大饗利秀×伊勢﨑創×高原卓史×the continue.
《備前beer×sake展》
備前焼は、地肌の細かな粒子が飲み物を美味しくするといわれている。とっておきのうつわで、とことん酒を堪能しよう。
2023年8月19日(土)〜9月3日(日)にかけて渋谷パルコのDiscover Japan Lab.では、「備前beer×sake展」を開催。今回は作品ラインアップに加えて、備前のうつわと併せて嗜みたいビールと日本酒をご紹介。
※公式オンラインショップでは8月21日(月)20時より順次取り扱い開始します。
伝統技に宿る土味の妙
大饗利秀
大饗利秀(おおあえ としひで)
備前焼窯元六姓・大饗家に生まれる。大手半導体メーカー勤務を経て、陶芸の道へ。岡山県工業技術センター「備前陶芸センター陶磁器技術者研修」修了。備前焼リサイクル素材を使用した「再生備前」の取り組みにも参画する。
岩肌のようなザラザラとした質感、山脈をほうふつとさせるおおらかなフォルム。備前焼窯元六姓のひとつである大饗家の3代目・大饗利秀さんの作品を眺めていると、シンプルな焼き締めの陶芸が生み出す多彩な表情に、驚かずにはいられない。
「使っていただくそれぞれの空間で、風情あるものとして存在する。そんな作品を目指して日々創作しています」と大饗さん。その言葉の通り、作品一つひとつに魂が宿っているような力強さを感じる。それと同時に、土ものならではの優しい温もりも伝わってくる。
「釉薬を使わない備前焼は、お酒を美味しくする魔法の焼物です。毎日の暮らしに取り入れていただき、その魅力を実感してください」
土と炎が生み出す艶やかな姿
伊勢﨑 創
伊勢﨑 創(いせざき そう)
1968年、備前焼作家・伊勢㟢満(みつる)の三男として生まれる。高校卒業後、備前焼作家の山下譲治に師事。2001年に登り窯を築き独立。以降、全国各地で個展を開催。現在は、うつわのほかに陶壁やレリーフなども制作。
名高い陶芸一家に生まれ育った伊勢﨑創さんにとって、幼い頃から備前焼はとても身近な存在であった。「強く意識していたわけではありませんが、頭の端のほうで、自分もいつかは備前の道に進むのだろうなと思っていたのかもしれません」。洗練されたフォルムと美しい窯変(焼成により現れる色)。伊勢﨑さんのうつわは、キレのある表情が魅力だ。
「備前本来の素材や技法を的確に把握し、その中で自分の求めるものに合う土や焼成方法を見極め、精いっぱい丁寧につくっています」。枠にはまらず、常に新しい感覚で作陶しているとも。
「普段着感覚で使ってほしい。派手さはないですが不可欠な存在になれたらうれしいです」
野生味あふれる荒々しい佇まい
高原卓史
高原卓史(たかはら たくし)
1959年生まれ。1978年に京都府陶工専修職業訓練校、翌年に京都市工業試験場を修了。以降、備前焼作家の父・高原敏の下で学び、独立。日本伝統工芸中国展など入選多数。2022年には伝統的工芸品産業功労者に選出された。
「釉薬を使わない備前焼は土が命です。採取した場所によって表情が異なるため、つくるものに合わせて土も替えています」。備前作家の父・高原敏の影響で、自身も陶芸の世界に進んだ高原卓史さん。山土の質感をそのまま生かした作風は、どれも素朴でたくましい。
「こんなうつわに盛りつけたら楽しいだろうなと、考えながらつくっています。テーブルに並べたときの情景をイメージして窯焚きするんです」と高原さん。
遊び心あふれる意匠も魅力で、中には、どのように使うのか想像力をかき立てる作品も。「既存の概念にとらわれず、自由な発想でうつわを楽しんでください。きっと人生が豊かになりますよ」
再生素材に刻まれた温もりある質感
the continue.
the continue.(ざ こんてぃにゅー)
「廃棄される陶器ごみを増やさないために何かできないか」との想いから、2021年にプロジェクトを立ち上げる。現在、自社回収した陶器ごみを備前の土と合わせた再生陶器ブランド「RI-CO」シリーズを展開している。
陶器ごみとして廃棄される運命にあった陶片をアップサイクル。「the continue.」は岡山県・備前の里で、備前焼作家や市内の一般家庭から不要になった陶器ごみを回収、粉砕し、備前の土と混ぜ合わせて新たなプロダクトとして提案している。
「素材特有の飾らない素朴な質感と、土の温かみが感じられる手触りを大切にしています」と話すのは、スタッフの板野仁美さん。
釉薬や顔料は使わず、土の鉄分から自然な色みを引き出したうつわは、シンプルで落ち着いた雰囲気。どれも飽きのこないデザインで、長く愛用できる。
生まれ変わったカップやロックグラスを片手に、地球環境について考える。そんな酒のシーンもいいものだ。
読了ライン
備前の酒器に合わせて
夏酒を味わいませんか?
左)サノバスミス「サノバスミス オリジナル」/877 円(330㎖)
京都を拠点に活動する創作線香ブランド「サンガインセンス」とともにつくったボタニカルサイダー。リンゴ特有のフレッシュ感、スウィートグラスの甘い香りがなんとも華やか。
右)バテレ「コメリナ」/1100 円(500㎖)
ホップ由来の豊かな旨みの後に、フローラルなアロマと爽やかな香りが広がる。キレのある味わいで、蒸し暑い日にぴったり。食事のじゃまにならない低アルコールのセゾン。
左)安福又四郎商店「酒草子〜さけのそうし〜夏は夜」/2200 円(720㎖)
軽さの中に低温熟成ならではのしっかりとした旨みを感じさせる生貯蔵酒。キリリとした口当たりで、蒸し暑い夏にぴったり。風呂上がりに、しっかり冷やしていただきたい。
中央)出羽桜酒造「桜花吟醸酒」/1485 円(720㎖)
吟醸ブームを切り開いた吟醸酒のパイオニア的存在で、1980年の発売以来、不動の人気を誇る出羽桜の定番酒。フルーティな吟醸香と爽快な味わい。10〜15℃に冷やして飲みたい。
右)稲とアガベ「稲とホップ」/2650 円(500㎖)
ビール造りに使用されるホップと米、米麹を発酵させた類を見ない酒。ラベンダーのようなフローラルな印象の後に続く柑橘系の爽やかな香り、ドライな味わいが楽しめる。
8/21(月)20時より順次販売開始
公式オンラインショップ
備前 beer×sake展
会期|2023年8月19日(土)〜9月3日(日)
会場|Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00〜21:00
定休日|不定休
※新情報は公式Instagram(@discoverjapan_lab)などで随時紹介しています。ぜひチェックしてみてください。
※掲載商品は一部であり、店頭にはさまざまなうつわが並びます。
※サイズ・重量は掲載商品の実寸です。同じシリーズでも個体差があります。
text: Misa Hasebe photo: Norihito Suzuki
2023年9月号「木と生きる」