《資生堂×HAKUTEN CREATIVE》
開業150周年を記念し、
銀座・資生堂パーラーで”生きる地層を展示
資生堂クリエイティブは博展とともに、資生堂創立150周年と、資生堂パーラー開業150周年を記念し、本物の地層を使用したウィンドウアートを9月末頃まで展示する予定だ。
資生堂の社名は、古代中国の書物「易経」の一節「至哉坤元 万物資生」に由来するという。それは、「大地の徳はなんと素晴らしいものであろうか、すべてのものはここから生まれる」という意味だそうだ。そこで同社では、節目となる年にこの言葉の意味を改めて考えようと、地層をモチーフにウィンドウアートを制作。地層は、大地が生きてきた時間そのものであり、私たちはその大地の徳に生かされているともいえる。地層の生命力で「万物資生」を表現することで、見る人の心の根源を震わせるものとなるだろう。
日本を代表する街として
発展してきた銀座の街並みと、
地層を重ね合わせる
大地の雄大さをどう表現するか検証する中で接状剥離という造形保存技術に辿り着いた。実際に地層を剥ぎ取ることでありのままの表情を保存する手法である。
ビルのウィンドウは2つの大窓と6つの小窓で構成されており、大窓にはそれぞれ形状の違う地層を展示している。地層の大きさは4mにも及び、そこには何十万年という途方もない年月の歴史が詰まっている。
地層の表情からは、さまざまな歴史や情報を読み取ることができる。例えば、夏に堆積した層と冬に堆積した層では、その色に大きな差がある。灰色の部分が冬の層に当たるが、これは冬の間に枯れ落ちた葉や枝が炭素となり堆積することでこの色が生み出されている。
そして、夏の層と冬の層が繰り返されることでできる模様は「年縞」と呼ばれており、地殻変動による地層のズレや亀裂と合わせて、その土地の気候変動や歴史を読み取れる。
季節の移り変わりや自然現象は、どれも人が立っている大地を形作ってきたものだ。その膨大な歴史の表情は、見る人に大地の雄大さや偉大さを感じさせてくれる。
大地が生きてきた時間、
地層の生命力を表現
地層には一日一回転という、一見すると動いていることに気づかないような、ゆったりとした動きを与えた。街行く人が見る時間によって、表情が変化する仕掛けを施した。膨大な時間の中で、気づかないうちに動いている大陸の壮大な動きを表現している。日の光を浴びながら表情を変化させる様は、まるで生きているかのような生命力を感じることができる。
地層のリサーチ
日本有数の美しい地層が見られる那須塩原の要害公園に訪問。途方もない年月をかけて形成された地層を前に、とてつもない雄大さを感じた。それはまさに、「万物資生」の表す大地の雄大さそのものであり、資生堂の歴史の積み重ねと重なった。
この場所の地層は湖成層といい、元々湖だった場所に、比較的安定した環境の中で砂や泥が堆積することによってできる層のため、水平方向に延びる繊細なラインが特徴だ。その美しい模様の中には亀裂や錆、生物や植物の化石といった大地の歴史がはっきりと刻まれていた。周辺の山々から流れる水によって時間をかけて大地が削り出され、今もなお途方もない年月をかけて形を変え続けている。
地層の剥ぎ取り
地層に特殊な薬剤を散布し、そこにガラス繊維の布を貼りつけていく。一日待つと地層の表面が繊維に定着するので、それを一気に剥がし取る。本来は巨大で硬く、自由に操ることができない地層を、自然現象による亀裂や、表面の凹凸といった立体的な表情を保ちながら、絨毯のように薄くてしなやかな状態で採取することができる。
形状のスタディ
大地の力強い美しさを表現するために、剥ぎ取った地層の土地の形状を3Dスキャンし、解析しながらデザインに落とし込んだ。時間をかけて形成された緩やかな形状や、急激な変化によるダイナミックな形状など、時の経過や雄大さを感じ取ることができる形状をピックアップしウィンドウディスプレイとして落とし込むためのスタディを重ねた。
補修 / 成型
剥ぎ取った地層を、よりはっきりと層が確認できるように仕上げていく。余分に付着した土などを洗い流し、剥離しきれなかった部分を補修する。最後にコーティングを行うことで、劣化させることなく長期間保存することができる。博物館で用いられる「原地再生」の手法だ。スタディした形状を元に、時の流れや大地の雄大さを感じられる形状に地層を成型していく。
近年では、気候変動や地震など、自然界のバランスが崩れている。「万物資生」を通して、歴史の積み重ねを感じ、日々の生活や、環境との共存のあり方を見つめ直すきっかけになってほしい。
資生堂パーラー
https://parlour.shiseido.co.jp/
Creative Direction:信藤洋二 / 資生堂クリエイティブ
Pastry Chef:加藤峰子 / FARO
Art Direction:金内幸裕 / 資生堂クリエイティブ
Design:布川光郷 藤原慧茉 中榮康二 中里洋介 伊藤愛希 鈴木慧 諸戸里帆 / HAKUTEN CREATIVE
Produce:楯誠志郎 / HAKUTEN CREATIVE
Technical direction:熊崎耕平 / HAKUTEN CREATIVE
Construction:熊崎耕平 新宮海生 Chiawen Lin / HAKUTEN CREATIVE
Movie:こじまぽん助 中里洋介 / HAKUTEN CREATIVE
Special Thanks :森山哲和 / 考古造形研究所 石浜佐栄子 / 神奈川県立生命の星・地球博物館 / 小島鉄工株式会社 株式会社蒼天