London Borough of Jamの「ブラックベリー&ベイリーフジャム」
福田里香の民芸お菓子巡礼
民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は、民藝のうつわの中でも人気の高い手法が「スリップウェア」と「ロンドン・ボロー・オブ・ジャムの「ブラックベリー&ベイリーフのジャム」を紹介します。
福田里香(ふくだ・りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。9年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中
民藝のうつわの中でも人気の高い手法が「スリップウェア」です。スリップウェアは、水でクリーム状に溶いた泥(スリップ)を絵具にして、模様を描く陶器で、17世紀以降イギリスで盛んになりました。18世紀、庶民が日用品として使っていた古いスリップウェアのパイ皿に美を見出したのがバーナード・リーチと盟友の濱田庄司です。
セント・アイヴスで窯を構えた二人はある日、パンにバター、自家製の黒苺ジャム、クロテッドクリームを塗り重ねた。切り分けた断面を見た濱田は「これだ!スリップウェアだ!」と叫んだという。お菓子と陶器の手法は似ている、とは私の持論ですが、二人は切り口に滲んだ食材の模様からまさかの陶器の技法を「そうか、こうやるんだ」と発見したのです。
黒苺とはブラックベリーのこと。London Borough of Jamのブラックベリー&ベイリーフのジャムで、その重なりを再現しました。Lillie O’Brienがつくる誠実な手仕事のジャムはリーチ窯の垣根に実った黒苺をほうふつさせる鮮烈な美味しさ。
London Borough of Jam
https://london boroughofjam.jp/
text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
2021年1月号 特集「温泉と酒。」