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《美味しい魚図鑑》 Vol.10 イカ
イカの足は10本じゃない!?

2022.3.12
<small>《美味しい魚図鑑》 Vol.10 イカ</small><br>イカの足は10本じゃない!?
photo by divedog

スーパーに並ぶあの魚、この魚。どんな海に生息し、どこで捕れるものが美味しいのか。本当の旬はいつで、どんな料理が合うのか。魚を知り尽くす小川貢一さん監修のもと、日本人なら知っておきたい魚の基本を詰め込みました。

小川貢一(おがわ・こういち)さん
956年、東京・築地生まれ。仲卸3代目として築地で育つ。魚を知り尽くし、かつて築地で魚料理店の店主を務めた料理人でもある。著書に『本当に美味しい魚の見極め方』など多数

東日本でマイカといえばスルメイカ

イカの中で、日本人に最も馴染みがあるのがスルメイカ。冬は長崎県の壱岐、対馬でイカ漁がはじまり、徐々に北上して山陰、北陸、春から夏にかけて東北へと移っていく。夏から秋にかけて北海道や三陸沖で捕れるものはワタが大きく、身の味も濃厚だ。

スルメイカは刺身、焼き物、揚げ物、煮物とさまざまに使われる万能選手。ワタを使って塩辛もつくられる。刺身はしっかりとした歯応えの中にねっとりとした食感がある。煮付けにすると、スルメイカがいかに香りと旨みをもっているかを実感するだろう。加熱し過ぎると身が硬くなり、味も入りにくくなるので要注意。

なお、西日本でマイカといえばコウイカのことで、九州ではケンサキイカもよく食べられている。

<烏賊の基礎知識>

スルメイカ

●科
アカイカ科など

●旬
7〜11月(スルメイカ)

●名前の由来
鳥が水面に浮かぶイカをついばもうとしたら、逆にイカが腕を伸ばして捕まえるという中国の故事から、「烏」と「賊=危険」と当てられた。スルメイカは、神事に重要な「するめ」に一番多く加工されているためこう呼ばれるように

●魚種
スルメイカ、アオリイカ、
スミイカ、モンゴイカ、
ヤリイカ、ホタルイカなど

●地域名、幼名
スルメイカは一番多く捕れるイカなので「マイカ」と呼ぶ地域もある。小さいものは「バライカ」、関東では「ムギイカ」

●選び方のポイント
表面の色がはっきりと残り、触ると色がスッと変わる状態が新鮮。目が美しく黒いもの

●主な生息地
日本周辺からオホーツク海、
東シナ海(スルメイカ)

●県別漁獲量ランキング(スルメイカの場合)
北海道:9800t
石川:4200t
長崎:3800t
青森:1万1200t
岩手:4100t

Q:イカは何種類いる?
A:日本近海に生息するイカは80種類以上!

日本で漁獲されるイカは大きく分けて3種類。スルメイカの仲間、ヤリイカの仲間、コウイカの仲間だ。漁獲量の7割をスルメイカが占めるが、ほかにも美味しいイカはたくさん。料理店やスーパーでよく見掛けるものだけでも右の6つが挙げられ、それぞれに適した料理がある。

スルメイカ
ほかのイカと比べてワタが大きく、塩辛やワタ焼き(ゴロ焼)に適する。一夜干しは酒のつまみに

コウイカ(スミイカ)
墨が多く、水揚げ時によく墨を吐く。身がしっかりして歯応えがある。寿司、刺身、天ぷらなどに

モンゴウイカ
大きなものは50〜60㎝。身が厚いが、加熱しても歯切れがよい。刺身、天ぷら、フライに向く

ホタルイカ
富山湾で捕れるものが良質。3〜5月が旬。小さいがワタが濃厚で美味。刺身、塩ゆで、沖漬けに

アオリイカ
甘みがあり、旨みが濃くて、和食の料理店での扱いが多い高級イカ。刺身、天ぷらなどにおすすめ

ヤリイカ
晩秋から春が旬。身は薄いが甘みがある。春先の子持ちの煮物も美味。刺身、煮物、揚げ物に

<column>
新鮮なイカで塩辛づくりに挑戦!

スルメイカの胴とワタを分け、胴は皮をむき、ワタは墨袋を除く。胴は軽く、ワタはたっぷりの塩を振り、半日ほど置いて水分を取り除く。軽く水洗いして水気をよく拭き取り、スライスした胴と薄皮を除いたワタを混ぜ合わせる。1日に数回混ぜながら、4〜5日冷蔵庫で寝かせれば完成。

<trivia>
イカの足は8本!?

そもそもイカの足だと思われているものは人間の腕にあたり、左右に4腕ずつある。10本あるうち、長いもの2本は「触腕」という。先端に大きな吸盤が付いていて、主に獲物を捕らえるときに使われる。

《美味しい魚図鑑》
Vol.1|マグロ
Vol.2|タイ
Vol.3|ブリ
Vol.4|サケ
Vol.5|ヒラメ
Vol.6|カレイ
Vol.7|サバ
Vol.8|アジ
Vol.9|イワシ
Vol.10|イカ

text: Yukie Masumoto 写真提供=国立研究開発法人水産研究・教育機構、
フーズリンク、農林水産省「うちの郷土料理」、小枝圭太(東京大学総合研究博物館)、
標津サーモン科学館、PIXTA
Discover Japan 2022年2月号「美味しい魚の基本」

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