江戸の庶民を魅了した
「街道・旅」の娯楽作品5選【後編】
|江戸時代の旅の歴史
日本ではじめて庶民の旅行が本格化したのは、江戸時代中期頃。全国各地に敷かれた街道が整備され、宿場町が発展したことに端を発する。当時の文学や美術をひも解くと、一世一代の冒険に沸き立つ人々の期待が見えてくる。今回は、「街道・旅」を主題とした江戸時代の作品について、歴史家・安藤優一郎さん監修のもと5つご紹介!
監修=安藤優一郎(あんどう ゆういちろう)
1965年生まれ。歴史家。早稲田大学大学院文学研究科後期課程満期退学。「JR東日本・大人の休日倶楽部」の講師や江戸にかんする執筆活動など、幅広い分野で活躍中。著書に『江戸の旅行の裏事情 大名・将軍・庶民 それぞれのお楽しみ』(朝日新聞出版)など多数。
03|道中双六
全国各地の街道がすごろくに!

一立斎広重『浮世道中膝栗毛滑稽双六』/国立国会図書館デジタルコレクション
“道”をテーマに、マス内に宿場町の光景や名物などが描かれたすごろく。五街道の整備が進むと同時に、街道や全国各地の名所を題材につくられるようになった。中でも多かったのが東海道をめぐる「東海道双六」で、江戸・日本橋を出発点として西に向かって進み、京都で上がりとなるもの。コマを進めるたびに、旅の道中への想像が膨らんでいく。
04|旅行用心集
旅の心得を詳細に書き留めたガイドブック

八隅蘆菴 『旅行用心集』/ 横浜国立大学附属図書館蔵、国書データベース
1810年に刊行された、文筆家・八隅蘆庵による旅行案内書。旅行時に用心すべき項目として61カ条が収録され、全国の街道や宿場町間の距離、関所の情報なども充実している。さらに船に酔った際の対処法なども掲載。旅人必携のガイドブックとして人気を集めた。

05|冨嶽三十六景
全国各地から望む富士山を描いた浮世絵連作

葛飾北斎『冨嶽三十六景 甲州三島越』/国立国会図書館デジタルコレクション
葛飾北斎による46図の浮世絵連作。1831年頃から順次発表された。全国各地のさまざまな視点から眺めた富士山の姿を、庶民が働く様子を交えながら生き生きと描く。江戸の庶民に親しみ深い富士山を題材としたことと、人々の旅情をかき立てたことで大流行した。
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01|庶民が夢中になったお伊勢参り
02|『東海道五十三次』の魅力とは?
03|参詣の旅(成田山・善光寺・富士山)
04|「街道・旅」の娯楽作品5選【前編】
05|「街道・旅」の娯楽作品5選【後編】
text: Discover Japan
2025年8月号「道をめぐる冒険。」































