〈うすいはなこ監修〉
“食のサーキュラーエコノミー”は
約400年前に行われていた?
未来の食を考えるヒントは江戸時代にあり!【前編】
飽食の時代が叫ばれてからというもの、食をめぐる課題は深刻化している。そこで注目したいのが、循環型社会システムが構築されていた江戸の生活だ。詳細をうかがおうと江戸料理 料理人のうすいはなこさんを訪ねた。

監修・料理=江戸料理 料理人うすいはなこ
東京都生まれ。設計の仕事を経て、日本料理店で修業後、独立。江戸料理料理人、出張料理人、干物研究家などとして幅広く活躍。食にかかわる季節の手仕事を伝える「食卓をつなぐ会」主宰。著書に『干物料理帖』(日東書院本社)。
約400年前に実践されていた
“食のサーキュラーエコノミー”とは?

江戸時代の終焉から約160年、日本人は物質的に豊かな暮らしを手に入れた。食文化も多様化し、いつでもどこでも美食にありつける時代になったといえよう。
一方、膨大なフードロスや低水準の食料自給率、一次産業従事者の減少など、食に関する数多くの課題を抱えているのも事実。そこでいま一度、江戸時代の暮らしに目を向けると、江戸の街では資源を効率的に循環させる「サーキュラーエコノミー(循環経済)」が確立していたといわれている。
「下肥を肥料に栽培された米は藁、ぬか、研ぎ汁まで使用し、野菜は皮や根っこも食していました。江戸の街では食の循環システムが、自然と構築されていたんです」

食材を余すことなく使い切るこの「もったいない精神」は、「日本人の宗教観に由来する」とうすいはなこさんは推測する。
「『古事記』に記される『穀物は神より授けられた』という精神性は、日本人に宿っています。『食べ物を残すとバチが当たる』と教えられた方も多いはずです」
確かに「お天道さまが見ている」から隠し事も通用しない。持続可能な未来へ向けて、江戸から学ぶべき点は大いにある。
「地産地消の心掛け、足るを知る、フードリテラシーの向上なども大切ですね。自分にできることを取捨選択し、暮らしに無理せず取り入れてみてください」
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text: Nao Ohmori photo: Kenji Okazaki
2025年6月号「人生100年時代、食を考える。」



































