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京都「十二段家 本店」
民藝品のギャラリーのような料理店

2019.9.17
京都「十二段家 本店」<br>民藝品のギャラリーのような料理店
十二段家 本店
大阪で「十二段家書房」として創業し、京都に移ってお茶漬け屋、お茶屋を経て、「料理も民藝のひとつ」と河井寬次郎と棟方志功のアドバイスを受けて料理屋に

十二段家 本店の主人に「料理も民藝のひとつ」と言った民藝運動の牽引者たち。民藝は眺めるだけでも使うだけでもありません。その精神は、見て、味わうこともできるものなのです。《京都の民藝は美味しい》前編は、ギャラリーのように民藝品が並ぶ料理店「十二段家 本店(じゅうにだんや・ほんてん)」を紹介します。

戦前、後に十二段家 本店2代目となる西垣光温が大阪で「十二段家書房」を営んでいた。そこは、美術書などを扱い、当時の文筆家や画家、文化人のサロン的存在だった。この頃に光温は棟方志功の大阪展覧会の売れ残りを買う機会があり棟方は大変喜んだ。

民藝運動家たちの作品がズラリ
飾り棚は黒田辰秋の弟子によるもの。棚に置いてある陶器類は、河井寬次郎、濱田庄司、上田恒次など、民藝運動に共感した作家たちの作品

光温は、棟方の人物に興味をもち、東京の棟方の工房まで行って作品をすべて買った。棟方とはそれ以来、つき合いが続いた。その縁がもとで、河井、柳、吉田とも縁ができた。

棟方志功に囲まれた贅沢な和洋室
唯一椅子席の部屋。その他の部屋は掘ごたつ式。正面の横並びの版画は棟方志功の『東北経鬼門譜』の一部を額装したもの。本来は横に広げると10mにも及ぶ大作。先々代が志功の工房まで出向いて購入した

しかし、大阪の書房は戦災で焼け、一家は光温の妻の実家の京都へ移った。そこはお茶漬けの店で、戦中に閉店していたが、光温は戦後これを再開。民藝と料理は通ずると河井や棟方の言葉に後押しされて料理屋として営業をはじめた。

その後、吉田璋也が訪れた際に、玄関に置いてあった煙突の付いた鍋を見て「牛肉の水炊きをやったらどうだ」と助言。実はこれが現在「しゃぶしゃぶ」といわれるようになった料理の起源のひとつとされる逸話である。この料理が評判となり、現在の十二段家 本店の礎を築くこととなった。

十二段家 本店
住所|京都府京都市東山区祇園町南側570-128
Tel|075-561-0213
営業時間|11:30~14:00(L.O.)、17:00~20:00(L.O.)
定休日|木曜、第3水曜(祝日の場合は営業)
※営業時間・定休日は予告なく変更する場合あり
http://junidanya-kyoto.com

《京都の民藝美を感じる料理店》
vol.1ギャラリーのように民藝品が並ぶ「十二段家 本店」
vol.2陶芸家・上田恒次の最高傑作の空間「松乃鰻寮」

text=Hiroyuki Aino,Michiko Uemura photo=Mariko Taya
2019年10月特集「京都 令和の古都を上ル下ル」

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