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日本人の胃袋をつかむ味噌の世界へ

2019.11.14
<b>日本人の胃袋をつかむ味噌の世界へ</b>

地域ごとに多彩な味わいがある味噌。特徴などの基本を知れば楽しみ方がより豊かに。全国の味噌蔵を訪ね歩く実践料理研究家・岩木さんにその魅力を教わった。

実践料理研究家・みそ探訪家
岩木みさきさん
1988年、神奈川県出身。10代の頃摂食障害や肌荒れに悩んだ経験から、食の大切さを実感し料理の道へ。全国の味噌蔵探訪を続け、来年には味噌関連の書籍を出版予定。

http://misotan.jp

味噌

 料理研究家としての活動と並行し、全国の味噌蔵を訪ね歩いて得た情報をサイト「みそ探訪記」から発信する岩木みさきさん。活動開始から3年半の間に訪ねた蔵は全国50カ所以上にも!

「料理に使う調味料について深く知りたくて味噌蔵を訪ねるように。中でも昔ながらの木桶で仕込む味噌は全生産量の1%以下ともいわれていて、それを守るため、“ガチみそR”と名づけて魅力を伝える活動も行っています」

 岩木さんが思う味噌の魅力のひとつが、地方や蔵それぞれがもつ多様な個性。しかし実際に売り場で見ると、赤味噌や白味噌など色の分類もあれば、“信州味噌”など地方による分類もあり、一般人にはわかりにくい側面も。

「まず原料の麹により3種類あること。その上で色や味の違いを押さえれば把握しやすいです。この基本を知っておけば、味噌のことがよくわかり、好みの味噌が選べるようになりますよ」

めぐった味噌蔵にある伝統製法木桶仕込み=ガチみそⓇと向き合う岩木さん。
年に1回春には味噌を醸造する蔵元をゲストに迎え、一般の生徒さんなどとともに学びと交流の場をつくっている。写真は今年の様子

味噌はどうやってできる?

味噌の主な原料は、大豆と麹、塩。種麹を米や麦、大豆に付け麹をつくり、蒸してつぶした大豆に麹と塩を混ぜ、必要に合わせて水を加えて混ぜ、発酵・熟成させるのが基本。

この期間に行われる働きと活動
① 麹の酵素がたんぱく質や糖分を分解
② 酵母はアルコールを生成し香りを醸す
③ 乳酸菌が有機酸を増やし、味わいを生む

麹とは……
麹は穀物に種麹を付けて培養したもの。麹の原料により味噌の種類が変わり、米味噌は米、麦味噌は麦、豆味噌は豆で麹がつくられる

味のバリエーションは何の違いから生まれる?

甘みや塩味、旨み、酸味、苦み、渋みなどで構成される味噌の味。以下の3つを、好みの味噌を見つける手掛かりにしよう。

熟成期間
熟成期間は、白味噌は数週間〜1カ月、麦味噌は2〜4カ月、米味噌は6カ月〜1年、豆味噌は約3年が標準。熟成期間が長ければ長いほど塩辛さが和らいだり、旨みが濃厚になる。同じ熟成期間でも気温などにより色は変わるので、色が濃いから塩辛いとは限らな

麹と塩のバランス
麹が多いと甘く、塩が多いと塩辛くなる。塩分濃度により、5〜7%は甘味噌、7〜11%は甘口味噌、11〜13%は辛口味噌とされる。同じ塩分量でも麹が多いほうが甘くなる。パッケージの原材料表示は多い順なので、米味噌なら「米」が先に書いてあるものが甘口に

麹の種類
使う麹の原料により「米味噌」、「麦味噌」、「豆味噌」に大別。2種類以上をブレンドした「調合味噌」もある。最もメジャーなのが米味噌で、味のバリエーションも豊富。麦味噌は甘さや香ばしさがあり、豆味噌は長い熟成期間で生まれる豊かな旨みとコクが特徴

種類は大きく3つ、色、味わいでさらに分類

使う麹によって分けられる「米味噌」、「麦味噌」、「豆味噌」。さらに熟成期間により、色合いや味わいにも変化が生まれる。

米みそ
地域:全国
熟成期間:6カ月〜1年
国内生産の8割が米味噌。関西の白味噌などの「甘味噌」、瀬戸内・九州地方に多い「甘口味噌」、関東甲信越や東北の「辛口味噌」と味わいも豊か

麦みそ
地域:瀬戸内、四国、九州
熟成期間:2〜4カ月
大麦やはだか麦でつくった麦麹を使う麦味噌は、塩分量は少なめで甘みが強い。瀬戸内麦味噌や九州味噌など、麦の香ばしさをもつ淡色の味噌が多い

豆みそ
地域:愛知県、三重県、岐阜県
熟成期間:1〜3年
大豆麹でつくられる味噌で、赤味噌とも呼ばれる。岡崎市の八丁味噌が有名。熟成期間が長いため濃い茶色になり、強い旨みとコクのある味わい

Discover Japan 11月号「すごいぜ!発酵」

文=吉永美代 写真=遠藤麻美、野中弥真人

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