《星のや京都》
書道家・根本 知が日本の美意識を和歌に詠む
後編|嵐山の“水辺の私邸”で風雅な滞在
京都・嵐山にある「星のや京都」では、平安貴族が愛した歌会や雅楽の催しを通して源氏物語の世界に浸り、日本人がもつ美意識を再発見できる。今回、書道家・根本 知さんが体験した、伝統的な意匠や秋の味覚に舌鼓を打つ、心を豊かにする滞在とは?
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日本人が愛する自然を
一堂に鑑賞できる場所
星のや京都は、江戸時代に活躍した実業家・角倉了以が別邸を構えた場所にある。後に高級旅館として営まれていた建物を受け継ぎ、窓の桟にしても雨樋にしても、大工による「洗い」の技法で昔ながらの意匠をよみがえらせた。京都に息づく伝統的な技法が随所に用いられ、そこに斬新な発想を加えた風雅な空間が広がる。優しく包み込んでくれる自然と、洗練された文化に浸ることができる「水辺の私邸」である。
「星のや京都で過ごす時間は、水と山と木々に包まれ、夜空にはきれいな月や星があって、朝は鳥の声が心地いい。人間はその中のひとつとして生かされていることを全身で感じられる空間だと思います」と根本さん。
都会で過ごしていたら煩わしく思えてしまう雨さえも恵みに変わり、美しいと再認識できる。小径に落ちた葉、水が滴る苔、さまざまなものが生き生きと見える。嵐山とはそういう場所であり、星のや京都は日本人が愛する自然を一堂に鑑賞できる場所だ。
こちらでは、朝夕の食事でも嵐山の四季を感じられ、心が豊かになる。夕食は旬の山海の幸を巧みに組み合わせ、遊び心を感じる会席料理。朝食は部屋で、野菜やキノコたっぷりの朝鍋をいただけば、一日の活力が湧いてくる。
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嵐山の滋味を味わう夕食
旬の食材、うつわ、かい敷などのあしらいの一つひとつに、奥嵐山の繊細な季節が切り取られている。そこに洋のテイストを加えるなど、伝統の中に遊び心を利かせた料理が新鮮。先付にはじまり季節の炊き込みご飯まで、ひと皿ごとに驚きがある。
朝食は部屋でゆっくり鍋を愉しむ
朝食のメインは朝鍋。昆布と鰹で丁寧に取ったたっぷりの出汁に、旬の野菜、キノコ、油揚げ、生麩、季節によりハモなどの旬魚が加わる。食材の旨みが溶け出した出汁でいただく締めの雑炊はお代わり必至。ほかに、季節の小鉢、あんをからめて薬味といただく豆腐、京漬物、水菓子など盛りだくさん。部屋着のままゆったりと過ごせ、一日の活力をチャージできる。
舞楽鑑賞や源氏物語の世界に浸る、
秋の特別な愉しみも
枯山水の庭に足を踏み入れることで宇宙と一体になれる「奥の庭」。晩秋は樹齢400年のオオモミジが美しく色づく中、『源氏物語』の「紅葉賀」で光源氏が舞ったとされる青海波を披露する催し「星のや紅葉賀」を開催予定(2024年11月29日〜12月1日)。錦秋の景色の中で舞楽を鑑賞し、ゆったりと過ごすことで、平安貴族さながらの優雅な気分に浸ることができる。
星のや京都
住所|京都市西京区嵐山元録山町11-2
Tel|050-3134-8091(星のや総合予約)
客室数|25室
料金|1泊1室13万6000円〜(税・サ込)
カード|AMEX、DINERS、Master、VISAほか
IN|15:00 OUT|12:00
夕食|日本料理(ダイニング) 朝食:和食(部屋)
アクセス|車/名神高速道路京都南ICから約30分 電車/阪急電鉄嵐山駅から徒歩約10分 施設|食事処ほか
text: Yukie Masumoto photo: Atsushi Yamahira
Discover Japan 2024年11月号「京都」