《THE SHINMONZEN》
京都の古とモダンが融合する
ラグジュアリーなブティックホテル|後編
祇園の北側、古美術商やギャラリーが点在する新門前通に開業した、わずか9室のインターナショナルホテル「THE SHINMONZEN」。暖簾の奥に広がるシンプルで上質な空間に感嘆の声が上がる。
京都と世界の架け橋
古美術商が集まる新門前通に佇む
新門前通は浄土宗総本山知恩院へと続く門前通りであり、500mほどの道の西は川端通から、東は東大路通まで続く。限られた距離に70軒もの古美術商が集まる。
その背景もあり、ホテルが用意するアクティビティのひとつに、ゲストエクスペリエンスキュレーターの案内で古美術商を訪ね歩く散策がある。この日、キュレーターの野村健人氏が案内してくれたのは、まずは老舗の古美術商「梶古美術」だ。7代目の当主・梶高明氏のグローバルな活動や、大阪万博を機に海外との交流が盛んになった新門前と古美術の歴史をはじめとしたアカデミックな話に聞き入った。
そしてもう一軒、“ぜひに”と案内されたのが「てっさい堂」である。ほの暗くスタイリッシュな新しい店舗には、主の貴道俊行氏が目利きしたセンスのいい骨董のうつわが並ぶ。なぜ古伊万里が京都に集まっているのか、といった日本の古美術について興味深いストーリーの熱弁に時を忘れた。お茶やお菓子によるもてなしの所作のひとつにも、美意識の高さを見せられた。
細やかな配慮が行き届いた
心地いいホテル滞在
THE SHINMONZENは、自然環境への配慮を込めたホテルづくりを心掛けている。日本では竹、漆、絹、石など自然素材にも神が宿る“八百万の神”という思考が存在し、自然との共存が古くから日常だった。このホテル内でも檜香るバスタブに大理石のシンク、最上質の畳が敷かれた「TATAMI ROOM」、障子を通して差し込む淡い光など、随所に自然素材を取り入れた折衷の端麗さが宿る。どの部屋からも白川の流れがすがすがしく見え、京都に滞在する歓びを体感できるのだ。
特筆すべきは、創業者であるオーナーと、彼の意思を具現化した安藤忠雄氏の感性と技。からみ合った二人の美意識が相乗効果を生み、和と洋が生かされたシンプルモダンでラグジュアリーなホテルが生まれたのである。客室のアメニティや障子、手織りじゅうたんにもこだわりを感じる。
メインレストランのオープンは、世界的情勢からもう少し開業を待つこととなる。エグゼクティブシェフのモコ氏は、師であるジャン・ジョルジュ氏の来日を心待ちにしながら、「Farm To Table」を基本に、毎日、大原まで出掛け新鮮な食材を仕入れ、生産者との関係を築きながら、腕を磨く日々を送っている。
THE SHINMONZEN
住所|京都府京都市東山区新門前通西之町235
Tel|075-533-6553
客室数|9室
料金|1泊朝食付13万円〜(税・サ込、京都駅からの送迎込み)
カード|AMEX、DINERS、Master、VISAなど
IN|15:00
OUT|11:00
夕食|フランス料理(レストラン)、仕出し料理(部屋)
朝食|洋食(レストラン)
アクセス|車/JR京都駅から約18分
電車|京都市営地下鉄三条駅から徒歩7分
施設|レストラン
text: Kyoko Sekine photo: Mariko Taya
Discover Japan 2022年5月号「ニュー・スタイル・ホテルガイド2022」