《矢田久美子 ミニ個展》
ロマンティックな絵付けにティータイムが華やぐ
マットな白磁に描かれた草花や虫。その緻密な絵付けは、ティータイムを優雅に盛り上げてくれる。作家の矢田久美子さんに、作品に対する想いをうかがった。
2023年6月23日(金)〜7月7日(金)にかけて渋谷パルコのDiscover Japan Lab.では、「矢田久美子 ミニ個展」を開催!
公式オンラインショップでは6月26日(月)20時より順次取り扱い開始します。
矢田久美子(やだ くみこ)
京都市立芸術大学美術学部卒業。企業の広報やデザイン専門学校の講師を経て、幼少期から好きだったものづくりの道へ。2008年、佐賀県立有田窯業大学校に入学。卒業後に有田で作家として独立。
眺めているだけでも
うっとり幸せな気分に
神は細部に宿る。ディテールにも手を抜かず、こだわり抜くことが全体の完成度を高めるといわれるが、矢田久美子さんの作品を眺めていると、自然と冒頭の言葉が浮かんでくる。たとえばカップ&ソーサー。カップには可憐な草花が咲き誇り、持ち手から高台の端に至るまで、繊細なモチーフがミリ単位で施されている。感心しているのもつかの間、カップの内側に目をやれば、ひらひらとはためく蝶の姿が。もちろん、ソーサーの裏側まで装飾は欠かさない。
もともと学校で美術講師をしていた矢田さんが、作家としてデビューしたのは7年ほど前のこと。当初から、大好きな草花をモチーフにしたうつわにこだわってきた。そんな矢田さんの作品に惹かれた人物の一人が、東京・渋谷のギャラリー「うつわ謙心」のオーナーである佐藤謙心さんだ。
「彼女の作品をはじめて見たのは6年くらい前。カラフルな壁掛けのオブジェが絵画のようで、たちまちファンになりました。ほかの人にはまねできない、水彩画のような絵付けが一番の魅力です」
手描きならではのリアルな空気感、物語のワンシーンを切り取ったような独特の世界観。確かに矢田さんの絵付けには、見る人の心をぐっとつかむ不思議な力が宿っている。果たしてどのように描いているのだろうか。
「大まかな構想を練った上で、フリーハンドで直接うつわに描いていきます。感覚としては、画用紙に絵を描く感じです。きっちり仕上げたい性格なので、どうしても細かくなってしまって」と矢田さん。かつて芸大で絵画を学んだものの、なめらかな磁器の表面に描くのは至難の業。そこで独学で絵付けの技法を学び、唯一無二の草花のある風景を確立させた。
「うつわの内側や裏側にもさりげなく絵付けしているのは、私のサプライズ演出です」
ただ美しいだけではない。使い手を喜ばせるおもてなし精神が、そこかしこに息づく。思わずティータイムが待ち遠しくなる作品だ。
読了ライン
《矢田久美子 ミニ個展》
作品ラインアップ
いまにも草花のフレッシュな香りが漂ってきそうな、リアルで華やかな矢田さんの作品。使い心地も抜群なため、ぜひ普段のティータイムで愛用してほしい。
花束と蝶のティーポット
作品テーマは「お茶の時間を楽しむ北欧の人々が、普段使っていそうなポット」。大容量で面積が大きい分、絵付も贅沢に施されており、矢田さんの世界観を存分に楽しむことができる逸品。
花束と蝶のカップ&ソーサー A
どこか懐かしいアンティーク風のカップ&ソーサー。右手でカップを持った際、ちょうど目に入るように、カップ内側の縁部分に金色の蝶が描かれている。矢田さんの心憎い演出に脱帽。
花束と蝶のカップ&ソーサー B
絵柄をふんだんにあしらい、デコラティブに仕上げたひと品。柔らかな曲線に鋭角的なリズムを要所要所加え、シャープな甘さをフォルムで表現している。大人かわいい作品のため、贈り物にも。
色絵草花づくし高足杯(こうそくはい)
マットな白磁とつやを抑えたシルバーの脚部が、かわいらしい草花の絵柄をクールな印象にまとめ上げている。中国茶だけでなく、リキュールや日本酒など酒器としての利用もおすすめ。
色絵草花づくし蓋碗(がいわん)
お茶を淹れるためにも、直接飲むためにも使える中国茶の道具。四季折々の草花を緻密に再現。蓋の上部には花の香りに誘われた蝶の姿、受け皿の裏側にはさりげなく四つ葉のクローバーが
色絵草花づくし茶海(ちゃかい)
茶壷や蓋碗で淹れたお茶を注ぎ分けるとき、香りや味を均一にするため、一時的に移すうつわ。あえて内側に蝶を描いているのは、杯にお茶を注ぐ際に相手に見えるようにしたかったため。
6月26日(月)20時より順次販売開始
公式オンラインショップ
矢田久美子 ミニ個展
会期|2023年6月23日(金)〜7月7日(金)
会場|Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00〜21:00
定休日|不定休
※新情報は公式Instagram(@discoverjapan_lab)などで随時紹介しています。ぜひチェックしてみてください。
※掲載商品は一部であり、店頭にはさまざまなうつわが並びます。
text: Misa Hasebe photo: Yuichi Noguchi
2023年7月号「感性を刺激するホテル/ローカルが愛する沖縄」