《美味しい魚図鑑》 Vol.6 カレイ
ヒラメとの見分け方は?
スーパーに並ぶあの魚、この魚。どんな海に生息し、どこで捕れるものが美味しいのか。本当の旬はいつで、どんな料理が合うのか。魚を知り尽くす小川貢一さん監修のもと、日本人なら知っておきたい魚の基本を詰め込みました。
小川貢一(おがわ・こういち)さん
956年、東京・築地生まれ。仲卸3代目として築地で育つ。魚を知り尽くし、かつて築地で魚料理店の店主を務めた料理人でもある。著書に『本当に美味しい魚の見極め方』など多数
夏と冬、二度美味しい魚
ヒラメと同じく砂泥地に生息する底魚。なんといっても種類が多く、マガレイ、マコガレイ、アカガレイ、アサバガレイ、メイタガレイ、イシガレイ、マツカワガレイなどなど、東京の豊洲市場に流通しているカレイだけでも何十種もいる。産地は北海道や東北が多いが、種類によっては西や南の地域でも捕れる。それぞれ旬の時期も異なり、刺身なら脂がのる夏が美味しく、煮付けは子持ちの時期である冬が旬ともいえ、一年中何かしらの種類のカレイが旬ということになる。
カレイは淡泊な中にも上品な旨みがあり、高タンパクで低脂肪。背びれ近くのエンガワにはコラーゲンも多い。癖がなく、どんな料理にも合うので庶民の魚といわれてきたが、近年は漁獲量が減っているため、活けものは高級魚として扱われている。
<鰈の基礎知識>
●科
カレイ科
●旬
品種により、夏または子持ちの冬
●名前の由来
身体が薄いことから、漢字のつくりは木の葉をイメージした薄いという意味の「枼」。また、目が身体の片側だけにあることから「かたわれ魚」が変化したものとも
●魚種
マガレイ、マコガレイ、メイタガレイ、
ナメタガレイ、アカガレイ、アサバガレイ、
イシガレイ、マツカワガレイなど
●地域名、幼名
口が小さいので「クチボソ」、味がいいので「アマガレイ」、大分では「城下かれい」、オタイヤ、マガレ、メジカなど
●選び方のポイント
表面にふっくらと張りがあり、しっかりとした弾力が感じられるもの
●主な生息地
九州・大分から北海道南部。東シナ海北部
●県別漁獲量ランキング
北海道:2万3100t
鳥取:2400t
島根:2100t
兵庫:2000t
東京:1200t
Q:どのカレイを選べばいい?
A:刺身、煮付け、唐揚げ……それぞれに向く品種があります
夏場に刺身で食べるならマコガレイ、マツカワガレイ、ホシガレイ。冬の子持ちを煮つけにするなら一番はナメタガレイで、アカガレイやマガレイもいい。唐揚げならメイタガレイやマコガレイがおすすめ。
Q:ヒラメとの見分け方は?
A:まず「左ヒラメに右カレイ」、そして「大口とおちょぼ口」
腹を下側にして、目が左にあるのがヒラメ、右にあるのがカレイ。ただし左に目があるヌマガレイなど法則外もいる。両者の違いは口にも出る。肉食で獰猛なヒラメは大口で鋭い歯をもつのに対し、砂の中の小さな虫を食べるカレイはおちょぼ口だ。
<column>
煮付けを美味しくつくるコツ
まずは臭みの原因となるウロコと皮のぬめりをよく取ること。皮目に熱湯をかけるとウロコが取りやすく、身が崩れにくくなる。煮るときは、濃いめのタレで強火でさっと、が基本。身に味を染み込ませるのではなく、甘じょっぱいタレを身にからませて食べる。みりんは身を固くするので甘みは砂糖がいい。
<trivia>
3枚ではなく5枚おろし
カレイなど平らな魚は5枚おろしが基本。ヒレと背骨に沿って切れ目を入れ、背骨側から包丁を入れて身を骨から剥がしていく。これを表裏で行うと、背骨と半身(背ビレ側と腹ビレ側)4枚の5枚に分けられる。
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Vol.8|アジ
Vol.9|イワシ
Vol.10|イカ
text: Yukie Masumoto 写真提供=国立研究開発法人水産研究・教育機構、
フーズリンク、農林水産省「うちの郷土料理」、小枝圭太(東京大学総合研究博物館)、
標津サーモン科学館、PIXTA
Discover Japan 2022年2月号「美味しい魚の基本」