名酒販店がおすすめする、
本当に美味しい地酒【前編】
自宅でも旅気分が味わえる!
いま飲むべき、風土を醸す
酒を通して風土を告げる役割も担う、地域に根ざした酒販店。プロが選ぶ一本にはその土地のストーリーがあります。今回は、地域に根ざした酒販店6店舗から、いま飲むべき厳選された地酒を前後編記事でご紹介します。
天洋酒店(てんようさけてん)
1917(大正6)年、秋田県能代市に開業。県内の主要銘柄が揃う稀有な店であり、店主の浅野貞博さんが美味しいと思う地酒のみを扱う。蔵元からの信頼も厚く、浅野さんは酒における“歩く百科事典”とも呼ばれている。
どこまでも澄んだ世界遺産の湧水仕込み
「ピュアブラック山本」山本酒造店/・秋田県
「白瀑」を看板銘柄とする1901(明治34)年創業の山本酒造店。倒産の危機を迎えた6代目の山本友文さんは杜氏未経験ながら、試行錯誤の末2007年に奇跡的に美味しい純米吟醸を生んだ。それが「山本」であり、名づけ親は天洋酒店だ。「フルーティで爽やかなお酒が多い蔵。ワイン好きの山本さんが醸すスッキリとした味は、白神山地の湧水が鍵かもしれません」
Data
価格|1690円(720mℓ)
原材料(原料米)|国産米(秋田県産)
精米歩合|麹米50%、掛米55%
日本酒度|非公開
酸度|非公開
アルコール度数|15度
問い合わせ|山本酒造店
電話番号|0185-77-2311
www.yamamoto-brewery.com
火入れと寝かせが生む落ち着きある純米吟醸
「一白水成 純米吟醸」/福禄寿酒造・秋田県
300年以上の歴史を誇る、軽快な男酒を得意とする酒蔵。“白い米と水からなる一番美味い日本酒”の意味をもつ「一白水成」の中でも、青ラベルはスタンダードな一本。「当初はうちを含めて3軒のみが扱う地酒でしたが、気づけば全国区に。オーソドックスな純米吟醸で、秋田の郷土料理であれば、はたはたのしょっつる鍋や、だまこ鍋といったサッパリ系に合います」
Data
価格|1540円(720mℓ)
原材料(原料米)|美山錦
精米歩合|50%
日本酒度|非公開
酸度|非公開
アルコール度数|16度
問い合わせ|福禄寿酒造
電話番号|018-852-4130
www.fukurokuju.jp
鍋料理と合わせたいフレッシュな新酒
「FOUR SEASONS 冬 しぼりたて」/飛良泉本舗・秋田県
創業は1487(長享元)年と日本で3番目に古く、秋田最古として知られる酒蔵。仕込み水の源である鳥海山からインスパイアされた「FOURSEASONS」シリーズは、春の「うすにごり」から冬の「しぼりたて」まで4本のボトルを並べると鳥海山の景色が現れる。「しぼりたてらしく冷やでもいいですが、寒い日はお燗にするのも粋。お好みの温度帯で楽しんでください」
Data
価格|1760円(720mℓ)
原材料(原料米)美山錦74%、秋田酒こまち26%
精米歩合|60%
日本酒度|±0
酸度|2.1
アルコール度数|15度
問い合わせ|飛良泉本舗
電話番号|0184-35-2031
www.hiraizumi.co.jp
天洋酒店
住所|秋田県能代市大町8-16
電話番号|0185-52-3722
営業時間|9:00~19:00(日曜は~18:00)
定休日|第3月曜
泉屋(いずみや)
日本酒好きなら知らない者はいないと言われる、東北屈指の酒販店。数量限定ながら稀少銘柄が定価で購入できるほか、若手蔵元の応援にも注力。福島の地酒はもちろん、こだわり抜いた近県銘柄も取り扱っている。
漁師町で生まれた鮮魚が似合う辛口
「阿部勘 純米辛口」/阿部勘酒造・宮城県
全国屈指の漁師町として知られる宮城県塩竈(しおがま)市にて、塩竈神社の御神酒御用酒屋として創業。醸す酒全般において精米歩合が高く、銘酒「阿部勘」は海の幸に合う旨い辛口を追い求め誕生した。「素材の味を生かしながら、穏やかな米の旨みと酸味でキレを表現。魚料理との相性がよく、刺身や旬魚の煮付けに加え、魚介鍋ならお燗にして楽しむと相性抜群です」
Data
価格|2530円(1800mℓ)
原材料(原料米)|国産米(宮城県産)
精米歩合|60%
日本酒度|+5
酸度|非公開
アルコール度数|15度
問い合わせ|阿部勘酒造
電話番号|022-362-0251
www.abekan.com
柔らかで酸が利いたブドウ本来の果実味
「GROOOVE NIKU YARO 2020」/イエローマジックワイナリー・山形県
南陽のデラウェアに惚れ込み移住した山形県にて、日本人ならではのナチュラルワインを夫婦で醸造するワイナリー。中でも「グルーヴ肉ヤロウ」はその名の通り、肉専用の酸を基調とした赤ワイン。「岩谷さんの醸す旨みを感じる一本で、ワイン愛飲家の方にもおすすめ。ハンバーグ・生姜焼き・すき焼きなど、さまざまな日本の肉料理と合わせて楽しんでください」
Data
価格|2750円(750mℓ)
原材料(原料米)|マスカット・ベーリーA(山形県産)57%、ヤマソーヴィニヨン(岩手県産)28%、メルロー(山形県産)15%
アルコール度数|11度
問い合わせ|イエローマジックワイナリー
電話番号|0238-27-0203
www.yellowmagicwinery.com
土産土法の酒造りで個性豊かに醸し出す
「純米吟醸 会津娘 穣 羽黒 46」/高橋庄作酒造店・福島県
豊かな田園地帯に囲まれ、大戸山系の清冽な地下水を抱く土地。ひとつの田んぼからひとつの商品をつくる“一田一醸”の信念において、田んぼや季節ごとに蔵出しされる「穣」シリーズは、個性がダイレクトに伝わる意欲作。「どこか土の香りや温もりを感じることのできる芳醇な味わい。左党の方にはもちろん、ビギナーの方にも気軽にお楽しみいただきたい一本です」
Data
価格|2200円(720mℓ)
原材料(原料米)|五百万石
精米歩合|55%
日本酒度|±0
酸度|1.4
アルコール度数|16度
問い合わせ|高橋庄作酒造店
電話番号|0242-27-0108
https://aizumusume.co.jp
泉屋
住所|福島県郡山市開成2-16-2
電話番号|024-922-8641
営業時間|10:00~19:00(日曜、祝日は~17:00)
定休日|水曜、第3・4火曜
萬屋酒店(よろずやさけてん)
しなの鉄道の黒姫駅前に開業すること60余年。“造り手の気持ちを伝えたい”をコンセプトに、信州の蔵元やワイナリー、ブリュワリーが醸す酒を作品ととらえ、流行に流されることのない銘柄を取り揃えている。
淡麗酒向きの酒米を柔らかな大吟醸に
「八重原純米大吟醸」/大信州酒造・長野県
標高が高く晴天が多い八重原の台地は、蓼科山(たてしなやま)の麓から水路を引き開拓された米の産地。高品質な酒米が収穫できるこの地で大信州酒造に惚れ込んだ農家が栽培をはじめた酒米「ひとごこち」を、きれいな吟醸香の一本に仕立てた。「香りと味わいがふわっと広がると同時にキレがあり、食事の邪魔をしない。ゆったりとしたおうち時間のお供におすすめ」
Data
価格|1980円(720mℓ)
原材料(原料米)|ひとごこち(長野県・信州八重原産契約栽培米)
精米歩合|49%
日本酒度|+3
酸度|1.5
アルコール度数|16度
問い合わせ|大信州酒造
電話番号|0263-47-0895
www.daishinsyu.com
信州を感じる一本をそば農家と共同開発
「信州信濃町霧下そば焼酎 黒姫乃花」/喜久水酒造・長野県
黒姫高原のそば栽培農家の“地元のそばと米麹だけでそば焼酎を造りたい”という想いから、2004年に販売開始。「喜久水酒造は、全国でも九州に次いで焼酎蔵が多い長野県の中でも、地域おこしの一環としてさまざまな焼酎を手掛けている酒造。そば特有の香ばしさとすっきりとした味わいが楽しめる『黒姫乃花』は、そば湯やそば茶で割っても美味しくいただけます」
Data
価格|2200円(720mℓ)
原材料(原料米)|そば(長野県・黒姫高原産)80%、米麹20%
アルコール度数|25度
問い合わせ|喜久水酒造
電話番号|0265-22-2300
https://kikusuisake.co.jp
※特約店限定販売
ピノノワールのような気品まとうはかないボディ
「オーディネール メルロー&ピノノワール 樽熟成2019 クレレ」/小布施ワイナリー・長野県
1997年に自社畑にて欧州系ワイン用ブドウの栽培を本格化させ、有機栽培に加え化学的農薬未使用といったワイン造りを実践している小布施ワイナリー。厳しい水害のあった2019年においても、涼しい気候の中で「ピノノワールのような気品あるメルロー」を目指して醸造。「ピノらしいチェリーやクランベリーの香りが感じられる、ふくよかな味わいのワインです」
Data
価格|2200円(750mℓ)
原材料(原料米)|メルロー、ピノ・ノワール(長野県産)
アルコール度数|12度
問い合わせ|小布施ワイナリー
電話番号|026-247-5080
http://obusewinery.com
※数量限定販売
長野のおつまみも楽しむなら!
「MOCHIZUKI」/ボスケソ・チーズラボ
御牧原の牧場で搾られた生乳を使用。乳酸:菌主体で凝固させており、香りはブルーチーズのよう。フレッシュな仕上がりだが、熟成が進むと白カビの濃厚さが際立つ。
Data
価格|900円(90g)
電話番号|050-1170-2575
https://bosqueso.official.ec
萬屋酒店
住所|長野県上水内郡信濃町柏原2711-23
電話番号|026-255-2078
営業時間|9:00~19:00
定休日|水曜
www5b.biglobe.ne.jp/~sake10
text:MiyoYoshinaga,MiyuNarita,NatsuArai photo:NorihitoSuzuki,KazuyaHayashi,YoshihitoOzawa
Discover Japan 2022年1月号「酒旅と冬旅へ。」