長野《野沢温泉》
名建築に浸かり、名建築に泊まる。
|新旧文化の混ざり合う野沢温泉の旅へ

日本は、約2万7000もの源泉を有する、世界に誇る温泉大国です。その歴史は保養を目的として足を運ぶ湯治場から、徐々に源泉周辺の地域文化を愉しむ温泉観光地へと変化していきました。さらにいま、温泉地の歴史、景観、文化を守りながら、温泉まちづくりに取り組む地域が増えてきています。
長野・野沢温泉村は、日本で唯一村名に「温泉」が冠された名湯地。古より続く名湯文化、そして開場100周年を迎えた世界有数のスキー場が紡ぐ伝統と新しい文化を体感する旅へ――。野沢温泉独自の建築から感じられる風情とは?
名建築に浸かる
《旅館さかや》
宮大工が建築した湯屋で癒される

野沢温泉独自の風情は、独自の建築からも感じられる。外湯の趣深さもさることながら、名建築の湯処として名高いのが、18代続く老舗の湯宿「旅館さかや」の男性大浴場「鷹の湯」だ。
宮大工が手掛けた伝統的な湯屋建築造りの大浴場は、足を踏み入れるだけで荘厳な美しさに魅了される。ほの暗い木造空間に漂う湯気は、大屋根の上にしつらえられた「越屋根」へと立ち上り、開口部から差し込むのは幽玄な光。静謐に包まれながら源泉かけ流しの湯に身をゆだねていると日々の雑事が霧散していく。

次の間と掘りごたつスペースが付いた「次の間付和室」やツインベッドの「和洋室」など客室はさまざまなタイプから選べる
「敷地の庭園内より自然湧出する温泉は、飲めるほど新鮮です。加水はせず、湯船への注ぎ方や量で温度を調整しながら守り続ける天然温泉をぜひ味わってみてください」と18代目当主の森晃さんは話す。

7棟構成の「さかや-はなれ-寿命延」は、連泊に最適な滞在型のリゾートコンドミニアム。3LDKのヴィラで暮らすように滞在できる

料理は、山菜やきのこを中心とした山の幸や豊饒な大地で育まれた旨みの強い野菜など、地元素材を生かした四季の旬が味わえる
旅館さかや
住所|長野県下高井郡野沢温泉村豊郷9329
Tel|0269-85-3119
客室数|本館29室、離れ7棟
料金|1泊2食付1万9800円~(税・サ込、入湯税別)
カード|AMEX、DINERS、JCB、VISAなど
IN|15:00
OUT|11:00
夕食・朝食|和食
アクセス|車/上信越自動車道豊田飯山ICから約25分 電車/JR北陸新幹線飯山駅から野沢温泉ライナーバスで約25分
施設|大浴場、サウナほか
www.ryokan-sakaya.co.jp
泉質|単純硫黄泉
湧出温度|約70℃
かけ流し|〇
名建築に泊まる
《野沢温泉ロッヂ》
吉阪隆正がスキーヤーのために建てた

また、野沢温泉のランドマークとして名高い建築が、野沢温泉スキー場のゴンドラから徒歩1分の「野沢温泉ロッヂ」だ。一度見ると忘れられないどんぐり形の建物は、1969年に建築界の巨匠ル・コルビュジエの弟子、吉阪隆正が設計。スキーイン・アウトに絶好のロケーションで宿泊できるだけでなく、「戻ってきたくなる」アットホームな場が魅力だ。

スタンダードなバンク・ペントハウスタイプの部屋は、シンプルかつコンパクトな空間。1~4名で愛犬とも宿泊可(オプション)
現オーナーの八尾良太郎さんは、クラフトジンやウイスキーを造っている「野沢温泉蒸留所」、「Music Bar GURUGURU」など、この地に新しい風を吹き込み、四季を通じた野沢温泉の楽しさをクリエイトするまちづくりに邁進している。

2023年に誕生した姉妹館「ゴンドラハウス」は吉阪建築への“アンサー建築”。長期滞在に最適なキッチン付きのコンドミニアムが2部屋
「冬だけでなく夏はSUP、秋はきのこ狩りといった四季のアクティビティ、脈々と受け継がれる道祖神祭りなどの伝統行事、そして多種多彩な店が点在し回遊できる街……。そういった〝循環〟をキーワードに野沢温泉のローカルを楽しめば、街の新しい魅力が発見できますよ」
次ページでは、新旧がクロスオーバーするいまの野沢温泉の多様性を感じるスポットを紹介しよう。
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「野沢温泉スキー場はGWまで滑れるので、午前中にスキーを楽しんだ後に、BBQをしてサウナでととのう最高の体験ができます」
野沢温泉ロッヂ
住所|長野県下高井郡野沢温泉村豊郷大湯7812
Tel|非公開
客室数|10室
料金|1泊朝食付7150円~(税・サ込)※時期により異なる
カード|AMEX、DINERS、JCB、VISAなど
IN|15:00
OUT|10:00
夕食|冬季は和食、夏季はBBQ(予約制)
朝食|和食
アクセス|車/上信越自動車道豊田飯山ICから約25分 電車/JR北陸新幹線飯山駅から野沢温泉ライナーバスで約25分
施設|キッチンほか
www.nozawa-onsen.co.jp/stay
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01|温泉×スキーで築いた100年を超えて
02|名建築に浸かり、名建築に泊まる
03|歩いてめぐりたいスポット5選【前編】
04|歩いてめぐりたいスポット5選【後編】
text: Ryosuke Fujitani photo: Kazuya Hayashi
2025年2月号「温泉のチカラ」