HOTEL

《THE SHINMONZEN》
京都の古とモダンが融合する
ラグジュアリーなブティックホテル|前編

2022.6.10
《THE SHINMONZEN》<br><small>京都の古とモダンが融合する<br>ラグジュアリーなブティックホテル|前編</small>

祇園の北側、古美術商やギャラリーが点在する新門前通に開業した、わずか9室のインターナショナルホテル「THE SHINMONZEN(シンモンゼン)」。暖簾の奥に広がるシンプルで上質な空間に感嘆の声が上がる。

文=せきねきょうこ
ホテルジャーナリスト。1994年から現職。仏アンジェ・カトリック大学留学後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。環境・もてなし・癒しの3テーマを軸に現場取材主義を貫く。著書多数
www.kyokosekine.com

安藤忠雄氏の建築と
オーナーの美意識が心地よく融合

京都の街並みに溶け込むTHE SHINMONZENの前景。墨色の邸の「S」と染め抜かれた暖簾部分がメインエントランス。1階には名シェフ、ジャン・ジョルジュによるレストランが秋に開業予定

京都駅のホームで出迎えてくれるスタッフとともに送迎車に乗り込み、ホテルへと向かう。ヨーロッパの駅で見掛けるシーンのように旅の情緒満載だ。
 
墨色の邸は通りの家並みに溶け込み、時折、風に揺れる黒い暖簾に浮き上がる白い「S」のロゴが、かろうじてここがホテル「THE SHINMONZEN」であることを知らせてくれる。

暖簾をくぐり、一歩建物に足を踏み入れると様子は一変する。ミニマルなデザインの長い通路の壁は、一方が木彫の格子づくり、もう一方はコンクリートの打ちっ放しだ。シンプルなアプローチだが美しく、ここから名建築家・安藤忠雄氏の世界へとグッと惹き込まれ、滞在への期待感がさらに大きくなる。

アプローチの先にあったのは白川に面した明るいロビーエリアだ。半分がゲストエクスペリエンスキュレーター常駐のレセプションエリア、書棚で仕切られたもう半分は、お茶や軽食のできるラウンジとして使われる。

玄関の先に延びる美しいアプローチ。格子の壁とコンクリートの打ち放しはまさにWest Meets Eastを表現

THE SHINMONZENのオーナーはアイルランド人、パディ・マッキレン氏。彼はアートに造詣が深く、アートがゲストを癒す力にもなると確信する。館内には、そのマッキレン氏のコレクションが随所に飾られ華を添えている。実は、マッキレン氏は過去15年間、フランス・プロヴァンス地方にバイオダイナミック農法のワイナリー「シャトー・ラ・コスト」を所有する一方、2017年には約2.4㎢の土地に最高級クラスのホテル「ヴィラ・ラ・コスト」を開業し、世界的な賞を次々と受賞するなど、グローバルなビジネスを展開中だ。そのマッキレン氏が、プライベートコレクションのひとつとして誕生させたのが、日本初進出となる極上のブティックホテルである。

リバーサイドラウンジから祇園新橋を望む。祇園白川は国の伝統的建造物群保存地区にも指定されている情緒あふれるエリア

建築デザインはマッキレン氏の友人でもある安藤忠雄氏が担当。THE SHINMONZENの空間はシンプルでエレガント、上質なマテリアル遣いや調度品は南仏のプチホテルを思わせる。

かつて世界のセレブリティやそうそうたる美術愛好家が、日本のアートや古美術に魅せられ通ったという新門前通。貴重な歴史を宿すこの古美術品の聖地を、マッキレン氏は自身のホテルの地と決め、東西文化融合のホテルが誕生した。

4階「HINOKI」のリビングルーム。白のやさしいデザインのソファは、このホテルのためにつくられたエクスクルーシブなオリジナル

 

≫続きを読む
 
 

text: Kyoko Sekine photo: Mariko Taya
Discover Japan 2022年5月号「ニュー・スタイル・ホテルガイド2022」

京都のオススメ記事

関連するテーマの人気記事