FOOD

日本の食の未来につながる!
銘生産者の食材ギフト6選【前編】

2021.12.19
<small>日本の食の未来につながる!</small><br>銘生産者の食材ギフト6選【前編】

大切な人が美味しそうに味わう姿を思い浮かべつつ食材を贈る。生産者の志に触れながら、日本の食について多面的に発信し続ける向笠千恵子さんに、生産者の食材を選び、贈ることの意義、そして贈り物としての魅力をうかがいました。

向笠千恵子(むかさ・ちえこ)さん
フードジャーナリスト、食文化研究家、エッセイスト。本物の味、安心できる食べ物、伝統食品づくりの現場を知る第一人者。2011年にグルマン世界料理本大賞グランプリを受賞した『食の街道を行く』や『ニッポンお宝食材』など著書多数。今春には、JICAメキシコ文化センターよりメキシコ人を対象に食の俳句を切り口にして日本食、和食文化を紹介する冊子『食の祭典』(邦題)をスペイン語で発行する等、世界に向けて日本の食文化を紹介中。最新刊『おいしい俳句——続・旬の菜事記』が好評発売中

食の贈り物には
贈り手の食のセンスが表れる

「食の何に重きを置くかは人それぞれ。だからこそ、SDGsを意識している方へなら、環境に配慮している生産者の食や、過剰な包装を避けたものを贈りたいし、健康を意識している人であれば、有機や無添加の食を選びたい。何が正解ということはありませんが、食のギフトには贈り手の食のセンスが表れるといえるでしょう」と、向笠千恵子さんは考える。言い換えれば、贈り物によって食への意識が問われるということ。心を込めた贈り物をするためには、見た目や情報に惑わされることなく、自身で本質を見極めることが重要になる。

「そういう意味で、食を贈ることが日本の食について考えるきっかけにもなります。日本には世界に誇れる独自の食材や食文化がありますが、それは食に真摯に取り組む生産者がいればこそです。にもかかわらず、高齢化や地域の過疎化に加え、コロナ禍もあって、苦難に陥っている生産者がたくさんいます。そう考えると、苦労して本物の味をつくっている、守り続けている生産者を応援することこそが、日本の食にいま求められていることではないでしょうか。贈り物として、志をもって食に取り組む生産者がつくる本物の味を選ぶことは、贈る相手を大切に思う気持ちを伝えてくれますし、生産者へのエールになる。そしてそれが日本の食の未来へとつながっています」

また、贈り物を選ぶ際、大切にしたいのは季節感。その時期ならではの食を贈ることで、その食が生まれた土地の風土や風景も一緒に味わってもらえる。さらに、贈る相手へのマナーとしてだけでなく、フードロスや地球温暖化の点からも、贈る相手の好みはもちろん、配達希望日や商品の消費期限・賞味期限を確認しておきたいもの。

そうして心を込めて贈ったものは、贈り手と受け取り手のコミュニケーションツールになることはもちろん、それぞれと生産者をも結んでくれる。

「贈って終わり、受け取って終わりではなく、発送のお礼や食べた感想など、ひと言でもいいから生産者に伝えてほしいと思います。生産者と交流することで、その食と産地に愛着がわきますし、何より生産者にとって、大きな励みになりますから」

鹿児島ますやの薩摩黒豚の短鼻豚
鹿児島県/姶良市

<生産者PROFILE>
「鹿児島ますや」契約農家
「福別府ファーム」代表 福別府 浩さん
「鹿児島ますや」米増昭尚さんの志に賛同し、六白の中でも稀少な在来種に近い品種を、開放的でゆとりのある環境の中で放牧し、心身ともに健康な短鼻豚を志布志市にて肥育する

短鼻豚の肉は弾力があるのに軟らか。しゃぶしゃぶにすると、とろけるような旨みが広がる

鹿児島の黒豚は、在来の黒豚にイギリスのバークシャー種を掛け合わせたもので、鼻、四肢、尻尾の6カ所が白い六白で鼻ぺちゃが特徴。短鼻豚は「鹿児島ますや」のオリジナルブランドで、在来種に限りなく近い品種。その肉は「引き締まって、歯切れよく、脂が甘い。脂の質がいいため、しゃぶしゃぶにしてもアクが出ません」(向笠さん談。以降同)。また、短鼻豚を原料に、完全無添加でつくるハム、ソーセージなどの加工品が「鹿児島ますや」の真骨頂。「『鹿児島ますや』の代表取締役・米増昭尚さんは、鹿児島大学農学部を卒業後、飼料メーカーを経て独立。自身の子どもたちが生まれながらのアレルギー体質で、その一因が親の食生活にあると気づいたことをきっかけに、食の安全に強い関心をもつようになりました。薬品はもちろん調味料まで学び、すべて手作業で完全無添加のハム、ソーセージをつくっています。遠赤外線を放出する炭火の釜で焼き上げた焼豚、カレーや餃子などもおすすめです」

旨みがありつつあっさりとしたロース、適度に脂の入った肩ロース、さっぱりとした甘みのバラ肉のセット

鹿児島黒豚短鼻豚 しゃぶしゃぶセット 和
価格|4500円(送料別)
内容量|黒豚ロース200g、黒豚肩ロース200g、黒豚バラ200g、かけぽん170㎖
原材料|〔黒豚ロース、黒豚肩ロース、黒豚バラ〕鹿児島県産黒豚短鼻豚、〔かけぽん〕醤油、醸造酢、砂糖、ユズ果汁、みりん、魚介エキス、酵母エキス
賞味期限|〔黒豚ロース、黒豚肩ロース、黒豚バラ〕冷凍で120日、〔かけぽん〕製造から常温で1年
注文方法|Tel、Fax、インターネット

鹿児島ますや
所在地|鹿児島県姶良市宮島町29-3
Tel|0120-66-4186(注文対応可能な時間は9:00〜17:30)
FAX|0995-67-0904
www.kurobuta-ichiban.co.jp

おう児牛肉店の特産松阪牛
三重県/松阪市

<生産者PROFILE>
「おう児牛肉店」社長

小林央児さん
松阪市内にある明治創業の牛鍋店「牛銀」の次男として生まれ、牛と肉について学ぶ。2015(平成27)年に独立し、特産松阪牛・松阪肉の仲卸商「小林商店」を開業した

日本が世界に誇る和牛ブランドである松阪牛は、黒毛和種の未経産の雌牛で、松阪市を中心とする生産区域で500日以上肥育された牛。さらにその中でも、兵庫県生まれの子牛を生産区域で900日以上肥育した牛は、特産松阪牛という。その飼育頭数は、松阪牛全体のわずか3%。「おう児牛肉店」は、その貴重な特産松阪牛を主に扱う仲卸商「小林商店」が手掛ける小売店。社長の小林央児さんは、松阪市内にある明治創業の牛鍋店「牛銀」の次男として生まれ、家畜商の下で仕入れについて、また実家の精肉部で肉について学んだ後独立。仕入れは、牛農家を訪ねて自分の足で牛舎を回り、自分の目と手で牛を確かめた上で行う。「伝統的な方法で肥育する牛農家から直接、一頭買いしています。央児さんは、“牛さん”と呼ぶほどに牛への愛情が深い。牛農家が家族のように大切に育てた牛を、同じく大切に精肉にしています。そうして出来上がった牛肉は軟らかで滋味豊か。脂身はまろやかな甘みで、赤身は旨みたっぷり。部位を指定しての注文もできます」

おすすめ部位2〜3種類入り。肉はブロックで保管し、注文を受けてからカットする(ブロックでも購入可)

特産松阪牛・店主厳選『おまかせセット』
価格|100g1500円〜(部位によって変動のため要問合せ。箱入りの場合は追加料金あり)
内容量|ロース、モモ、ウデなど希望に合わせて要相談
原材料|特産松阪牛
賞味期限|冷蔵で3〜4日
注文方法|Tel、Fax
※写真は600g(3〜4人前)の場合

おう児牛肉店
所在地|三重県松阪市久保町767-15
Tel|0598-67-0298(木・日曜は定休日。注文対応可能な時間は10:00〜17:00)
FAX|0598-67-0298
www.ouji-matsusaka.com

かなわ水産の牡蠣
広島県/江田島市

<生産者PROFILE>
「かなわ水産」代表取締役副社長

三保弘太郎さん
1973(昭和48)年、先代が現在の大黒神島沖に漁場を移転して以来、生食用牡蠣に特化。牡蠣料理専門店と販売店を構えるなど、養殖から加工、販売までを自社で一貫して行う

牡蠣の生産量日本一の広島は、牡蠣を採取する海域に厳しい基準を設けている。1867(慶応3)年に牡蠣養殖業をはじめた「かなわ水産」が牡蠣筏を浮かべるのは、広島湾の沖合約30㎞にある無人島・大黒神島沖。海水の透明度は高く、生食用の牡蠣に最適な環境である県指定の清浄海域の中でも、特にきれいな海域だ。沿岸部よりも海水の塩分濃度が高く、牡蠣の成長速度が遅いため、身は小粒。ただし身は引き締まっており、加熱しても縮まない。水揚げした牡蠣は、衛生管理を徹底した自社工場で洗浄、手作業でむき身にし、包装や加工をして直営の牡蠣料理店や直売店へ。「生食用牡蠣に県内でいち早く取り組み、殻付き牡蠣の養殖や品種の開発も行う先進的な生産者。殻付きの牡蠣の美味しさはもちろん、感動したのは、一度も卵を産んでいない牡蠣を、海水ごと瓶詰めにしたヴァージンオイスター。海のエッセンスを凝縮した濃厚な味わいです。冷凍かきフライなどの加工品にも熱心で、牡蠣と塩だけでつくる無添加のかき醤(オイスターソース)は常備したい逸品」

殻を一度開き、海水で身を洗ってから再び蓋をしてあるので、開ける手間なく、そのまま食べられる

かなわハーフシェルオイスター大黒神島6個入り
価格|2160円
内容量|6個(約500g)
原材料|広島県産牡蠣
賞味期限|冷蔵で5日
注文方法|Tel、Fax、インターネット

かなわ水産
所在地|広島県江田島市大柿町深江1453-20
Tel|0823-57-7373(日曜定休。注文対応可能時間は9:00〜17:00)
FAX|0823-57-4400
www.kanawa-oyster.com

 

≫続きを読む
 

 

text: Miyu Narita photo: Atsushi Yamahira
Discover Japan 2021年12月号「ストーリーのある贈り物」

RECOMMEND

READ MORE