京都《美山》の魅力に触れる滞在
日本の原風景を守る、茅葺き集落が残る里
京都市街から離れた場所にある美山、南山城。趣きが異なる2地域では、貴重な建物や仏像を通して、京都の別の顔を見ることができるはず。
今回は日本の原風景を思わせる茅葺き屋根の集落「かやぶきの里」のほか、藍染の魅力に触れられる美術館などを紹介する。
住民による地域愛が原風景を守る原動力
京都府のほぼ中央に位置し、京都市街から車で1時間半ほどの場所にある南丹市美山町は、森林や清流に囲まれた豊かな自然と伝統を色濃く残す美しい町。特に、茅葺き屋根の民家を多く残す「かやぶきの里」は、日本の原風景が残る場所として、1993年に重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。その評価は風景だけでなく、人々が連綿と受け継いできた里の文化や、茅葺き屋根を守る技術にある。
毎年多くの観光客が訪れる春と秋には「美山かやぶきの里 一斉放水」が行われている。地域住民の火災予防講習と放水銃のいっせい点検を行うもので、住民の茅葺き民家を大切にする思いが伝わってくる。また、文化財を火災から守る必要性を理解するため、観光客もその光景を見ることができるのも特筆すべき点だ。
そんな自然豊かな里に惹かれて移り住む人は少なくない。藍染作家の新道弘之さんは、藍染に必要な天然の水や灰を求め、1981年に移住してきた。化学物質を使わず、天然藍を発酵させる技法で藍染めの制作を行いながら、2005年には「ちいさな藍美術館」を設立。現在は息子の牧人さんも制作に加わり、工房や作品が見学できる場として提供している。
茅葺き屋根の風景が楽しめるのはかやぶきの里だけでない。盛郷には食事処、宿として切り盛りしている「ゆるり」があり、美山ならではの食文化も楽しませてくれる。また、鶴ヶ岡に2023年7月に誕生したばかりの「NIPPONIA 美山鶴ヶ岡 山の郷」は、「里の風景を守りたい」という地域と連携してできた宿泊施設だ。美山の住民になったような滞在がかなう施設として人気を博している。
地域のなりわいである林業や農業もつながりが深く、ともに協力し合うことで、原風景を後世までつないできた。そんな美山には、「いつかここで暮らしてみたい」と思わせる魅力がある。
田園風景に広がる茅葺き屋根の集落
美山町は、茅葺き屋根の集落がいまなお現存することで知られる。特に、かやぶきの里は50戸のうち39棟が茅葺きの屋根。伝統的技法による建築物群や、歴史的景観の保存度への評価が高いことから、1993年12月8日に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。
かやぶきの里
住所|南丹市美山町北
Tel|0771-75-1906(美山町観光案内専用ダイヤル)
営業時間|施設により異なる
miyamanavi.com/sightseeing/kayabuki-no-sato
藍の魅力を発信
大きな茅葺き屋根の中にある美術館
「かやぶきの里」の中でひと際目を引く大きな茅葺き屋根の民家が、藍染作家の新道弘之さんが開館した私設美術館。1階の土間は藍甕が埋められており、昔ながらの藍染めの様子を見学できる。屋根裏部分は新道さんが世界中から収集した藍染作品や資料を展示しているギャラリーとなっている。
ちいさな藍美術館
住所|南丹市美山町北上牧41
Tel|0771-77-0746
開館時間|11:00〜17:00
定休日|木・金曜(祝日は開館)、冬期休館はInstagramで確認
料金|一般300円
shindo-shindigo.com
囲炉裏を囲む美山の味覚と時間
美山の旬の味が満喫できる食事処。料理は、旬の野菜や美山京地鶏などを主体に、コースで提供。季節により美山天然鮎やぼたん鍋などを囲炉裏で楽しめる。宿泊と夜の食事は1日1組限定(1泊2万5000円〜)。
ゆるり
住所|南丹市美山町盛郷佐野前15
Tel|0771-76-0741
営業時間|昼12:00〜、夜18:00〜(要予約)
定休日|不定休
youluly.umesao.com
地域に点在する宿泊棟で
美山の文化や歴史、暮らしに触れる
鶴ヶ岡地域の古民家を改修した分散型宿泊施設。宿泊は、素泊まりプラン、朝食付きプランのほか、地域の飲食店で食事を楽しむプラン(「ゆるり」とも提携)もあり、住民とのつながりを大切にしている。
NIPPONIA 美山鶴ヶ岡 山の郷
住所|南丹市美山町鶴ヶ岡新釈迦堂前1
Tel|0120-203-099
料金|1棟5万600円〜
IN|14:00
OUT|10:00
www.chillnn.com/188092d6d3625b
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text:Hiroko Yokozawa
Discover Japan 2023年11月号「京都 今年の秋は、ちょっと”奥”がおもしろい」