島根県松江市 彩雲堂の「やまかつら」
《福田里香の民芸お菓子巡礼》
民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は創業150年を迎えた島根県松江市の和菓子店・彩雲堂の「やまかつら」を紹介します。
福田里香(ふくだ・りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。14年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中
「島根は出雲民藝館をはじめ湯町窯、出西窯などの民窯がある民藝運動に縁の深い土地です。旅をするならお土産はぜひ「彩雲堂」で、と以前にも書きました。彩雲堂の包装紙は棟方志功の作。木版画ではなく繊細な筆絵なのも趣があります。
彩雲堂は江戸時代を代表する茶人の一人、出雲松江藩の7代目藩主・松平不昧公の御歌から命名された銘菓「若草」が有名ですが、この季節であれば「やまかつら」はいかがでしょう。2001(平成13)年に、松平不昧公の生誕250周年を記念して誕生した羊羹菓子です。
「やまかつら」は東雲羹(小豆羊羹)と黒糖羊羹の上に叢雨(あんそぼろ)の3味が楽しめる押し物。鹿の子豆に、炊き上げた小豆の粒が残る羊羹に、若葉色のあんそぼろをふんわり重ねた創意は上品な味わいです。切り分けて口に含めば多層に重ねた素材の香味が広がります。不昧公のお言葉に「客の心になりて亭主せよ。亭主の心になりて客いたせ」という名言があるのだそう。「やまかつら」はお茶席にもぴったりの銘菓です。
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彩雲堂
住所|島根県松江市天神町124
Tel|0852-21-2727
営業時間|9:00〜18:00
定休日|不定休
www.saiundo.co.jp
text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
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