FOOD

島根県出雲市
來間屋生姜糖本舗の「生姜糖」
《福田里香の民芸お菓子巡礼》

2023.6.23
島根県出雲市<br>來間屋生姜糖本舗の「生姜糖」<br><small>《福田里香の民芸お菓子巡礼》</small>
左側は個包装の生姜糖。右側は折っていただく板状の生姜糖。

民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は、島根県出雲市・來間屋生姜糖本舗の「生姜糖」を紹介します。

福田里香(ふくだ・りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。12年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中

歴史を感じる板状の生姜糖の箱。600円(板1枚入)

「日本の生姜糖の元祖」ともいわれているのが、島根県出雲市の「來間(くるま)屋生姜糖本舗」です。戦前に刊行された『出雲新風土記』の寄稿「島根民藝録」には「雲州平田名物來間屋生姜糖発明者來間屋文左衛門翁ノ苦心(うんしゅうひらためいぶつくるまやしょうがとうはつめいしゃくるまやぶんざえもんおきな)」と題して次のように記述されています。

「(出雲)平田の名物として一般の推賞措(お)かぬものは生姜糖である。(中略)然(さ)るに來間屋で製造する生姜糖は厚さが厚く質が繊密で、梅雨や秋霜にも決して湿ったり変質したりせぬのみか生姜の風味を完全に活かしているなどまさに全国一である」と称賛の嵐。これぞ民芸お菓子と呼ぶにふさわしい銘菓です。初代の來間屋文左衛門は実験と失敗を重ねた末に、煮ると完全に繊維が溶けてなくなる出西生姜の古根に優るものはないと確信し、1715(正徳5)年に完成した製法を秘して一子相伝としたそうです。

この創業300有余年の山陰銘菓の材料は、砂糖と味つけのショウガのみ。少しの湿り気を含んだ薄いタブレットは、噛むと端からさらりと崩れ、舌の上で出西生姜独特の辛みと香りが広がります。

個包装の箱。中身は紅色の生姜糖入りで紅白になっていて可憐。540円(白9個、紅3個入)

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來間屋生姜糖本舗
住所|島根県出雲市平田町774
Tel|0853-62-2115
営業時間|9:00〜19:00
定休日|不定休
https://syougatou-honpo.jp

text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
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