FOOD

島根県松江市 風流堂の「山川」
《福田里香の民芸お菓子巡礼》

2022.10.26
島根県松江市 風流堂の「山川」<br><small>《福田里香の民芸お菓子巡礼》</small>
棒状の打ち菓子を手で割って盛りつける。

民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は、日本三大名菓のひとつで不昧公の御歌に由来して名付けられた、しっとりとした口当たりの風流堂の「山川」を紹介します。

福田里香(ふくだ・りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。12年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中

上品な貼り箱に紅白2本並ぶ佇まいが美しい「山川」1枚入 972円

「島根県は民藝と縁が深い土地柄です。出雲市には「出雲民藝館」があり、県内にはバーナード・リーチが直接指導した「出西窯」や「湯町窯」がいまも素晴らしいうつわをつくり続けています。

柳宗悦の名著『手仕事の日本』には「出雲には松平という殿様が出ました。」という一節があります。そこから不昧公は名君で国を富まし、文化を進めることに身を砕き、茶の湯を嗜まれ、有名な茶器をたくさん集め、茶室「菅田庵」を設け、楽山窯で好む茶器を焼かせたと、数々の業績を連ね、不昧公の平和な気風が出雲人に及ぼした影響は大きいと激賞しました。

その不昧公が命名した打ち菓子が「山川」です。1890(明治23)年創業の老舗「風流堂」は現在もつくり続けている店舗のひとつ。昔の文献を読み解くなど困難を極めたという山川の復刻。赤が紅葉の山を、白で川(水)を表しているそうです。「山川」を口に含めば、後に残らない軽やかな甘みが抹茶の鮮烈な味わいを豊かに引き出します。島根で民藝の旅を楽しむなら、ぜひ購入したいお菓子です。

「山川」に和三盆糖を入れて創製した「古代山川」。1枚入 1296円

風流堂 寺町本店
住所|島根県松江市寺町151
Tel|0852-21-3241
営業時間|9:00〜18:00
定休日|第1日曜
www.furyudo.jp

text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
Discover Japan 2022年11月号「京都を味わう旅へ」

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