ホテルジャーナリストせきねきょうこさんに聞きました!
2020年ホテル戦国時代がやってくる!<前編>
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、日本のホテル界はいま、戦国時代を迎えている。ホテルジャーナリストのせきねきょうこさんに、最新ホテル事情や傾向、注目すべきポイントをうかがった。
Profire:せきねきょうこ
世界中のホテルや旅館を現場取材。雑誌、新聞、ウェブなどで連載多数。小誌でも「せきねきょうこのワンダフル・ホテル・ライフ」を連載中。ホテルのコンサルタントやアドバイザーも務める。
メイド・イン・ジャパンのホテル文化ができつつある
――2020年に向け、国内のホテル建設ラッシュがはじまっていますが、2017年にオープンしたもののうち、特に印象的だったホテルを教えてください。
まずは 「コンラッド大阪」。全面ガラス張りのロビーなど、これまでにないつくりで、さらにアートと和を融和させたホテルです。単にアートを壁に掛ける、フロアに置くということではなくて、スペースをうまく使って、名和晃平をはじめ個性あふれるアーティストたちがそれぞれ表現していると思います。
正統派でいえば 「ホテル ザ セレスティン京都祇園」場所が便利でつくりもいいですね。特徴的なのはメインのダイニングに京都の老舗天婦羅店を入れていること。メインダイニングはたいてい日本料理店かフレンチ、イタリアンですから、かなり珍しいと思います。
リゾートでいえば 「INFINITOHOTEL&SPA 南紀白浜」。個人企業経営のホテルで、ホスピタリティにしても食事にしても、オーナーが大事につくったホテルということを肌で感じられる日本的なリゾートだと思います。
まだ行っていないものの、気になっているのは 「アスコット丸の内東京」。一等地の高級ホテルですが、料金は2万~30万円と幅が広い。〝暮らすように泊まる〞をコンセプトにしていて、キッチンや洗濯機付きの客室もあります。
番外編としては女性専用カプセルホテル 「ナインアワーズウーマン神田」。女性が安心して泊まれる清潔感のあるホテルで、出張時に宿泊する方はもちろん、たとえば日中に休憩のため利用する営業職の方や、走った後にシャワーや着替えのために利用するランナーなども多いそうです。
――かつては、ホテルのジャンルといえば、料金によってシティホテルかビジネスホテルかに大きく分けられたように思うのですが、これだけさまざまなホテルができると、そうもいかなくなりますね。
そうですね。最近はシティホテルとビジネスホテルの間の層、たとえば先ほども挙げた「ホテルザ セレスティン京都祇園」のように、小規模で宿泊特化型ながらラグジュアリーを目指し、料金も2万~5万円くらいという利用しやすいホテルなど、新しいジャンルができているように思います。
ラグジュアリー系のホテルでいえば、都会であってもリゾートのように滞在型を売りにするところが増えています。滞在型ホテルの特徴は、クラブラウンジやスパ、ジム、複数の食事処を設けるなど、連泊をしても飽きない工夫をしていること。 「京王プラザホテル」でも近年、クラブラウンジが新設されました。
また、コミュニケーションの場としてのライフスタイル型ホテルも増えています。今年2月に渋谷に開業したばかりの「ホテル コエ トーキョー」のようにカルチャーをミックスしたライフスタイル型ホテルの場合、他業種の人たちが手掛けたものも多いですね。大手の開発業者やホテリエが2020年に向けてホテルをつくるという、これまでの方法論でのいわゆるホテルらしいホテルではなく、彼らの場合は、〝いま、こういうホテルがないからつくりたい〞という、自由な感性に基づくホテルづくりをしているようです。
そうしてトレンドが多様化している理由のひとつには、海外のホテルのまねではなく、自分たちのクリエイティブな感性でコンセプトをつくることで、個性がはっきりしてきたことがあるでしょう。その結果として、日本らしさがどこかに漂うメイド・イン・ジャパンのホテル文化ができつつあるといえると思います。
※この記事は2018年3月6日に発売したDiscoverJapan4月号から一部抜粋して掲載しています。