長野《野沢温泉》
温泉×スキーで築いた100年を超えて
｜新旧文化の混ざり合う野沢温泉の旅へ

日本は、約２万７０００もの源泉を有する、世界に誇る温泉大国です。その歴史は保養を目的として足を運ぶ湯治場から、徐々に源泉周辺の地域文化を愉しむ温泉観光地へと変化していきました。さらにいま、温泉地の歴史、景観、文化を守りながら、温泉まちづくりに取り組む地域が増えてきています。

長野・野沢温泉村は、日本で唯一村名に「温泉」が冠された名湯地。古より続く名湯文化、そして開場100周年を迎えた世界有数のスキー場が紡ぐ伝統と新しい文化を体感する旅へ――。村人たちが守ってきた野沢の湯と雪とは？

野沢温泉の歩み

8世紀前半　仏教僧の行基が野沢に温泉を発見
江戸時代　 飯山藩主の松平氏が大湯に別荘を建て、庶民に湯治を許可
1923年　　野沢温泉スキー倶楽部創立
1924年　　野沢温泉スキー場が開場
1998年　　長野冬季五輪のバイアスロン会場に
2024年　　野沢温泉スキー場が開場100周年を迎える

暮らしに出合う、湯めぐり。

長野県の北部に位置し、広大なブナ原生林に抱かれた野沢温泉村。湯量が豊富で鮮度が高いことから日本屈指の名湯地と称されるこの地で温泉を発見したのは、奈良時代の僧・行基や修行中の山伏という説がある。湯治場として庶民に開かれたのは江戸時代。現在も村内に点在する13の「外湯」と呼ばれる天然温泉100％かけ流しの共同浴場が、その面影を伝えている。

「外湯は村人の共有財産であり、古くより『湯仲間』という村独特の組織で守られてきました」
そう教えてくれたのは、野沢温泉村議会議員の上野雄大さん。

「それぞれの外湯の湯仲間が電気料や水道料を負担し、当番制で日々の清掃を行い、運営管理する。村人にとって外湯は共有財産であり、一日の疲れを癒す掛け替えのない空間なのです。旅人の方々には外湯で素顔の村人との交流を楽しんでほしいですね」

確かに外湯をめぐると、あいさつを交わし、時には入り方も教えてくれる村人の日常と、命の洗濯をするような至福の湯浴みという非日常が湯船で心地よく混じり合う。この不思議な感覚はほかでは味わえない。

《大湯》
村の中心に位置する一番人気の外湯

住所｜長野県下高井郡野沢温泉村豊郷8765
営業時間｜4～11月5:00～23:00、12～3月6:00～23:00
定休日｜なし

泉質｜単純硫黄泉
湧出温度｜66.4℃前後
かけ流し｜〇

 

《熊の手洗湯》
野沢温泉の発祥の湯と伝わる

住所｜長野県下高井郡野沢温泉村豊郷8955
営業時間｜4～11月 5:00～23:00、12～3月 6:00～
定休日｜なし

泉質｜単純硫黄泉
湧出温度｜40.2℃前後
かけ流し｜〇

 

肌がすべすべになる“天下の名湯”
《真湯》

住所｜長野県下高井郡野沢温泉村豊郷8278-2
営業時間｜6:00～22:00
定休日｜なし

泉質｜単純硫黄泉
湧出温度｜55.1℃前後
かけ流し｜〇

新しさの裏には、伝統あり。

《野沢温泉スキー場》
パウダースノーを求めて国内外からスキーヤーが集う

そして、野沢温泉を語る上で外せないのが、2024年に開場100周年を迎えた「野沢温泉スキー場」だ。まだスキーが大衆に普及する以前の1924年、野沢温泉スキー倶楽部によって開設された。

国内における本格的なスキー場開発の草分けとなり、1998年には長野冬季五輪のバイアスロン会場になるなど、ウィンタースポーツの発展にも寄与してきた。

その魅力はなんといっても極上のパウダースノーだ。かつてフリースタイルスキーハーフパイプ日本代表選手として活躍した上野さんがこう続ける。
「野沢温泉は、ひと晩で雪が70㎝降る豪雪地帯。ほどよい湿気のあるディープなパウダースノーの質は世界を見てもトップクラスで、滑り応えが抜群です」

その雪や雨がブナの原生林に舞い落ち、50年の歳月をかけて地層に染み渡り、ろ過され、やがて水や湯として地表に湧き出る――。大自然の恵みによってつながる文化に想いを馳せながら滑走した後、温泉にゆっくり浸かれば、より深く野沢温泉を体感できるかもしれない。

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野沢温泉スキー場
オープン期間｜～2025年5月6日（火）
住所｜長野県下高井郡野沢温泉村豊郷7653
リフト数｜ペアリフト5基、トリプル2基、クワッド6基、ゴンドラ2基
コース数｜44コース
https://nozawaski.com
※ナイター営業は、2025年1月11日～3月22日までの毎週土曜、1月12日、2月23日

COMPASS VILLAGE
住所｜長野県下高井郡野沢温泉村大字豊郷9526
Tel｜0269-67-0921
営業時間｜8:00～20:00、夏季9:00～18:00
定休日｜冬季はなし、夏季は火曜
https://compasshouse.jp

 

名建築に浸かり、名建築に泊まる
 
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text: Ryosuke Fujitani　photo: Kazuya Hayashi
2025年2月号「温泉のチカラ」