岐阜県恵那市
恵那川上屋の「くり壱」
《福田里香の民芸お菓子巡礼》
民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は岐阜県恵那市・恵那川上屋の、朴葉の風味が香る栗蒸し羊羹「くり壱」を紹介します。
福田里香(ふくだ・りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。13年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中
アートディレクター岡秀行(1905-1995)の名著『包 日本の伝統パッケージ』をご存じですか? 岡は日本の伝統包装の美しいかたちに魅了され、竹や木、藁、和紙などの自然素材を使った包装材を全国各地で収集し、一冊の本に編纂しました。本書は包む民藝ともいうべき内容で、藁を編んで卵を包んだ表紙が世界的に有名ですが、中を読むと実は菓子包装がかなりの割合を占めています。とはいえ初版は1965年刊と古く、現在は廃絶したパッケージも多いのでした。
時代の流れとはいえ寂しく感じていた昨今、これぞ包む民藝ともいえる銘菓が「恵那川上屋」にあります。それが栗蒸し羊羹「くり壱」です。栗きんとんを芯にしたあんを、本物の朴葉で包んで蒸しています。朴葉は岐阜県の郷土料理「朴葉味噌」に使われているほど昔から地元に根ざした天然の包材です。「くり壱」を口に含んでみてください。ぎゅっと詰まった栗きんとんの味わいとなめらかなこしあん、それを包み込むようにふわっと香る爽やかな朴葉の風味が絶品です。
読了ライン
恵那川上屋 栗里宿 恵那峡店
住所|岐阜県恵那市大井町2632-105
Tel|0573-20-1150
営業時間|9:00〜18:30
www.enakawakamiya.co.jp
text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
Discover Japan 2023年9月号「木と生きる」