日本の伝統文化を応援!日本伝統三道スペシャルプログラム連載【第五回】ザ セレスティンホテルズのLocal Experience
ステイ体験そのものが旅の目的となるディスティネーションホテル「ザ セレスティンホテルズ」。銀座、東京芝、京都祇園の3館では、そこでしか得られないLocal Experience(その土地ならではの体験)をゲストに提供するため、日本伝統三道やもてなしの文化を体験できるスペシャルプログラムを実施している。今回は、各ホテルで行われている体験プログラムと、その取り組みに込められたおもてなしの心を紹介していこう。
日本伝統三道の若手作家の作品を発表する場を提供する「ザ セレスティンホテルズ×日本伝統三道」プログラム。「ホテル ザ セレスティン銀座×華道」、「ホテル ザ セレスティン東京芝×茶道」、「ホテル ザ セレスティン京都祇園×書道」と、それぞれのホテルで作品展示をするだけでなく、ゲスト参加型の体験プログラムも行われている。
銀座で披露された季節を表した自由な発想の“いけばな”
華道をテーマにした「ホテル ザ セレスティン銀座」では、型にとらわれない前衛的な若手作家による作品を展示。銀座の出世街道沿いという立地性「華やかさ」と「上昇の気」をテーマにしたいけばなが、ロビーやエレベーターホール、レストランを彩っている。
2019年12月25日には、クリスマスツリーをイメージした竹のいけばなに、五色でカラーリングしたオーナメントを飾ってもらうという自由な発想のイベントを実施。ゲスト参加型の作品となり、作品の下にプレゼントボックスを並べた華やかな演出に、大人でもワクワクさせられる。決して大げさな催しではないが、国内外のゲストにこの時期だけの空間を楽しんでもらおうという気持ちが込められている。
薩摩藩ゆかりという土地の歴史にちなんだ茶会
薩摩藩の江戸屋敷跡に佇む「ホテル ザ セレスティン東京芝」は、茶道体験イベントを実施。鹿児島産の抹茶を使い、鹿児島にまつわる道具組みなどにホテルの一期一会のおもてなしの心を表した。日本の伝統文化に触れられるまたとない機会に、多くの外国人の宿泊者の方々も喜んだという。イベント当日、1階のカフェ&バーラウンジ「セレクロワ」では、鹿児島に縁のあるお酒が並ぶだけでなく、鹿児島産の茶葉を使ったオリジナルカクテルを用意。小牧緑峰園の深蒸し茶「さえみどり」と国産ジンを使ったカクテルや、鹿児島県内のみで流通する東八重製茶の「さえあかり」「さえみどり」をジンに漬け込んだ煎茶のジントニック、熊田製茶の「さえみどり」を使ったグリーンラテなど、それぞれの茶葉の特徴をいかしたスペシャルメニューを提供した。
「セレクロワ」では通常営業時でも鹿児島の銘菓と知覧茶の「鹿児島茶々セット」を用意。島津家の十字紋や薩摩切子がインテリアのエッセンスに散りばめられた唯一無二の空間で、鹿児島茶と日本茶の文化を堪能したい。
書道家・武田双雲さんによる書き初めデモンストレーションも
武田双雲さんによる書道作品を展示する「ホテル ザ セレスティン京都祇園」のテーマは書道。地下一階からの吹き抜けが特徴のロビーに「迎」の書を、チェックインカウンターに「山紫水明」を、館内のレストラン『八坂圓堂』には「優雅」と「寿」の作品を展示している(〜2020年3月31日)。
さらにロビーには、筆ペンや水書用紙(筆に水をつけると字が書ける特殊な紙)を使って、双雲さんの書をお手本に「臨書」ができるキットが準備されている。臨書とは、手本を見て書くこと。多くの書道家は、先人の作品を徹底的に臨書することで、書に臨んだ。これは、単に字を上手に書くためだけでなく、お手本となる先人の生き方や信念、哲学を学ぶことができ、字を通して人格を磨くことにもつながると考えられている。お手本を真似ることから、自分を表現することの指針を見出すというのが臨書の最大の目的。文字を書く機会自体が減っている現代だからこそ、心を落ち着けて書と向き合う時間は、短時間でもかけがえのないものになるはずだ。また、2020年1月25日(土)には、双雲さんによる書き初めデモンストレーションが開催されました。
これらの取り組みは、ゲストのLocal Experienceのためのおもてなしの一貫として企画されたものだが、今回の日本三道スペシャルプログラムを進めるにあたっては、各館で「伝統文化に息づくもてなしの心」に関する研修が行われている。日本伝統三道のもてなしの心を知ることは、ホスト側のホテルスタッフにとってもプラスの体験となるからだ。
とくに意識をしていなければ、華道や茶道、書道の日本三道とホテルのサービス向上を結びつけて考えることはできないだろう。しかし、今回の取り組みに参加した作家は「自分のために作品をつくることはない」という。いけ花は誰かのために花をいけ、茶道では誰かのためにお茶をたて、書道では誰かのために言葉を選んで書く。受け取る対象がいてこその三道であり、その精神こそが日本のおもてなしにつながっている。
そう考えると、「おもてなし」を提供する日本のホテルにとって、三道に触れることがサービスの向上につながることが理解できる。さらに、作品を仲介に国内外のゲストとコミュニケーションをとることによって、日本の伝統文化に興味をもってもらう伝え手としての役割を担うことにもなる。
ゲストにその土地ならではのステイ体験を楽しんでもらうことは、ゲストとホテルスタッフとのコミュニケーションに、そしてスタッフの経験値やサービススキルを磨くことにつながり、それがまたおもてなしの深化となってゲストへ還元される。これまでにもさまざまなステイ体験企画を提供してきたザ セレスティンホテルズだが、「日本伝統三道スペシャルプログラム」は大きな相乗効果が得られる好循環を生み出しているようだ。
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文=山本章子 写真=山平敦史、山北茜