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由布院に愛着をもつ人が集まる、まちの好循環とは?

2025.9.26
由布院に愛着をもつ人が集まる、まちの好循環とは?

住民主導のまちづくりや生活観光地のパイオニアであり、地域活性化のモデルとされる大分・由布院。由布院に魅せられた人々による、個性豊かな宿や店。個々の魅力が新しいコミュニティや関係人口をもたらし、まちをさらに輝かせるサイクルが生まれている。

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由布院を愛する人の輪を広げる好循環

温泉地として人気を博しながら、歓楽街などのステレオタイプと無縁であり続けた由布院。その哲学に共鳴した人々がIターンやUターンで次々と引き寄せられ、自分の宿や店を構えてきた。

共通するのは、ひとつのコンテンツに終わらない多面性。たとえば、いまや由布院の名所のひとつとなったCAFE LA RUCHEや名旅館が開いた「ある風景」は、カフェとギャラリー&ショップを併設。「山荘無量塔むらた」は、レストランやショップはもとより美術館まで、「旅館 光の家」は、旅館では画期的といえるヴィンテージショップを併設し、各種イベントも精力的に開催する。

「ある風景」の店内。ライブラリーも興味深い

といって、決して囲い込みを狙うわけではない。あえて食事を用意しない宿が増えるなど、地域の飲食店への周遊を促す仕掛けもちりばめられている。イベント・由布院芸術交円でも、例年通りまちの各所が会場となる予定だ。“点”でなく“面”での体験は、由布院というまちの印象を鮮やかに刻み、「また来たい」、「あの人に会いたい」という満足感につながる。

一人ひとりの事業者が、由布院の一員という矜持を胸に発信するカルチャー。その情熱が外部へと確かに伝播して、由布院を愛する人の輪はさらに広がっていくだろう。

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多面性を持つ、由布院の店や宿。

〈CAFE LA RUCHE〉
金鱗湖沿いに佇むギャラリー併設のベーカリーカフェ

2階のギャラリーでは小林雅子氏による立体作品の個展「眠れない夜の本棚」を開催中

天然酵母のクロワッサンなど焼きたてパンと自家焙煎コーヒーを提供するカフェ、現代アートを扱うショップ&ギャラリーを一軒家の2フロアで展開。タルティーヌやホットドッグといったフードも自慢のカフェは、季節ごとに移ろう金鱗湖の眺めを間近に楽しめるテラス席が特に人気。

1階のカフェでは10:30まで朝食メニューも。デニッシュ食パンや大分産大葉ウインナーなどを盛り込んだモーニングプレート。2000円

CAFE LA RUCHE
住所|大分県由布市湯布院町川上1592-1
Tel|0977-28-8500
営業時間|9:00~16:30(L.O.16:00)
定休日|水曜 ※木曜はパンの販売はなし
https://cafelaruche.jp

 

〈ある風景〉
由布院の原風景を愉しむギャラリー&カフェ

系列店「CARANDONEL」のカヌレ350円~、ハーブティー600円

「山荘わらび野」オーナーの髙田淳平さんが、かつて牛舎兼住居として使われていた古民家をリノベーションし2023年にオープン。目の前に広がる田園が、由布院の原風景を物語る。ランチタイムには自家野菜や豊後牛を生かしたカレーなどを提供。コミュニティスペースとしてライブや蚤の市といったイベントも。

2階では素朴でいて凛とした表情のウェアやうつわなどを販売

ある風景
住所|大分県由布市湯布院町川北1265-1
Tel|0977-75-8140
営業時間|11:00~17:00
定休日|火・水・木曜
https://r.goope.jp/arufuukei

 

〈山荘わらび野〉
自然と建築が調和したモダンな滞在を

コンクリート造ながら温もりを感じさせる佇まい

熊本地震の被害に遭い全面的に建て替えをし、「由布院の風景を纏う宿」をコンセプトとして2019年リニューアル。約3500坪もの広大な敷地に点在する7棟13室の離れはすべてスイートルームで、モダンなしつらえながら周囲の自然とシームレスにつながるよう。かけ流しの温泉とともに心安らぐ滞在が楽しめる。

すべての部屋がプライベートテラス付き。大きな窓が開放感たっぷり

山荘わらび野
住所|大分県由布市湯布院町川北952-1
Tel|0977-85-2100
料金|1泊1室2食付3万8000円~(税・サ込)
www.warabino.net

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〈山荘無量塔〉
多彩な施設も愉しみたい、古民家再生旅館

客室は全12室。それぞれ趣が異なる

1992年、由布岳の山麓で創業。緑に守られるように佇む離れの客室は日本各地から移築された古民家が中心で、創業者である故・藤林晃司の美意識が随所に息づいている。宿の象徴といえるバー「Tan’s bar」をはじめ、レストラン、美術館、ショップといった施設を併設。滞在中に広い敷地内を回遊する楽しみも。

美術館「アルテジオ」。音楽をテーマとした作品展示のほか、ライブイベントも随時開催

山荘無量塔
住所|大分県由布市湯布院町川上1264-2
Tel|0977-84-5000
料金|1泊1室2食付8万5800円~(税・サ込)
https://sansou-murata.com

 

〈束ノ間〉
青い温泉と保養の集落へ

大露天風呂の湯は加水なしでとろりとした肌触り。神秘的な青に身体をゆだねよう

温泉保養地という由布院の原点に立ち返り、食事提供などのサービスをなくして貸家スタイルに。部屋の簡易キッチンや共用の「みんなの台所」(有料)、温泉蒸し釜での自炊や外食と、思い思いに過ごしながら湯治を満喫したい。自家源泉の温泉はメタケイ酸を豊富に含むナトリウム−塩化物泉で、美肌の湯と評判。

広々としたファミリー向きの部屋から、一人利用にうれしいシンプルステイ型の客室棟も

束ノ間
住所|大分県由布市湯布院町川上444-3
Tel|0977-85-3105
料金|1泊1室素泊まり7500円~(税・サ込)
定休日|水・木曜
https://tsukanoma.club

 

〈旅館 光の家〉
古物や古着販売、音楽祭…… 地域に開かれた温泉旅館

レトロなカフェラウンジでは、妻の雪乃さんが手掛けるウェルカムスイーツや和朝食を

大分市出身の岩本鷹さんが、休業中だった由布岳ふもとの湯宿を縁あって継承。懐かしい趣が残る館内は全8室の客室に加え、古道具や郷土玩具、古着を扱うショップを併設する。岩本さんの前職の経験を生かし、アパレル関連のポップアップを手掛けるほか、主催する音楽イベント「fumotode」の会場にも。由布院の新しい風を感じさせる。

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和室のほか、ベッドを備えた和洋室も
宝探し気分のヴィンテージショップ「suiki」

旅館 光の家
住所|大分県由布市湯布院町川上2490
Tel|0977-85-3011
料金|1泊1室素泊まり8800円~(税・サ込)
www.hikarino-ie.com

由布院のまちづくり
01|守り育てた風土を次世代につなぐ
02|これからの由布院が目指す姿とは?
03|愛着をもつ人が集まる、まちの好循環。

text: Aya Honjo photo: Azusa Shigenobu
2025年10月号「行きたいまち、住みたいまち。/九州」

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