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the continue.「再生備前」展を渋谷PARCOで開催
備前焼作家たちが手掛ける伝統と革新の作品を販売

2022.12.16
the continue.「再生備前」展を渋谷PARCOで開催<br><small>備前焼作家たちが手掛ける伝統と革新の作品を販売</small>
割れたり欠けたりして廃棄される備前焼の陶片をリサイクルした再生備前。この新しい素材を使い、備前を代表する作家たちがつくった作品が渋谷にやってくる

岡山県・備前焼の里で、陶器ごみをリサイクルした再生備前のマグカップが注目を集めている。手掛けるのは「the continue.」。この冬、渋谷PARCO内、Discover Japan Lab.で開催される企画展では備前焼作家が参加し、伝統的な作品と再生備前を用いた新しいプロダクトが並ぶ。

陶器ごみのアップサイクルが
備前の文化継承につながる

備前はれんがづくりも盛んで、れんがはほぼ100%粉砕して再生されることから、再生備前の第一歩がスタートした。陶片の粉砕後はふるいにかけ、粒の大きさを数段階に分けている

粘土層から取れる稀少な土を用い、釉薬をかけず、登り窯で長い時間をかけて焼き締める備前焼。焼物の中で最もプリミティブで、繊細な作業が必要とされる一方で、窯焚き後に廃棄される量は1割に上るといわれる。「the continue.」は陶器ごみとして埋め立てられる運命にあった陶片を回収し、リサイクル陶器ブランド「RI-CO」を立ち上げ、マグカップやコーヒードリッパーとして世に送り出した。備前焼ではなく名もなき陶器として。工芸品ではなく日常で使えるプロダクトとして。2021年秋のことだ。

「the continue.」と備前焼の窯元が連携し、再生備前を使った新たな作品づくりがはじまった。「RI-CO」でも登り窯を用いたオリジナル商品をリリースしている

備前を陶器ごみゼロの産地にしたい。スタート時の小さな声は、どちらかといえば保守的な備前焼作家たちの心に波紋のように広がっていった。陶片を粉砕し、備前で採れた土と合わせた再生備前を作品に取り入れてみようとする試みがはじまったのだ。

この冬、渋谷PARCOで開催される企画展にと、3名の作家が再生備前の作品を届けてくれた。ゆがみにくい、型枠成形に向く、といった再生備前の特徴を生かしながら、登り窯による焼成では備前焼の伝統的な技法を用いる。作品の一つひとつに画一的なプロダクトとは異なる個性が表れている。

「私たちは、代々備前焼を続けている家です。再生備前は地域の土や環境を次の世代にきちんと残していける活動で、時代に合った取り組みなので、率先して参加しようと思いました」と、不老窯の大饗利秀さん。

「作家として新しい価値観は常に求めており、再生備前は単純におもしろさがありました。SDGsという言葉が、自然素材だけでできている備前焼とも関係があると気づき、そういう時代が来たんだなと思いました」と伊勢崎創さん。

「粒の大きさもいろいろあると聞き、どう使えるのか試してみたくなります。僕ら作家は、土や表現のことしか眼中にないのですが、その廃材からできた粒や粉を作品にしたらどうなるのかと。備前の新しいかたちが生まれると思います」と高原卓史さん。

企画展では、伝統をつなぐ備前焼作品と、新しい素材を生かした作品の対話を楽しんでほしい。

陶片が再生備前の原料に。RI-COの製品に生まれ変わり、役目を終えても、またリサイクルできる

名うつわ作家が手掛ける、
伝統と革新のプロダクト

備前焼の伝統を背負う作家たちが再生備前を手にしてつくるものとは……。作家として新しい価値観に向き合いいまに合うユニークな作品を生み出している。

《大饗利秀/Toshihide Ooae》
備前焼窯元六姓のひとつである大饗家の3代目。同じく備前の窯元3代目の妻・乗松美歩さんとともに「不老窯」を運営する。備前焼が生活の中で使われることで伝統をつなげるという想いから、ともに食器や急須など暮らしのうつわに注力。大饗さんは伝統的な作品が、乗松さんはかわいらしい近代的な作品が得意。不老窯は備前焼作家としてはじめてリサイクル素材を取り入れた窯でもある

備前 宝瓶
実用性のある道具として時代を超えてつくられる茶器。モチーフは伝統的な松ぼっくり。窯焚きでの窯変を期待し、炭を追加投入して焼成。1~2杯分のコーヒーを淹れる感覚で使いたい
価格|1万3200円、サイズ|W105×D82×H80㎜、重量|245g
再生備前 プレート(火襷)
洋食器に寄せつつ、日本らしい表情。一点ずつろくろで成形し、大きめの粒が生地に引く筋が味わいになっている。模様は焼成時に藁で絵を描くようにつけたもの。パンやパスタなどに
価格|6600円、サイズ|φ210×H17㎜、重量|505g

《伊勢㟢 創/So Isezaki》
祖父、父、叔父が重要無形文化財という工芸界で名高い陶芸一家に生まれ、18歳で本格的に陶芸の道に入る。美術展や伝統工芸展での受賞は多数。壺、花入れ、抹茶碗など工芸品が中心。キレと存在感、重厚感のある作品は幅広い世代から人気がある。備前焼陶友会で理事を務め、工芸界や地域活動にも時間を惜しまずに参加。今回の個展では、大作のかたわらで生まれる酒器や食器なども出展予定

備前 扁壺
窯の中で灰がかかり、胡麻(灰がほどよく溶けた自然釉)が現れる部分を想像しながら曲線やラインを描いた作品。自然なゆがみの中でエッジのあるラインは、モダンなインテリアにも◎
価格|13万2000円、サイズ|W245×D210×H305㎜、重量|4100g
再生備前 螺旋
型枠成形による端正なラインと、伝統技法を用いた焼き色の柔軟な表現。そこにガラスという異素材を組み合わせた遊び心のある花入れ。パーツの組み方を変えて、いく通りにも楽しめる
価格|8800円、サイズ|ガラスφ93×H198㎜・備前プレート1枚あたりW132×D132×H8㎜、重量|905g

《高原卓史/Takushi Takahara》
京都で修業した後、備前焼作家の父・高原敏の下で学び、独立。「あの人ほど土や陶芸が好きな人は珍しい」と同業作家に慕われている。備前焼陶友会理事。備前焼作家を育成する教育施設「備前陶芸センター」講師。うつわなどの日用品でも遊び心や野趣あふれるものが多く、見応えあり。リサイクル材に関しても意欲的で「新しい素材は、おもしろそう!」と作品表現にどう生かすかを研究中

備前 三方陶板
不揃いなものが集まる自然の土が主役。薪窯の還元作用で生まれる景色や藁による模様をつけず、粒の粗い山土の表情そのままに焼く。対比で銀彩を少し。鑑賞用にも、料理をのせても
価格|19万8000円、サイズ|W795×D310×H64㎜、重量|5970g
再生備前 自由杯
「土味を生かす」が信条。再生材を練り込んだ生地で杯のかたちをつくり、泥状に溶いた備前土に大粒の再生材を混ぜた塗り土を表面に施した。そこにヘラで加飾するため独特な表情に
価格|5500円、サイズ|φ77×H94㎜、重量|190g

再生備前「RI-CO」もおすすめ!

再生備前 #再生備前シリーズ マグカップ産地コラボ登り窯
通常はガス窯で均一的に焼くRI-COのマグカップを、地元窯元とのコラボレーションにより登り窯で焼成。炎と、灰や藁の作用による模様など、備前焼特有の偶然が生む表情が楽しめる
価格|5280円、サイズ|φ80×H78㎜(取っ手30㎜)、重量|195g
再生備前 アートブリック
さまざまな粒度の再生材を高い割合で使用。重厚感と野趣あふれる質感が魅力。窯の炎により模様が異なる一点もの。そのまま飾るもよし。エアープランツをのせたり、鍵置きにもおすすめ
価格|1万円、サイズ|W221×D108×H28㎜、重量|1440g

※サイズ・重量は掲載商品の実寸です。同じシリーズでも個体差があります。

the continue.「再生備前」展
会期|12月28日(水)~2023年1月15日(日)
会場|Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~21:00
定休日|不定休
※新情報は公式Instagram(@discoverjapan_lab)などで随時紹介しています。ぜひチェックしてみてください。
※掲載商品は一部であり、店頭にはさまざまなうつわが並びます。

the continue.
住所|岡山県備前市野谷682-10
Mail|info@the-continue.com
https://the-continue.com

text: Yukie Masumoto photo: Shimpei Fukazawa
Discover Japan 2023年1月号「酒と肴のほろ酔い旅へ」

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