飛鷹全隆法印の「転衣式」で奉納された
伝統技術が結集した品と引出物を公開
飛鷹全隆法印の転衣式の後開かれたパーティには各界で活躍する人々が集い、奉納品や引出物が披露されました。いまも昔もクリエイターを惹きつける高野山。記念の品にまつわる物語や高野山に寄せる想いを伺いました。
現代の名工が奉納
袈裟
正倉院の宝物のひとつ、聖武天皇愛用の品と伝わる「七条刺納樹皮色袈裟」をモチーフに染め上げられた袈裟。昔ながらの植物染料による染めを担ったのは、文化財の復元や修復も手掛ける、江戸期創業の京都の老舗・染司よしおか。絹糸を赤や緑、紫など、草木染めらしいやさしい色調の9色に染め分けて織り上げられ、大小21枚の生地が山々の連なりに見立てて配置されている。
桐の茶椀『無量寿』
樹齢数100年の木をさらに50年以上乾燥させてつくられた抹茶椀は、伝統工芸士で創業125年の紀州桐箪笥老舗を率いる東福太郎さんが奉納。東さんは、伝統技法と自らの切削方法を融合させて世界初の桐のビアグラスなども製作し、LEXUS NEW TAKUMI PROJECTでは2017年グランプリに。天然の木目が美しい桐を削り出して透き漆を施した世にも珍しい茶椀は、法印より『無量寿』の銘が授けられた。
家具のあずま 代表取締役社長 東 福太郎さん
法印がお茶好きとうかがい、世界初の桐茶椀を奉納しました。
こだわり抜いた引出物
銘酒『玉依御前』
高野山開創1200年の記念酒として生まれた『玉依御前』。飛鷹法印が住職を務め、空海へ献酒する役割を担う三宝院が、陸奥国の二本松藩主・丹羽家の菩提を弔う縁から、福島県二本松市の老舗・大七酒造に依頼。弘法大師空海のご母堂・玉依御前ゆかりの爪剥酒だ。
大七酒造 10代目当主 太田英晴さん
歴史の1ページに立ち会わせていただき光栄です。
清浄布
高野山で育った杉や檜を糸にして織り、染め上げた「清浄布」。“太古から続く原始の美”をテーマに創作するデザイナー・廣川玉枝さんが手掛けたストールは、第五二〇世法印にちなんで520枚限定で制作された。伝統的な注染の技法で、太陽を表す緋色、大地の土色、空海のまとった蘿衣の色、そして木の素地の色と、美しいグラデーションに染め上げた。中央には、弘法大師空海が嵯峨天皇に献上した『古今文字讃』からインスパイアされた書体で「南無大師金剛遍照」の文字が。
吉祥文様の松をかたどった高野水引は、高野山の寺院内の工房koubou 2466が手掛けた。koubou 2466では関東細川紙のルーツともいわれる高野細川紙を復興させる取り組みを実施しており、高野水引もその一環で生まれた。かつては女人禁制であった高野山。現在では寺院内で女性ならではの視点を生かす活動も生まれている。
SOMA DESIGN 廣川玉枝さん
自然とともに生きることへの感謝を込めました。
現代も求心力のある場として各界の著名人が集結
土楽窯7代目 福森雅武さん
若い頃白洲正子さんと高野山を訪れました。中国で密教を授かった空海が、皆を巻き込み一大霊場を築き上げたここは、一番精神が清い地。現代の高野山の僧侶も、頭だけでなく身体で学ぶべきことを身につけ、空海が真に望んだものは何かと問い、それを俗界に伝えてほしいですね。
マネックスグループ株式会社 取締役会長兼代表執行役 社長CEO 松本 大さん
お寺や仏像が好きであちこちめぐっていましたが、4年前飛鷹法印の義息・全法さんと知り合って高野山に。神仏習合をはじめとする空海の大らかな考え方をいいなあと思いました。東寺の立体曼荼羅も人々に仏教の世界をひと目で理解させ見事! 本当に天才、スーパースターですね。
元・Lexus International ブランドマネージャー 河邊徹也さん
世界に打って出られる、伝統工芸の匠たちを各都道府県から選出する「LEXUS NEW TAKUMI PROJECT」に取り組んでいます。高野山は、歴史に安住せず、日本各地に産業を興した空海の精神を受け継ぎ、若き匠たちと新しい化学反応を起こしながら未来を開く場所だと感じました。
津カントリー倶楽部 取締役 小島伸浩さん
親友の飛鷹全法さんが今日を迎えるまで懸命に準備にあたるのを見てきました。高野山は日本仏教の礎であり、歴史や立地、場の在り方を含め、あらためて重要な地だと思います。厳かな空気は伊勢神宮と通じるものがあり、神仏は一体だとも。日本人として一年に一度は来たい場所です。
Clarence Education Ltd. 代表 Hu Fei-Feiさん
英国王室チャールズ皇太子の財団の秘書時代に、文化交流活動を通じて三宝院副住職の飛鷹全法さんとご縁ができたんです。お寺がいまもいろんな人をつなぐ「生きたハブ」だと実感しました。ここで出会った人とは、普段ビジネスで会う人とは違う友情が生まれ、交流が深まると思います。
衆我財団 理事長 井植由佳子さん
能楽を楽しく見られるよう支援する「衆我財団」5年前に素人女性5人で立ち上げ 若手能楽師養成会支援、音声ガイド導入援助、イベント企画援助等を行っています。本日は日本文化の源流を感じる高野山という場で、皆さまと交流を深められたことに感激しています。
読了ライン
text=Kaori Nagano(Arika Inc.) photo=Kazuma Takigawa, Kazuya Hayashi
2019年5号 特集「はじめての空海と曼荼羅」