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美しく、清潔感がある。
川合優さんの「杉の弁当箱」
ただいま、ニッポンのうつわ

2021.4.4
美しく、清潔感がある。<br>川合優さんの「杉の弁当箱」<br><small>ただいま、ニッポンのうつわ</small>
(大)W180×D125×H65mm (中)W165×D110×H50mm (小)W150×D90×H35mm

自分の料理や暮らしに合ううつわを求め続けて、高橋みどりが最近気になっているのが、ニッポンのうつわ。背景を知ると、使うのがもっと楽しくなることを伝えたい。今回は、日本の木工技法と木の文化を大切に守る川合優さんの「杉の弁当箱」を紹介します。


高橋みどり

スタイリスト。1957年、群馬県生まれ、東京育ち。女子美術大学短期大学部で陶芸を学ぶ。その後テキスタイルを学び、大橋歩事務所、ケータリング活動を経てフリーに。数多くの料理本に携わる。近著に『ありがとう! 料理上手のともだちレシピ』(マガジンハウス)など

川合優さん
1979年、岐阜県生まれ。京都精華大学芸術学部建築専攻。飛騨の森林たくみ塾で木工、京都で椅子張りの修業後、2007年独立。木工家として作品を発表し、日本の針葉樹を活用するブランド「SOMA」のディレクターを務める。

川合優さんの作品は、美しく清潔感がある。この弁当箱も、さりげなく、しかし隅々まで行き届いた仕事で、使う人も自然に丁寧な気持ちになる。盛り込んだ料理も見目よく映り、ふたを開ける時の喜びはひとしおだ。

学生時代、川合さんは建築という大命題にのめり込む。図面を引くだけでなく自ら手を動かせるようになりたいという思いもあり、向かった木の仕事が活路となった。家具づくりを学び、とりわけ椅子制作に打ち込んだ後に独立。弁当箱は最初、自分用につくったという川合さんには、人間と道具の心地よい関係や、自然の理にかなったかたちが、軸としてあるようだ。

故郷の岐阜に戻った川合さんは、木の市場や森林に足を運び、林業の現実に向き合う。戦後、天然林を壊してまで植えた杉や檜が放置される一方、国内で使用する木材の約割が輸入品なのだ。国産針葉樹を使うことで、木を育て、生かす循環を山に取り戻し、日本の木の文化を守りたいと立ち上げたのが、「SOMA」というブランド。木工家は本来、作品に適う材を専門業者から調達する。何百年を経た命を自身の手で別のものに変える行為を、敬虔さを忘れずに続けてきた川合さんだからこそ、戦後80年かけて育った材を、よりよく生かしたいという思いがある。

単につくって消費されるだけではないものづくりを実践する川合さん。その姿勢に共鳴するのは、高橋さんもまた、単に魅力や使い方を見せるだけでなく、うつわを通して食べることの意味を問いながら仕事をしたいと願うからだ。

川合優さんの木工の仕事の基礎知識

日本の木工技法
日本の木工技法には、挽物、刳物、指物、曲物、箍をはめる桶などの箍物がある。川合さんが学んだ家具制作は基本的に指物技術を用い、板を指し合わせたこの弁当箱も同様。川合さんは箍物以外はすべて手掛ける。

戦後の針葉樹植林と林業
戦後、建材の需要急増に伴い杉や檜の植林が推進されたが、輸入自由化による廉価な外材の普及や建築様式の変化、人件費の高騰などで不採算、後継者不在を招き、人工林の針葉樹は使われずに放置されがちな現状。

国産針葉樹を生かすSOMAの活動
杣人にちなむ名で、利用先のない国産針葉樹を活用したものづくりで森林への利益還元を目指しつつ、国土の7割が森林で本来木が育つ豊かな土壌に恵まれた風土や植生、木の楽しさやおもしろさを伝えたいという。

text : Akiko Nariai photo : Yuichi Noguchi
Discover Japan 2018年4月号「ニッポンの未来戦略。」


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