアリーナの「交流エリア」はイベントがない日には開放され、カフェやベンチで寛げる憩いの場となっている。ユネスコが創設した「ベルサイユ賞」の「世界で最も美しいアリーナ2025」最優秀賞を受賞するなど、建築的価値も世界的に認められている。

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「交流エリア」の開放や、期間限定のプロジェクションマッピングなど、アリーナを活用したさまざまな観光コンテンツも開催されており、開業後わずか1年足らずで、香川のランドマークとして県民に愛される存在となった
写真提供=あなぶきアリーナ香川

あなぶきアリーナ香川(香川県立アリーナ)
住所|香川県高松市サンポート6-11
Tel|087-825-1313
営業時間|9:00〜21:00(利用状況による)
定休日|12月29日〜1月3日、毎月1回不定休
料金|日常開放(イベントや施設利用は有料)
https://kagawa-arena.com

 

【後編】
アート文化を名建築で愉しむ
おすすめスポットを紹介!

 
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香川の風土をたどる
名建築・アートの旅へ

前編|建築家・丹下健三が表現した“モダニズム”に浸る
後編|アート文化を名建築で愉しむ

text: Nao Ohmori photo: Mariko Taya
2026年2月号「訪ねる建築暮らす建築」

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