柏井壽さんが行く
京都“茶の謎解き”名所案内【中編】

2022.11.20
柏井壽さんが行く<br>京都“茶の謎解き”名所案内【中編】

京都の街を歩けば出合える神社や庭園、美術館……。茶にまつわる京都の名所に隠された秘密に、京都の街を知り尽くした作家・柏井壽さんが迫ります。

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松花堂弁当の由来にも
茶の湯文化あり!

幕の内弁当と並んで、よく知られているお弁当に、松花堂弁当というものがありますが、このルーツがお茶にあるということは、存外知られていません。
 
そのルーツは京都の南、八幡市にあります。
 
「石清水八幡宮」にあった「瀧本坊」の住職を務めた松花堂昭乗は、近衛信尹、本阿弥光悦とともに、「寛永の三筆」と称せられるほどの能書家でありながら、茶人としても知られていました。
 
その昭乗は、農民が種を分類して入れていた箱にヒントを得て、絵具や筆を収める四角い箱をつくりました。
 
それから数百年の後、料亭「吉兆」創始者で茶人の湯木貞一が、松花堂箱を料理のうつわとして使用。1933年に大阪で開かれた茶事にて、松花堂箱を弁当に仕立て、蓋を付け提供したことが評判となり、松花堂弁当と呼ばれるようになったというわけです。
 
京都市の南、八幡市にある「松花堂庭園・美術館」には「京都 吉兆 松花堂店」があり、予約制ですが、ここで松花堂弁当を食べることができます。
 
名園と賞される日本庭園「松花堂庭園」を散策し、併設された美術館で、八幡ゆかりの美に触れ、素朴を数寄に昇華した「松花堂弁当」に舌鼓を打つ。これもまた、茶ありきのひとときです。

「京都吉兆 松花堂店」では現在も、四季折々の山の幸・海の幸が詰まった松花堂弁当2種類を提供している。写真は、八寸や焼物などに加え、釜炊きご飯やデザートがセットになった松花堂弁当「雅」(8300円)
©京都吉兆

松花堂庭園・美術館
住所|京都府八幡市八幡女郎花43-1
開館時間|9:00〜17:00 
休館日|月曜(祝日の場合は翌日休) 
料金|〔庭園〕一般300円、大高生220円、中小生150円
 〔美術館〕一般400円〜(展覧会によって異なる) 
Tel|075-981-0010

 

  
 
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