とろりと揺らぐ、三浦侑子のガラスのうつわ
「Bamboo Glass(バンブーグラス)」
窓から差し込む光に映し出され、揺らぐ影が美しい、三浦侑子さんのガラスのうつわ。岡山県北部の山間にあるガラス工房「Bamboo Glass」で生み出されるうつわは、その穏やかな暮らしぶりを表すかのように温かい。いま注目を集める三浦さんのガラスのうつわを紹介するとともに制作背景に迫る。
三浦侑子(みうら ゆうこ)
1982年大阪府生まれ。京都造形芸術大学在学中、ガラススタジオAatyで吹きガラスをはじめる。卒業後、富山ガラス造形研究所造形科にてガラスの基礎知識を学ぶ。磐田市新造形創造館(静岡県)ガラス工房スタッフとして5年勤務。現在、岡山県鏡野町の自宅にある吹きガラス工房Bamboo Glassにて制作。
Instagram|@bambooglass_miura
暮らしにそっと溶け込む
素朴で優美なガラス
岡山県鏡野町の山深い場所に、吹きガラス工房「Bamboo Glass」はある。目の前には一面に田園風景が広がり、道をたどっていくと紅葉の名所としても知られる奥津渓谷。秋は眩しいほどの紅葉、冬は圧巻の雪景色を見せる。ガラス作家・三浦侑子さんは夫の和さんとともに、自宅を兼ねたこの場所で美しいガラスを生み出している。
一般的に上質なガラスというと、すっきりとした透明で、クリスタルのような輝き、泡や異物が混ざっていないガラスを連想する人が多いかもしれない。しかしながら、三浦さんが理想とするガラスはそのイメージとは少し異なる。
「私が魅力を感じるガラスは、産業革命よりも前につくられた、少し濁っていたり、泡が入っていたりするようなガラス。透明でも色でもない、生成りの布のような、素朴なガラスをつくっていきたいです」
ガラス作家でありながら一生活者である三浦さん。作品づくりにはその感覚が反映されていた。
「山間で生活する中で、自分は世界の一部であるという感覚が私の深くに根を張って、制作においても、その感覚が芯になっています。自然の一部として、季節を受け入れて暮らす。歴史の一部として、先人たちの手でつくられたものを学ぶ。家族の一員として、食事をつくり生活を整える。そんなことを思いながら、日々ガラスを吹いています」
目の前にある豊かな自然と、暮らし、物。それらが地続きであることを意識しながらつくられるからこそ、三浦さんのうつわは暮らしに寄り添う温かさを持つのかもしれない。
とろりと柔らかい質感と、
水面のように直線的なライン
三浦さんのガラス作品は大きく二種類に分かれている。光を集めて輝きガラスの透明感を楽しめる「クリア」と、うっすらとしたグレーに色づき雰囲気のある「スモーク」。どちらも、とろみと透明感を併せ持ち、窓から差し込む光に透かすと、影が揺らぎ静かに輝き出す。優しいシルエットに、ピンと張り詰めた水面を思わせる直線的なラインの組み合わせは、唯一無二の美しさだ。
滑らかな曲線と揺らぎをもたらす模様。ふんわりと手に馴染むモール台付グラス
涼やかさと温かさを兼ね備えた三浦さんのガラスのうつわ。自分自身の暮らしを大切にしながらつくられる一つひとつの作品は、穏やかな日常をもたらしてくれる。