「アサヒビール大山崎山荘美術館」
京都随一を誇る民藝個人コレクション
京都駅から東海道本線を西へ5つ目、山崎駅の北にそびえるのが天王山だ。その中腹に建つアサヒビール大山崎山荘美術館は民藝の収集で知られる。市内からピクニック気分で訪ねよう。
イギリスのチューダーゴシック様式を基本とするこの建物は、実業家の加賀正太郎の別荘だった。東洋の意匠も盛り込まれた独特の建築だ。周囲は木々が豊かで紅葉は格別に美しい。
加賀は、竹鶴政孝と親交があり、竹鶴がニッカウヰスキーを創業する際には株主になった。加賀が亡くなる際、その株を譲り受けたのが、加賀と親交のあったアサヒビール初代社長の山本爲三郎だった。
1967年、山荘は加賀家の手を離れ、取り壊し案も挙がった。そんなとき、相談を受けたのは古い縁のあるアサヒビールだった。同社は行政と連携し、山荘を復元して美術館にした。そして、コレクションの中核に据えたのが山本爲三郎の収集品だった。
明治から昭和、茶の湯を通じて交流する実業家は近代数寄者と呼ばれた。山本は、そうはならず民藝を支援。1928年に昭和天皇即位を記念し東京で博覧会が催され、民藝同人たちは独自設計で一軒の家を建て、生活の道具を収め「民藝館」として出展した。
会期終了後、建物と調度の一切を、山本は大阪の自邸に受け入れた。アサヒビール大山崎山荘美術館には、後の日本民藝館の原型ともいえるその建物に並んだ品々もある。
文=藍野裕之、上村みちこ 写真=たやまりこ
2019年10月特集「京都 令和の古都を上ル下ル」
住所:京都府乙訓郡大山崎町銭原5-3
Tel:075-957-3123(総合案内)
開館時間:10:00~17:00(入館受付~16:30)
休館日:月曜(祝日の場合は翌日休、ただし2019年11月18日、25日は開館)、年末年始、臨時休館あり
料金:一般900円、大高学生500円、中学生以下無料
www.asahibeer-oyamazaki.com