渋谷パルコ《荒楽窯 荒賀文成 個展》
うつわ祥見 KAMAKURA×Discover Japan
大人っぽい「粉引」、アンティークの風合いがある「ひび粉引」、黒高麗を思わせる「黒釉」。ろくろ成形によるのびやかなかたちの上に3つの異なる表情をもつうつわ。京都生まれ京都育ちの陶芸家・荒賀文成さんの個展が、東京・渋谷パルコのDiscover Japan Lab.にて、2024年9月28日(土)〜10月13日(日)にかけて開催される。荒賀さんのうつわの魅力を紹介しよう。
荒賀文成さん(あらが ふみなり)
1972年、京都府生まれ。京都府立陶工高等技術専門校研究科を卒業し、北白川銀月アパートにて「荒楽窯」を開窯。現在は京都・八幡市にて作陶。柔らかく、自然な曲線の粉引が特徴的。
窮屈さのない自然なライン
ろくろは筋だと、「うつわ祥見 KAMAKURA」の祥見知生さんは言う。それは毎日100、200とろくろを挽くことで生まれてきた身体のリズムだと。線の美しさ、のびやかで無理のないかたちを描くのは簡単なことではない。荒賀文成さんはそれを気負いなく、自然とそこにあるような姿を水挽きでつくり出す。
京都に生まれ育ち、腕を磨いてきた荒賀さん。赤土の素地に白化粧し、釉薬をかけて仕上げる粉引で知られる。「粉引はかたちができてはじめて白で魅せることができる」との師匠の言葉を胸に、美しい肉体をもつ舞踏家が白をまとうような気持ちで作品に向き合う。まずはかたちありき。彼のうつわを並べてみると、花のように自然なのはそのためだ。いまにもほころびそうなつぼみ、満開の花、散って川面を流れる花びらのようで、集合してもちっとも窮屈ではない。
粉引を手掛ける作家は、それぞれの白を表現するために白化粧の組成や焼き方を工夫する。父親が韓国人で、韓国に自分のルーツを感じるという荒賀さんが目指すのは、李朝の粉引など古い時代の柔らかな白。最近は素焼きしてから白化粧をする作家が多い中、土に白化粧を施してから焼く生化粧でクリーミーな質感を出す。
大切にしているのは、使ううちに貫入が入り、育っていってもなお愛着がわくうつわであるということ。粉引のうつわは、きれいな白を長く保つために、使いはじめに米ぬかで煮るのがよいとする向きもあるが、荒賀さんは違う。水にさっとくぐらせるぐらいにして、どんどん使ってほしいという。粉引は貫入が入って古い焼物のような風合いに育った様子が美しいと信じているからだ。
近年、荒賀さんは使い込んで生まれる古色の美しさをイメージし、あらかじめ貫入のようなひびが入った「ひび粉引」を発表した。また、李朝の黒高麗を意識したという黒釉のうつわや花入もアンティークの雰囲気がある。
荒賀さんのうつわには、京都ならではの信頼感のようなものがあると祥見さん。薄過ぎずにほどよい厚みをもった縁取りの安定感、キュウリのぬか漬けがごちそうになる上級のうつわ使いを実現する色気のある白、いろいろな角度から見たときのフォルムの美しさ。思わず見とれてしまうような大人の魅力を備えている。
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うつわ祥見 KAMAKURA×Discover Japan
荒賀文成 個展
会期|2024年9月28日(土)~10月13日(日)
会場|Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1渋谷PARCO 1F
Tel |03-6455-2380
営業時間|11:00〜21:00
定休日|不定休
※初日に整理券配布予定です。
※最新情報は公式Instagram(@discoverjapan_lab)などで随時紹介しています。ぜひチェックしてみてください。
※掲載商品は一部であり、店頭にはさまざまなうつわが並びます。
※サイズ・重量は掲載商品の実寸です。同じシリーズでも個体差があります。
text: Yukie Masumoto photo: Yuko Okoso
2024年10月号「自然とアートの旅。/九州」