《Aya Ogawa 個展》
北欧デザインに学んだ生活に馴染む小川綾のうつわ
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手掛けるもの一つひとつに、道具を超えたストーリーが息づく。作品を通して情景を伝えたいと語る陶作家・小川綾さんに、作陶に対する思いをうかがった。
渋谷パルコのDiscover Japan Lab.では、2023年2月3日(金)~17日(金)にかけて「Aya Ogawa 個展」を開催!公式オンラインショップでも2月6日(月)20時より順次取り扱い開始します。
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小川 綾(おがわ あや)
大阪で木村彰弘さん(現・陶芸教室Tomole)に陶芸を学び、デンマークで行われた「TORTUS COPENHAGEN」主宰のワークショップへの参加などの経験を経て、拠点を東京へ移す。複雑な色や質感を見せる作品が国内外で支持され、「第51回欧美国際公募 フィンランド美術賞展2019」では優秀賞受賞。
思わず触れたくなる
柔らかなフォルムと質感
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陶作家になる以前は、WEB関連の仕事に携わっていた小川綾さん。仕事内容には満足していたが、多忙な毎日に心がすり減りつつあった。そんな折に出合ったのが陶芸教室だった。
「土の感触、ろくろを回すときの高揚感。すべてが新鮮で、陶芸の世界にのめり込んでいました」
平日は仕事に励み、週末は教室に通う日々。憧れの陶芸家、エリック・ランドンさんのワークショップに参加するため、一人でデンマークに赴くこともあった。
「あのときは、英語もろくに話せないまま勢いで北欧に。ワークショップでは参加者皆でろくろを回したのですが、制作中にふとアトリエの棚を見ると、彼のつくった花器が飾られていて」と、当時の様子を懐かしそうに語る。ドライフラワーが大胆に生けられたそのさまは、日本の花器にはない自由な雰囲気を醸し出していたそう。
「単なる道具ではない、使う人の心を動かすものをつくればいいのか」と気づかされ、帰国後は心新たにうつわづくりに専念。土の配合や釉薬の濃淡など、一つひとつの工程に微妙に変化を加えながら、理想のフォルムや質感を追求。記録も兼ねて作品をSNSに投稿していると、思いがけず国内外から注文が舞い込んできた。
「当初は空いた時間に受注分をつくっていたのですが、仕事との両立が難しくなり、思い切って陶作家としての道を選ぶことに」
小川さんの代表作『MIDNIGHT STARDUST』シリーズは、夜空に輝く星屑の光を青の釉調で表現。眺めているだけで情景が浮かんでくる不思議な魅力をもつ。
「お客さまが作品を吟味している姿が好きなんです。作品ではなく、『あなたこそ美しいですよ』と伝えたいくらい。今回開催する個展のテーマ『You are beautiful』には、そんな私の気持ちを込めました。手に取ってくださる方のまなざしがあって、はじめて作品は成立するのですから」
丸く穏やかなフォルムに柔らかな質感。小川さんの作品には、その場の空間を和やかにする力が宿っている。肩の力を抜いて、ひと休み。お気に入りを愛でながら、余白の時間を堪能したい。
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text: Misa Hasebe photo: Yuichi Noguchi
2023年2月号「癒しの旅と温泉。」