京都《菓子屋 のな》の世界
気鋭の菓子職人がつくる物語のある上生菓子
雅やかな上生菓子を、自由で豊かな感性で再解釈した品々。いま京都で注目を集める菓子職人が創作に込めた想いとは?
季節感を軸に、創造力をかき立てる上生菓子たち
たおやかで愛らしい姿の上生菓子たち。口に運ぶと、上品な甘みに続いてみずみずしい風味が広がった。
「上生菓子は本来、お茶のお供であることが前提。お茶の味わいをじゃましないよう、色とかたちだけでモチーフを表現するのが原則です」と店主の名主川千恵さん。老舗和菓子舗で菓子職人としての経験を積んだ後、コーヒーや紅茶とも相性のいい自由なお菓子の在り方を思い描き、フルーツやリキュールなどの香りを生かした創作に取り組むようになる。「季節感を軸に、文学や音楽、自分が感銘を受けた出来事も重ね合わせて、イメージを膨らませます」。たとえば「茜雲」は、旬のスモモの色合いから茜色に染まる空を発想。「千代古の花」は、「本当にチョコの香り!」と感動したチョコレートコスモスを素直な造形に落とし込み、カカオニブで香りを添えた。詩的な菓銘もまた作品の一部として、「のな」の世界観をより鮮やかなものにする。
代表作「アントニオとララ」は、愛読する古典文学の登場人物二人を二種類のあんこ玉に投影した。目に美しく、味わいに心満たされるだけでなく、想像力を楽しくかき立てる品々。和菓子に親しむひとときが、より豊かなものになりそうだ。
菓子屋 のな
住所|京都市下京区篠屋町75
Tel|なし
営業時間|12:00〜18:00(売切次第閉店)
定休日|日・月曜
問い合わせ(www.instagram.com/kashiya.nona)
予約(www.instagram.com/kashiyanona_wagashi)
※紹介している菓子は季節で替わる
text: Aya Honjo photo: Sadaho Naito
Discover Japan 2022年11月号「京都を味わう旅へ」