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家具メーカー《ワイス・ワイス》の挑戦
“森をつくる”家具3選|後編

2023.10.29
家具メーカー《ワイス・ワイス》の挑戦<br>“森をつくる”家具3選|後編

日本全国に存在する魅力的な木材を生かし「自然と人」、「人と人」のつながりを生み出しながら、地域の豊かな森を未来につなげる。その信念を宿したワイス・ワイスの代表的な「森をつくる家具」とは。

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シイタケ産業の森から生まれた椅子
MOROTSUKA

九州山地の中央に位置する宮崎県・諸塚村。林野率が95%のこの村は、明治の頃より村民が森を育てている。持続可能な方法で森林を経営・管理していると認められたFSC ®森林認証を、自治体として日本ではじめて2004年に取得した。名産品はドングリの木(クヌギやコナラ)でつくる原木シイタケだったが、時間と手間のかかる栽培は後継者不足に直面し、森が置き去りにされつつあった。太くなり過ぎたドングリの木を有効活用したい——。その想いとワイス・ワイスが共鳴し、2009年に「諸塚村どんぐり材プロジェクト」が始動。加工が難しいドングリの木を村民とともに試行錯誤しながら開発し、3年の歳月をかけて「MOROTSUKA」が完成した。諸塚の森を再生する椅子は、頑丈なコナラを骨格に座面と背には空気を多く含む軟らかなスギを使用。心を通わせて築いた信頼関係が、やさしい肌触りと座り心地を生み出した。
 
産地|諸塚村(宮崎県東臼杵郡)
製材所|耳川広域森林組合 諸塚木材加工センター(諸塚村)
 
NS-102 アームチェア
価格|8万8000円
サイズ|W470×D470×H760㎜ デザイン|小泉 誠
木部|フレーム/コナラ無垢材(諸塚村産)
背・座/スギ無垢材(諸塚村産)

大ぶりで肉厚な諸塚村の原木シイタケは、全国の品評会で何度も優秀な成績を収めている
落葉広葉樹と常緑の照葉樹林、針葉樹の美しい森が広がる

大径木を救うための家具づくりを創出
AKI

岩手県岩泉町はサステイナブルな森づくりをはじめた町。この地では50年、100年という歳月を費やして育った広葉樹のほとんどが経済的な理由でトイレットペーパーなどの原料であるパルプチップに姿を変えていた。その悲しい状況を変えるべく、生み出されたのが「AKI」だ。日本が世界に誇る伝統的な「木組み工法」や接合部を感じさせない美しい「さすり仕上げ」という高度な技術を駆使したこの椅子には、地域の人たちの想いと職人たちの矜持が宿っている。
 
産地(ナラ)|北海道旭川市 製材所|ホクエイ(北海道上川郡美瑛町)
産地(クリ)|北東北 製材所|田鉄産業(秋田県角舘町)
家具工場|山岡木材工業(北海道旭川市)
 
SHN-102 アームチェア
価格|10万5600円〜
サイズ|W520×D520×H800㎜
デザイン|ワイス・ワイス
木部|オーク無垢材(北海道産)orクリ無垢材(北東北産)

広葉樹は15の部材となり、地域が誇れる家具として再び輝きはじめる
チップ工場の粉砕機で太い木も細かくされ、パルプチップに

椅子づくりに向かないスギの可能性
KURIKOMA

「KURIKOMA」は、東日本大震災をきっかけに被災した栗駒山麓エリアへの復興支援として、地元のスギ専門の製材所とともにつくられた。素材となるスギは軟らかく、本来は椅子には向いていない素材。その弱点を克服するべく、杉の繊維を交差させる工法などを取り入れ、デザイナーと地元の職人、大工とともに何度も強度実験を繰り返し、2年通い続けて誕生した。軟らかいスギそのままでありながら、JIS規格の3倍の強度を実現した常識破りの椅子は、重量4kgと軽量で、住宅やホテル、病院、高齢者施設など幅広く愛用されている。

産地|栗駒山(宮城県栗原市、大崎市)
伐採|NPO法人しんりん(大崎市)
製材所|くりこまくんえん(栗原市)

KR-102 アームチェア
価格|13万6400円
サイズ|W530×D565×H795㎜
デザイン|榎本文夫
木部|スギ無垢材(宮城県産)(蜜蝋ワックス)

手作業で角を丸く削り蜜蝋ワックスで仕上げ、スギのやさしい手触りを引き出す
全国で数人しかいない馬搬の伝統技術を岩手県遠野に習い、丸太の搬出が行われた

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※各商品についてのお問い合わせ、詳細はワイス・ワイス(Tel|03-6258-1345)またはWISE・WISE toolsウェブサイト(https://wisewisetools.com)にてご確認ください

text: Ryosuke Fujitani photo: WISE・WISE
Discover Japan 2023年9月号「木と生きる」

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