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ガラス作家《光井威善》
インテリアのように空間を飾るうつわ

2024.9.18
ガラス作家《光井威善》<br>インテリアのように空間を飾るうつわ

富山県上市町に在住のガラス作家・光井威善(みつい たけよし)さん。オブジェのようにつくられたうつわ「silence」シリーズや、うつわのようにつくられたオブジェ「bottle people」シリーズなど、アートと日用品の狭間を行き来する光井さんの作品とその背景をひも解いていく。

光井威善(みつい たけよし)
光井さんは1987 年、広島県福山市生まれ。倉敷芸術科学大学大学院を修了後、富山ガラス工房に所属。2016年に独立し、富山県を拠点に活動している。

静と動を兼ね備えたガラスに魅了される

「静と動を行ったり来たりすることが、自分にとって居心地がいいのかもしれません」と話すのは、幼少期から図工と体育が大好きだったというガラス作家の光井威善さん。手先が器用だったこともあり、美大でもそつなく制作をこなしていたというが、吹きガラスを体験した際に「これだけは技術がないと何も生み出せない」と悟ったそう。早朝から練習に励むなど、人生の中で最も努力をした時期だと語る光井さんだが、それが苦にならなかったのは、ダイナミックな動きで制作する吹きガラスが〝美術と体育の融合〞だったからである。

うつわのようなオブジェを目指した「bottle people」。いまにもガラスが動き出しそうな躍動感にあふれる

大学院修了後は「富山ガラス工房」に所属していたが、「好きなうつわがなかったので苦労しましたね」と光井さん。独創的なオブジェを制作していた学生時代とは異なり〝使うためのうつわ〞を量産する工房での仕事は、技術は磨かれるものの、おもしろみに欠けたというのが率直な気持ちだった。

モノトーン好きに買って欲しい
カラフルなうつわ「silence」シリーズ

作品と工業製品とのはざまで揺れ動く中、つくるたびに感覚や色みが異なるオブジェのようなうつわはできないのだろうかと「silence」のプロトタイプの制作がスタート。

「これをつくったことで、自分の中で腑に落ちたというか。作家性を前面に出さずに、使い手の目線を意識したからこそ受け入れられたのかもしれません」と、silenceはガラス作家として独立した光井さんを名実ともに知らしめる作品となった。

明るい色遣いにもかかわらず落ち着いた印象を受けるカラーグラス「silence」

silenceのコンセプトは「モノトーン好きに買って欲しいカラフル」。大胆なバイカラーにもかからず静けさを感じる佇まいだが、それは光井さんから見た世界が反映されているため。「僕は色弱で色の見え方が大多数の人とは違うこともあり、自分としては反対色を組み合わせたと思っていても、意外に統一感のある色合いになっていることが。直感で色を組み合わせているのですが、自分の目を信用していないからこそ、フォルムや削りによってsilenceらしい雰囲気になるよう整えています」。

オブジェとうつわの狭間を行き来する

花を飾る「silence vase」。モノトーンの世界観が、植物の華やかさを際立たせる

うつわにはオブジェの佇まいを、オブジェにはうつわの存在感を織り込むなど、相反することの共存が好きだという光井さんは、正解が見えてくると反対の方向に行きたくなるのだそう。それゆえガラス作家は天職ではあるものの「吹きガラスは体力勝負ですからね。長く続けられるとは思えないんです」と、静かな場所でゆったり作業に勤しむ画家にも憧れるのだとか。とはいえ画家に転身したらしたで、吹きガラスが恋しくなるのが光井さんの性分。silenceは、間違いなく光井さんを体現した代表作である。

作品ラインアップ

tumbler silence(pink brown×blue type f)
外側に1㎜幅の縦ラインを入れ、さらに全体を細かく削ることで、ポップになりがちな寒色と暖色の組み合わせに落ち着きをもたせた。
価格|1万3200円
サイズ|Φ63×H150㎜ 重量|205g

tumbler silence(clear×amber type g)
モノトーンを意識しているsilenceだが、お茶など色のついた飲み物にも合う。さまざまなお茶の色みとの掛け合わせを楽しみたい。
価格|1万3200円
サイズ|Φ75×H90㎜ 重量|160g

tumbler silence(blue green×blue type g)
色の濃淡がグラスの厚みと呼応しているような不思議な作品。ブルーグリーンは、光井さんの最近のお気に入りカラーでもある。
価格|1万3200円
サイズ|Φ65 ×H150㎜ 重量|195g

読了ライン


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text:Natsu Arai

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