FOOD

米を「むすび」、人と人を「むすぶ」実験的プロジェクト「United Rice Ball」

2019.9.18
<b>米を「むすび」、人と人を「むすぶ」実験的プロジェクト「United Rice Ball」</b>

世界中の米からふたつの国の米を選び、ミックスした米をおむすびにしたら、どんな味になるのだろう? その国の人たちがそのおむすびを食べたら、どんな思いになるのだろう? 米を「むすび」、人と人を「むすぶ」という、前代未聞の実験的プロジェクト「United Rice Ball」。第一弾に選んだのは、日本米とスペイン米。その味はいかに?

倉成英俊さん
「違う国の米を混ぜておむすびにすることで、新たな意味を生み出す」という企画を思いついたのは2011年。「おにぎり」でなく「おむすび」にこだわるのは、米をむすぶだけでなく、人と人、国と国を「むすぶ(unite)」という意味を込めているから。バルセロナ勤務時代の出会いや学びに感謝を込めて、第一弾は迷わずスペインに
倉成英俊さん
1975年、佐賀県生まれ。小1のときの将来の夢は発明家。クリエイティブ・プロジェクト・ディレクター。2000年から某広告会社所属。会社の仕事以外にも多数の個人プロジェクトを実施。バルセロナのブロダクトデザイナーMarti Guixeの事務所でも働き、「より自由にデザインを考えるデザイナー」の意味のex-designerに日本人で初認定。

この2国米ミックスおむすびは、単純に日本米とスペイン米を混ぜるだけでは完成しなかった。特色が異なる米と米を調和させるためには、ある“ひと手間”が必要だったのだ。

プロジェクトは7人のプロフェッショナルが集結!
前列はレシピ開発と調理担当のフードユニット「つむぎや」マツーラユタカ(左)・金子健一(右)。後列左2番目から右へウェブ制作担当のウェブデザイナー上江洲佑布子、ロゴ制作担当のアートディレクター古谷萌、発起人の倉成英俊、米の選定と調達担当のお米ライター柏木智帆、BGM担当のDJ MOODMAN(敬称略)

まず、日本米は短粒のジャポニカ種で、スペイン米は中粒の熱帯ジャポニカ種という違いがある。

日本米は「生鮮食品」のため、収穫後に水分値を15%ほどに乾燥させた後は、一定の温度と湿度で劣化と乾燥を防ぎ、玄米で保管するのが一般的。精米後すぐに劣化するため、冷蔵庫で保管して2、3週間以内に食べ切るのが美味しく味わうコツだ。水だけで炊飯するのが主流となっている。

倉成さんのあいさつでスタート。同時通訳は中谷綾子アレキサンダーさん

一方、スペイン米は「保存食品」で、徹底的に乾燥させる。あるスペイン米の賞味期限は精米後1年6カ月。古米のほうが重宝され価格も高い。米をオリーブオイルで炒めてからスープを吸わせる。

今回、数あるスペイン米の中から選んだのは「redondo(レドンド)」。スペインならではの米の味わい方であるアルデンテが出しやすいと考えたからだ。アルデンテを引き立たせ、パラパラとしたスペイン米を混ぜてもおむすびが成型できるよう、日本米はもっちり粘りのある「ひとめぼれ」を選択。

水で乾杯しないスペイン文化に従い、酒やジュースで「サルー(乾杯)!」

当初、スペイン米を日本米のように炊いてみると、食感が粉っぽかった。そこで、最初にスペイン米をオリーブオイルで炒めるひと手間を加えたところ、スペイン米が見違えるほど美味しくなった。

日本米とスペイン米の割合も重要だ。日本米が多すぎるとスペイン米の存在感が消えてしまい、スペイン米が多過ぎると粘着性が足りず、むすべなくなってしまう。米の比率、炊飯道具、スペイン米のアルデンテ具合など、塩むすびだけでも20種類以上のおむすびを試作。メンバーによる三度の試食会を経て、ようやく世界初となる4種類の「日西mix米おむすび」が完成した。

コース料理のように1個ずつおむすびを出し、つむぎやから丁寧に料理を説明

たかがおむすび。されどおむすび。ひとつのmixおむすびには、ふたつの国の文化や気候風土などたくさんのストーリーが詰まっている。今後もさまざまな国の米と日本米をむすんでいき、5年後の目標はニューヨークの国連本部での開催。おむすびで世界中をむすぶことだって夢ではない。

文=柏木智帆 写真=鳥巣智行、古谷 萌
2019年9月号 特集「夢のニッポンのりもの旅」