とらやの羊羹は、やっぱりすごい。
室町時代後期に京都で創業し、御所御用を務めてきたとらや。老舗の暖簾を守りながら、いまの時代に合う菓子をつくり続けてきました。やっぱり、とらやといえば羊羹です。そういわれる理由はどこにあるのでしょうか? 日本を代表する老舗の秘密がいま、解き明かされます。
とらやの羊羹が美味しい理由
とらやの羊羹はすごい。日本全国でその美味しさが知られ、手にすればずっしりと伝統の重みを感じ、甘くて、後味は潔い。原材料は北海道産のえりも小豆、精製度が極めて高い白双糖、長野や岐阜の山間地で天日干しでつくられる天然の糸寒天のみ。富士山の伏流水を使用し、羊羹に仕上げていきます。
1978年、美味しい羊羹をつくるために御殿場に工場を建てました。そこでの羊羹づくりは3日にわたります。1日目は小豆を煮て羊羹専用のあんをつくり、寒天を準備。2日目は羊羹を煉り上げます。あんに寒天と白双糖を加え、仕上がりは「エンマ」と呼ばれる大きなしゃもじから滴る羊羹の状態で、粘りや硬さを判断し、3日目にかけて固めていきます。
バラつきのある天然の材料を使い、日によって温度や湿度も異なる中で、常に一定の味を保つのがどれほど難しいことか。とらやに長年伝わる羊羹の製法はマニュアルには表せないものがあり、熟練の職人の技が代々とらやの羊羹を支えているのです。
そもそも、なぜ「夜の梅」?
とらやを代表する小倉羊羹の銘が「夜の梅」だというのをご存知でしょうか?
「夜の梅」は、羊羹の切り口に見える小豆を、夜に咲く梅の花に見立ててつけられた銘です。「夜の梅」の記述は1694年の古文書にありますが、羊羹の菓名であることが最初に記されたのは1819年の文献でした。花の姿はおぼろげながら、闇から漂う白梅の香りを愛する日本人の繊細な感性が、数百年も前から和菓子で表現されていたのです。
どこか懐かしい「おもかげ」
「夜の梅」と人気を二分するのが、沖縄の黒砂糖を加えた羊羹「おもかげ」です。
「おもかげ」という銘は、黒砂糖の独特の風味に、駄菓子の黒棒などを食べた、懐かしい昔を思い起こさせる奥ゆかしい言葉から名づけられました。黒砂糖を使っているのに、後味はすっきりとしています。
お茶やコーヒーによく合うのはもちろんですが、小さなダイス状にカットして、ぜひシャンパンと合わせてみてください。和菓子である羊羹が洋の趣になり、羊羹の新しい世界が広がるはずです。
とらや 銀座店
住所|東京都中央区銀座7-8-6
Tel|03-3571-3679
営業時間|10:00~20:00、日曜・祝日~19:00
定休日|元旦
https://www.toraya-group.co.jp/
text: Yukie Masumoto, photo: Akito Ochiai, special thanks: TORAYA