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「近江屋洋菓子店」神田で130年以上愛される老舗菓子店
大熊健郎の東京名店探訪

2020.7.10
「近江屋洋菓子店」神田で130年以上愛される老舗菓子店<br>大熊健郎の東京名店探訪
「苺サンドショート」864円

「CLASKA Gallery & Shop “DO”」の大熊健郎さんが東京にある名店を訪ねる《東京名店探訪》。今回は時代に合わせて変化し続け、130年以上も地元・神田で愛される「近江屋洋菓子店」を訪れました。

大熊健郎(おおくま・たけお)
「CLASKA Gallery&Shop “Do”」 ディレクター。国内外、有名無名問わずのもの好き、店好き、買い物好き。インテリアショップ「イデー」のバイヤー&商品企画、「翼の王国」編集部を経て現職。
www.claska.com

「すいかゼリー」702円

仕事柄、いわゆる「伝統工芸品」と呼ばれる物を見たり、紹介されたりする機会が多い。それぞれの産地で長く受け継がれてきた風習や技術があること自体は素晴らしいことだ。

ただ時々残念に思うのは「伝統工芸」という部分だけが声高に叫ばれ、実際にそれらが日常生活と乖離した存在になっている場合が少なくないことである。「伝統」の名の下に、現代の生活様式や時代性がほとんど考慮されずに存在しているものを人々が果たして求めるだろうか。

高い天井、奥行の長い重厚でモダンな空間はまるでホテルのロビーのようである。ショーケースにはショートケーキや、旬の果物を使ったゼリーなど素材を生かした生菓子や焼き菓子が上品に佇んでいる。パンのコーナーには食パンから総菜パン、菓子パンまで、シンプルだが「こういうパンが食べたかった」と思わせるものが、しかも手頃な価格でずらりと並ぶ。

「サバラン」378円

洋菓子とパンの店としていまや地元のみならず、全国のお菓子好きに知られる近江屋洋菓子店。はじまりは初代がパン店をはじめた明治17年にさかのぼるという言わずもがなの老舗だ。1階は店舗、2・3階が工房になっていてすべての商品をここで製造する。

現在4代目となる吉田太郎社長の日課は毎朝大田市場に足を運び、自ら旬の果物を仕入れること。「リーズナブルだけどチープじゃない品物を提供する」というこの店のポリシーはこうしたことの積み重ねによって支えられている。

近江屋洋菓子店といえば、レトロ感のあるパッケージやクラシックなお菓子のイメージから、なんとなく昔ながらのやり方やレシピを守り続けてきたようなイメージがあるが、「そう思われがちですが実際は時代や季節に合わせてさまざまなことを変えてきました」と吉田社長は言う。

カップはドリンクバー(756円)用で店内で飲み物をいただける

人々の嗜好や求めるサービスが変わればレシピもサービスの在り方も見直し変えていく。ほかにもたとえば菓子を製造する機械なども、いいと思うものは積極的に導入する。とかく何でも手作りをよしとする風潮がある中で、単に効率的というだけでなく、仕上がりの均質さや衛生など、機械は機械のよさがあり、よいならそれを使えばいいというわけである。このしなやかさ。

広い店内の奥はセルフサービスのカフェスペースになっている。店に並ぶ好きなパンやケーキを選び、ドリンクバーを購入するシステムだ。ドリンクバーにはコーヒーや紅茶のほか、旬の果物のフレッシュジュースに、スープまである。

時代がどう変わり、何を求めているのか。そのことに敏感であり続け、変化していくことを恐れない姿勢。その絶えざる創意工夫の姿勢こそが、130年以上もの間愛され続けている店である理由なのだろう。

近江屋洋菓子店
住所|東京都千代田区神田淡路町2-4
Tel|03-3251-1088
営業時間|9:00〜19:00、日曜、祝日10:00〜17:30(喫茶〜17:00)
定休日|なし
www.ohmiyayougashiten.co.jp
 

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photo:Atsushi Yamahira
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