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富山県富山市 林盛堂の
地元産荏胡麻と本練羊羹が織りなす「素玄」
《福田里香の民芸お菓子巡礼》

2022.3.22
富山県富山市 林盛堂の<br>地元産荏胡麻と本練羊羹が織りなす「素玄」<br><small>《福田里香の民芸お菓子巡礼》</small>

民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は健康食品である「えごま」を贅沢に表面に散りばめた、富山県富山市林盛堂の羊羹「素玄」を紹介します。

福田里香(ふくだ・りか)
お菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。12年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中

「素玄」の菓名が入った貼り箱。竹皮を模した包み紙に回した赤い紙が美しい。1本1200円

富山県は江戸時代は富山藩でした。当時の経済の中心地は、越中八尾の町。現在は「おわら風の盆」で名を知られる観光地です。美しい町並みが残る八尾の老舗菓子舗が「林盛堂」で、創業は1877(明治10)年頃と伝えられています。

「林盛堂」には和風メレンゲ菓子の「おわら玉天」等、銘菓が揃っていますが、民藝運動と深くかかわっていることもぜひお忘れなきように。地元の知識人で越中和紙「桂樹舎」の創立者である吉田桂介と、当時の店主が親しくつき合っていたことから、民藝運動と結び付きました。吉田は「林盛堂」のお菓子をディレクションしたり、箱絵を描いたりと随所に仕事を残しています。「素玄」は地元産荏胡麻を生地に練り込んだ梨地肌の舌触りをもつ本練羊羹です。ぷつぷつとした粒のはじける食感が絶妙。「素」にはもとのまま、ありのまま、白の意味があり、「玄」には奥深い、計り知れない、黒の意味があります。この菓子の断面や神髄を表した名づけに感じ入りました。包装紙はもちろん吉田の作品です。

富山の風物をちりばめた意匠がかわいい包装紙。吉田桂介の作

林盛堂本店
住所|富山県富山市八尾町福島3-8
Tel|076-454-4670
営業時間|9:00~18:00
定休日|なし
http://www.rinseidou-store.sakura.ne.jp/

text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
Discover Japan 2022年4月号「身体と心をととのえる春旅へ。」

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