《ザ・ゲートホテル京都高瀬川 by HULIC》
100年の歴史とともに京都を愉しむ
幕末維新の史跡も残る京都府京都市の木屋町通。築96年の小学校を再生したホテルのエントランスをくぐると、そこには昭和初期のノスタルジーと美意識が息づく空間が広がっていた。
築96年の小学校が
巧みなリノベーションで現代によみがえる
千年の都・京都は、名建築の都でもあることをご存じだろうか。古寺や数寄屋建築はいわずもがな、この街には明治以降、西洋文化を果敢に取り入れて建てた壮麗な近代建築が数多く点在している。
その醍醐味を実際に滞在して体験できるのが、花街・祇園や錦市場にも近い繁華街・先斗町で2020年に誕生したザ・ゲートホテル京都高瀬川 by HULICだ。
建物のベースは明治2年に開校し、昭和3年に現在地に移転・開校した元・立誠小学校。閉校後も地域に開放され、市民から愛され続ける建物を、巧みなリノベーションで現代によみがえらせている。
高瀬川に架かる小橋を渡ってエントランスへ。惚れ惚れと見上げてしまうほど風格ある外壁は、約100年前の竣工当時のもの。半円形アーチや精緻なレリーフなどロマネスク様式の意匠に、当時最先端だったアールデコの幾何学的なデザインをミックスしているのがおもしろい。進取の気風に富んだ京都人の遊び心が垣間見える。
レセプションのある最上階の8階へ上がると、ホテルからの最高のサプライズが待っている。エレベーターを降りた瞬間、大パノラマで鴨川や東山の風景が目に飛び込んでくるのだ。街の中心部でこれほどの絶景を誇る場所はほかにあるまい。朝食からディナーまで楽しめるダイニングやバーもここに揃い、テラス席の眺望も抜群だ。
宿泊は築96年の
小学校跡地にあるふたつの棟へ
土地の記憶が深く刻まれたホテルで過ごす時間は、旅の思い出をより鮮やかにしてくれるもの。全184室を有するザ・ゲートホテル京都高瀬川には、歴史ある校舎を保全・再生した「Schoolhouse棟」と、新築でありながら、旧校舎のデザインと見事に調和する「Main棟」のふたつの棟がある。旅の目的に合わせて、個性豊かな12のタイプから客室を選べるのも特徴だ。
20室を備えたSchoolhouse棟の魅力は、高い天井、伸びやかな縦長の窓、古めかしい建具など、往時の面影をそっと残すクラシカルな佇まい。どこか懐かしく、そこにいるだけで心がほどけていくようだ。特に、アートと泊まれる部屋として話題の「Lab」では、京都のアーティストが手掛ける植物や苔、石を使ったインスタレーションが空間に美しく映える。自然の息吹を感じながら過ごす一夜は、大いに感性を高めてくれるはず。
アクティブな観光の拠点として便利な立地だが、元学校ならではの「学び」や「自分磨き」をテーマにした、多彩な体験プログラムにも注目したい。たとえば、60畳の大広間「リトリートルーム」でのひととき。もともとここは、子どもたちが道徳や礼儀作法を学んだ「自彊室」。時を経たいまも凛とした空気が満ちる中、朝ヨガや写経で心を整え、京都ゆかりの伝統芸能を観賞することもできる。
夕食前や食後のチルアウトは、3階の宿泊者専用ラウンジで。上質なソファと、ブックディレクターが選定した本が並ぶライブラリーが設けられ、ワインを片手に寛ぐのも一興だ。隣接するパティオでは、夜になると焚き火台に火が灯る。月明かりの下、炎の揺らぎ、薪の香りやはぜる音で、旅の疲れを癒してみてはいかがだろう。
賑やかな街中に滞在しながら、いつでも「おこもりステイ」も楽しめるとはなんと贅沢なことか。過去と未来が邂逅するふたつの棟を自由に行き来しながら、唯一無二の京都体験に身をゆだねたい。
読了ライン
京都を感じながら過ごせる
ここならではの体験
ザ・ゲートホテル京都高瀬川 by HULIC
住所|京都府京都市中京区蛸薬師通河原町東入備前島町310-2
Tel|075-256-8955
客室数|184室
料金|1泊2食付4万9598円〜(税・サ込)
カード|AMEX、DINERS、JCB、Master、VISAなど
IN|14:00 OUT|11:00
夕・朝食|オールデイダイニング
アクセス|電車/阪急電鉄京都河原町駅から徒歩約3分、京阪電気鉄道祇園四条駅から徒歩約5分
施設|オールデイダイニングAnchor Kyoto、ロビーラウンジ&バー、ラウンジ&パティオ、リトリートルーム
text: Noriko Yamaguchi photo: Sadaho Naito
2023年10月号増刊「ニッポンの一流ホテルリゾート&名宿 2023-2024」