国宝のオンパレード《平等院》
極楽浄土を表現する世界遺産
平安・鎌倉時代の古都を国宝と茶でたどる①
日本で5番目の世界遺産として記載された「古都京都の文化財」が宇治市にもあるのをご存じだろうか。宇治には、日本の代表的な文化財・平等院のみならず、平安・鎌倉時代の歴史が刻まれた文化財が点在している。そんな歴史に思いを馳せつつめぐることができる、茶処ならではの愉しみを柏井 壽さんと見つけに行こう。
今回は平等院で目にすることができる国宝の数々を紹介する。
文=柏井 壽
作家。1952年、京都府生まれ。京都人ならではの目線を生かしたエッセイや旅紀行文を執筆。小誌特集内「京都人の美味しい日常」でもエッセイを寄稿。
洛南伏見からさらに南へ下り、少し東へ進むと、宇治へとたどり着きます。
京都の南奥に位置する宇治は、場所にもよりますが気温も少し低く、過ごしやすい気候なので、古くは別荘地としても人気があったようです。
伏見は京都市の中にありますが、宇治は京都市の外、宇治市にあります。それほどエリアが広いのです。
広い宇治の中で中心となるのは、宇治川に架かる宇治橋界隈です。
宇治エリアにある2カ所の世界文化遺産、「平等院」と「宇治上神社」は宇治川を挟んで、向かい合って建っていますし、『源氏物語』の舞台ともなったあたりには紫式部の像が置かれています。
源氏物語の末尾にあたる第三部の「橋姫」から「夢浮橋」までは「宇治十帖」と呼ばれ、物語はこの近辺で展開します。
そんな宇治を代表する寺院が平等院。世界文化遺産です。
平等院には行ったことがなくても、シンメトリーな美しさで知られる「鳳凰堂」には見覚えがあるはずです。10円玉の表に描かれていることはよく知られていますが、1万円札の裏側にも鳳凰がデザインされていることは、存外知られていません。
時の摂政として、強い権勢を誇っていた藤原道長が、洛外の別荘として使っていた「宇治殿」を、道長亡き後に、息子である頼通が寺院に改め、「平等院」を開創したのは、永承7年のことでした。
その頃の世の中は、お釈迦さまの入滅から2000年経つと、天災や人災に見舞われ、世がひどく乱れるという思想、末法思想が大流行していました。当時は阿弥陀堂と呼ばれていた「鳳凰堂」が建立され、西方極楽浄土の主である阿弥陀如来を祀るお堂ということから、救いを求める人々の間で大人気となりました。
極楽を象徴するような平等院は貴族だけでなく、広く庶民にも崇拝されるようになり、その権威を高めていったのです。
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《平等院ミュージアム鳳翔館/茶房 藤花》
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平等院
住所|宇治市宇治蓮華116
Tel|0774-21-2861
拝観時間|庭園8:30〜17:30(受付終了17:15)、鳳凰堂内部拝観9:30〜16:10(各回50名定員、受付時間9:00〜先着順によりなくなり次第終了)
定休日|庭園、平等院ミュージアム鳳翔館はなし※行事等により内部拝観を休止する場合あり
拝観料|庭園+平等院ミュージアム鳳翔館 大人600円、鳳凰堂内部拝観300円
www.byodoin.or.jp
photo: Katsuo Takashima 写真提供=平等院
Discover Japan 2023年11月号「京都 今年の秋は、ちょっと”奥”がおもしろい」