柏井壽さんが行く
京都“茶の謎解き”名所案内【後編】
京都の街を歩けば出合える神社や庭園、美術館……。茶にまつわる京都の名所に隠された秘密に、京都の街を知り尽くした作家・柏井壽さんが迫ります。
実業家たちはなぜ、
茶に魅せられたのか?
京都には、茶道具をはじめとして、茶の湯ゆかりの銘品を集めた美術館が、いくつかあります。
それらのほとんどは、実業家と呼ばれる人たちが蒐集したものを展観しています。
実業家と茶の湯。一見つながりがないように見えて、実は深く結び付いているのです。なぜでしょうか。なぜ実業家たちは茶に魅せられ、茶の湯にまつわる品々を集めようとしたのでしょう。
その答えを解くカギは、一番最初にご紹介した「待庵」にあります。
待庵という茶室は、天下分け目ともいわれた、天王山の戦いのさなか、戦を振り返りながら、荒ぶる心を鎮め、次の戦略を練る時間のためにつくられたのだろうと思います。
その戦国時代を現代に置き換えれば、実業家と呼ばれる人たちは、戦国武将さながら、日々戦を続け、その勝ち負けを競っていると言っても、決して過言ではないでしょう。
茶の湯にひとときの安らぎを得て、今後の展開に思いをいたすうち、戦国武将たちと同じように、茶道具に魅かれていったのは、当然のことだろうと思います。
また、ビジネスの世界においても、美意識を磨くことは、成功への足掛かりになるといわれていますから、その面からも茶に惹かれていったのでしょう。
そんな実業家たちの収集品を主にした美術館は、京都にはいくつもありますが、代表的な美術館を3つご紹介しましょう。
「古香庵」と名づけられた茶室も備える「細見美術館」は、琳派のコレクションでも知られ、日本美術を中心に多彩な展覧会を積極的に開催しています。
「千利休生誕500年 利休茶の湯の継承」展を開催している「野村美術館」は立礼茶席も設けてあるので、ぜひ一服を。
「四君子苑」という茶室と庭園を併設する「北村美術館」では、「時雨降る」と題した特別展を開催中です。ぜひ、それぞれの美術館に足を運んでみてください。
細見美術館
住所|京都市左京区岡崎最勝寺町6-3
開館時間|10:00〜17:00
休館日|月曜(祝日の場合は翌日休)
料金|展覧会によって異なる
Tel|075-752-5555
野村美術館
特別展「千利休生誕500年 利休茶の湯の継承」
会期|〜12月11日(日) ※会期中展示替えあり
住所|京都市左京区南禅寺下河原町61
開館時間|10:00〜16:30
休館日|月曜(祝日の場合は翌日休)
料金|一般800円、大高生300円
Tel|075-751-0374
北村美術館
秋季取合展「時雨振る」
会期|〜12月4日(日)
住所|京都市上京区河原町今出川南一筋目東入梶井町448
開館時間|10:00〜16:00
休館日|月曜(祝日の場合は開館)、祝日の翌日
料金|一般600円、大高中生400円
Tel|075-256-0637