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渋谷パルコ「TABERU 2022 特別展」
うつわ祥見 KAMAKURA×Discover Japan
八田 亨/尾形アツシ/田村文宏/額賀章夫/山田隆太郎/小野哲平

2022.6.6
渋谷パルコ「TABERU 2022 特別展」<br> <small>うつわ祥見 KAMAKURA×Discover Japan<br>八田 亨/尾形アツシ/田村文宏/額賀章夫/山田隆太郎/小野哲平</small>

「うつわ」は、食べるための道具。食べることは生きることであり、うつわは、人が生きるための道具です。

2022年6月18日(土)~7月3日(日)にかけて渋谷パルコの直営店Discover Japan Lab.および公式オンラインショップにて「TABERU 2022 特別展」が開催。めし碗、皿、鉢など、日々の暮らしに欠かせないベーシックだけれど力強いうつわが並びます。

本展に際し、うつわ祥見 KAMAKURAの代表・祥見知生さんに、TABERU展に込めた想いと、各作家の魅力を語っていただきました。うつわを手に取ることが、食べること、生きることを見つめ直すきっかけにもなる。そして、「このうつわと生きていこう」、そんな出合いが店頭で待っているかもしれません。

企画・文
祥見知生(しょうけん ともお)

2002年「うつわ祥見」をオープン。現在鎌倉市内に「うつわ祥見 onariNEAR」、「うつわ祥見 KAMAKURA」、「うつわ祥見 KAMAKURA concierge」の3つのギャラリーを構え、’20年、伊豆高原に「SHOKEN IZU」をオープン。著書に『うつわを愛する』(河出書房新社)等、多数。テーマ性のある特別展を各地で企画し、TABERU展は、東京・国立新美術館地階SFTギャラリー(’11年)にて開催した。
https://utsuwa-shoken.com

人生をともにしたい、うつわたち。

うつわを伝える仕事をして20年になる。この間、うつわとは何かをずっと考え続けてきたように思う。陶器ではなく、うつわ。この軽やかな響き。手に包むときの感触、重さ、その姿。日々のうつわは、特別な目利きがコレクションして楽しむものではなく、誰もが毎日手にして使う身近なものである。使うほどに美しく育つうつわの素晴らしさや頼もしさを知ってほしいと、これまでさまざまなテーマ展を企画してきた。

うつわとは何か。原点を見つめれば、本来うつわとは食べる道具だということに行き着く。どんなうつわで何を食べて生きていくのか。まやかしではなく、上辺のスタイルでもなく、もちろん人のまねごとでもなく。あくまでリアルに、私たちが生き続けていくために必要な道具としてのうつわを伝えたいと願っている。

2011年、東日本大震災の直後に国立新美術館の地階にあるギャラリーで開催したTABERU展では、土ものの美しく力強いうつわを展示し、食べるためのうつわの意味を省みる機会となった。あらためて今回、TABERU 2022特別展を行いたいと考えたのは、世界的なパンデミックや、武力侵攻の痛ましい映像が連日報道される中で、たとえようのない不安が厚い雲のように社会全体を覆っているように感じたからだ。私たちに突きつけられる現実に、いまこそ食べるためのうつわが本当に必要なのではないか。これから何が起ころうとも、力強く生き続けるために、「食べる」。人生をともに過ごして時を重ね、人を支えるうつわの出番だと、あらためて思う。

TABERUという言葉には「BE」がある。「BE」とは、存在と未来。生きることそのものを表す言葉である。ぜひこの機会に、よりよく生きるための食べる道具と出合っていただけたらと思う。

《展示作家・うつわラインアップ》
八田 亨(はった とおる)

白掛めし碗(4950円/Φ125×61㎜/219g)

1977年、石川県生まれ。2000年、大阪産業大学工学部環境デザイン学科卒業。’03年、陶芸家としての活動を開始。翌’04年、穴窯を築窯する。現在は大阪・富田林市と堺市に工房をもち、’22年4月に2基目となる穴窯を新設(P128)。国内外での展覧会を中心に作品を発表する

毎月薪窯を焚くことをこの数年間、自分に課している。その強い意思を支えているのが、焼物への情熱だ。作品をつくり、窯詰めをして火に焼(く)べる。焚き終えてひと息つく間もなく轆轤(ろくろ)を挽き次の窯に向かう。そのルーティンを身体に覚え込ませていく中で、彼が目指すのは「土を芯まで焼く」ことだ。芯まで焼き切るからこそ深みのある表情が生まれ、自然の情景のように複雑な美しさが表れる。白掛、黒掛、三島、そして自然釉(ゆう)。作品に一喜一憂しながらも、自身が追求してやまない土のうつわの、健やかな美しさへ、いま確実に向かっている。

本展では、穴窯焼成の作品とともに、長年の穴窯で取れた灰を生かした新作の灰釉めし碗も数多く出展される。こちらも注目したい作品となっている。

左:三島4寸皿(3850円/Φ140×30㎜/229g) 右: 白掛8寸皿(1万2100円/Φ230×50㎜/229g)

尾形アツシ(おがた あつし)

左:黒地刷毛目めし碗(5500円/Φ120×60㎜/200g) 中央奥: 白ヒビ手7寸皿(6600円/Φ215×25㎜/552g) 右: ヒビ粉引6.5寸皿(3850円/Φ190×35㎜/408g)

1960年、東京都生まれ。雑誌編集者を経て、’96年、愛知県立窯業高等技術専門学校卒業。’98年、愛知県瀬戸市で独立。2007年、奈良県宇陀市に工房を移し、登窯とガス窯による焼成で作陶を続ける。近年は欧米・アジアからオファーが多く、海外での個展も多数

土がなりたいようにつくる。つくり手としての尾形さんの心情はシンプルである。我欲よりも土の声に耳を澄ます、という姿勢が潔く、生まれてくるうつわには尾形さんならではのさりげない優しさや、土への信頼がある。ヒビ粉引、ヒビ手など、はじめから貫入(かんにゅう)※1が入った味わい深い作風に加えて、黒地に刷毛目(はけめ)※2の新作まで、尾形さんのうつわには、なんでもないおかずがよく似合う。普段の食卓において、なくてはならない名優だとつくづく感じる。和洋を問わず、すべてを包み込み食材を生かす、円熟のうつわなのである。
※1釉薬の表面にできたヒビ。うつわの表情のひとつ
※2化粧土を刷毛で塗る表現

田村文宏(たむら ふみひろ)

安南碗 あんなんわん(4400円/Φ125×60㎜/230g)

1978年、愛知県生まれ。2004年、愛知県立瀬戸窯業高等学校陶芸専攻科卒業。その後、ホンジュラス共和国、カンボジアにての窯業サポートなどのキャリアを重ね、愛知県岡崎市に築窯。穏やかで素朴な作風で、古陶に通じる美しさのあるうつわをつくる

安南手(あんなんで)とはベトナムから伝わる技法を指す。田村さんの安南手は、呉須(ごす)で描いた絵は素朴で、ふと懐かしさが込み上げてくる不思議な味わいがある。藍の色合いや少しほってりとした質感によるものだけではなく、きっと、田村さんがつくるうつわは人間の中にある善良な何かに訴えるものがあり、なんだかほっとするのである。古くから人づてに語り継がれてきた温かな伝承を私たちが大切にしたいと願う気持ちにも似て、田村さんがつくるうつわで食べる幸せは朗らかでいて、少し切なく、いとおしいものである。
※青色の絵付け材料

額賀章夫(ぬかが あきお)

左:黒掛け分け4寸ボウル(3300円/Φ120×60㎜/189g) 右:プリーツワーク4寸ボウル(3850円/Φ120×65㎜/220g)

1963年、東京都生まれ。’85年、東京造形大学デザイン学科卒業。茨城県窯業指導所ろくろ科研修生、向山窯での修業を経て、’93年、笠間市下市毛にて独立。’98年には笠間焼「伝統工芸士」に認定される。’99年より、工房を茨城県笠間市本戸に移し、作陶を続ける

額賀章夫さんのうつわの魅力のひとつが、軽やかな洒脱を感じる点だ。焼物の産地・茨城県笠間でのご活躍や、周囲からの信頼の厚さは、額賀さんのお人柄の開かれた知性によるものだとしみじみ思う。手にする人は老若男女問わず額賀さんを慕い、その作品を好きになる。代表作の鎬(しのぎ)を施したプリーツワークは洗練され過ぎない温かみがあり、毎日心地よいブランケットに包まれているような気持ちにさせてくれる。そんな作用のあるうつわは、そうお目にかかれない。旧知の友人のような親密さで、使われて愛される日々のうつわである。
※ヘラやカンナなどで表面を削って生み出される文様

山田隆太郎(やまだ りゅうたろう)

粉引めし碗(各4400円/各Φ140×30㎜/各229g)

1984年、埼玉県生まれ。多摩美術大学環境デザイン学科卒業。造形作家・樋口健彦氏に師事する。2010年、多治見市陶磁器意匠研究所修了後、多治見市にて独立。’14年、神奈川県相模原市に移転し、現在に至る。めし碗や蕎麦猪口など、暮らしのうつわを中心に制作を行う

山田隆太郎さんは神奈川県の相模湖の近くにある自然豊かな工房でうつわをつくり続けている。故・青木亮さんの工房だ。お話をうかがうと、とても自由な気持ちで焼物に向かっていることがわかる。元来器用だから実現できることなのだが、研究熱心なゆえにさまざまな土を使い、そのときの気持ちに素直につくるうつわには創作の幅があり、粉引も刷毛目も、土や化粧の配合や焚き方によってそれぞれ味わいのある豊かな表情を見せてくれる。次なる気持ちがどんなうつわを生み出してくれるのか、本当に楽しみでならないつくり手なのである。
※多くのつくり手に影響を与えた陶芸家。2005年に急逝

小野哲平(おの てっぺい)

薪めし碗(7700円/Φ130×70㎜/236g)

1958年、愛媛県生まれ。鯉江良二氏の弟子を経て、常滑にて独立。’84年より家族とともにタイ、ラオス、インド、ネパールなどを旅しながら暮らす。’85年、常滑にて築窯。’98年、高知県香美市に移住し、2001年、薪窯完成。連なる田んぼが美しい山間で作陶を続ける

近年の小野哲平さんのうつわには手にしたときの心地よさが感じられる。これまで触ったことのないような、土のうつわの感触にはっとさせられる。手にすると、強いだけではなく、包むという真の優しさがうつわというかたちになって目の前にあることに驚くのである。
「人間の思考する手前にある、感情というのか、心というのか、そこが変われば何かが変わると信じる」と哲平さんは言う。身体を使い、心を使い、感情の深いところへ届く土のうつわをつくり続けている。

薪取り皿(各6600円/各Φ150×30㎜/各248g)

※掲載商品はごく一部で、店頭にはさまざまなうつわが並びます
※サイズ・重量には個体差があります

オンラインでも購入いただけます!

本展作品は、Discover Japan公式オンラインショップでも取り扱い中。遠方などの理由で来店が難しい方などお気軽にご活用ください。

 

≫TABERU 2022 特別展 特設ページ
 

うつわ祥見 KAMAKURA×Discover Japan
「TABERU 2022 特別展」
会期|6月18日(土) ~7月3日(日)
会場|Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00 ~ 20:00 ※時短営業中
定休日|不定休
※最新情報は公式Instagram(@discoverjapan_lab)などで随時紹介しています。ぜひチェックしてみてください!

photo: Yuko Okoso
2022年7月号『沖縄にときめく』

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