TRADITIONS

能を観に行きたい。 ―京都で能装束を制作中

2017.12.6
能を観に行きたい。 ―京都で能装束を制作中

今年も小誌が後援する能公演を開催します。3度目となる今回、挑む演目は大曲『道成寺』。2月の公演に向けた準備で、現在装束を新調中。その制作現場におじゃましました。

写真提供:国立能楽堂

「雪持椿」という伝統の柄
宝生流の『道成寺』の装束では、雪持椿が決まり柄。水を含ませただるま糸を使用することで、唐織ならではの立体感がより強調されている

「動く美術館」とも呼ばれる能。能面や装束、楽器などには美術品として高い価値を持つものが多い。中でも能装束は、その絢爛豪華さで私たちを魅了する。舞台でどういう装束が使われるかは曲(演目)によってほぼ決まっているが、模様などの細かい組み合わせについては、流派や演者によっても異なるという。宝生流のシテ方能楽師・佐野登さんが、このたび能装束を新調するというので、その制作現場を見せてもらった。

非常に細い絹糸を扱い、繊細な作業のため1日20㎝程度しか進まないことも
複雑な模様に関しては、かつてはパンチカードを使っていたが、現在はフロッピーディスクを読み込ませることで織ることができる

手がけるのは京都の西陣に工房を構える中島一治さん。能装束専門の機織りは、全国でもいまや片手で数えるほどしかないという。「だから多少無理してでも、新しい装束を発注することが重要なんです。職人さんに常に仕事をしてもらわないと。彼らの技術が絶えてしまうことで困るのは、私たち能楽師ですからね」(佐野)

新調する装束は、来年2月に演じる『道成寺』のためのもの。唐織の表着と、その下に着る摺すり箔はくを制作する。それぞれ表着には「雪持椿」、摺箔には金箔で蛇のうろこを模した模様をあしらう予定だ。「『雪持椿』の柄は宝生流でしか使われません。そして、『道成寺』ほどの大曲となると、私が演じるのはこれで最後かもしれない。つまり、新しい装束ができても、実際に袖を通すのは一回限りという可能もあります」(佐野)

それでもあえて新調するのは、「舞台への覚悟、そして伝統をつなぐという使命感」からである。よい装束を未来に残すこと。そのためにも職人とのコミュニケーションは欠かせない。佐野さんが工房まで足を運ぶのも、その一環だ。「伝統って、一見同じに見えても、少しずつ変わっていくもの。でも、何でもいじっていいわけではない。どこを変えて、どこを残すか?そういう議論を、実際に使う演者と、工程を熟知した職人との間で交わすことが大事です」(佐野)

現在は図案まで完成。最終的に装束が仕上がるまでに、10人ほどの職人の手を経るという。妥協のない能楽師と職人の想いにより、今日も能は、生きた美術館となる。

中島は明治15 年創業。現在の代表である中島一治さんで4代目となる。130年を超える歴史の中で、数々の名人たちの能装束をつくってきた。現在も基本的に能装束を専門とするが、着物の帯の注文なども個別に受け付ける

能装束 中島
住所:京都市上京区下天神町650
Tel:090-4490-5315

宝生流能楽師シテ方・
佐野 登さん
宝生流18 代宗家宝生英雄に師事。演能活動や謡曲・仕舞の指導を中心に、日本の伝統・文化理解教育を行うなど現代に生きる能楽を目指し積極的に活動

能の大作・道成寺の見どころ

道成寺の安珍・清姫伝説の後日譚。歌舞伎や浄留璃で道成寺物という一大ジャンルを形成する。小鼓と舞との一騎打ちで緊迫感ある「乱拍子」や、鐘に飛び込む「鐘入り」などダイナミックな展開が見物

これまでに2度、能公演を開催

能の魅力を広く伝え、伝統を未来につなげるために、小誌後援の下、佐野登さんは2016 より宝生能楽堂で能公演を開催する。昨年は黒谷友香さんをゲストに迎えたトークショーも好評を博した

「未来につながる伝統」能公演
開催日:2018年2月3日(土)
時間:13:00開場/ 14:00開演
会場:宝生能楽堂
住所:東京都文京区本郷1-5-9
主催:佐野 登
後援:『Discover Japan』(枻出版社)
料金:SS席1万5000円/ S席1万円/
A席8000円/ B席7000円/
C席5000円/学割3000円
※SS席には公演後の
アフターパーティ参加費が含まれます

チケットに関するお問い合わせ
Confetti(カンフェティ)
Tel:0120-240-540
チケットのお申し込み
confetti-web.com/nobo ※10月6日(金)まで先行販売実施。
S席購入者には『能のお稽古』無料体験、ほか全員に能グッズの特典付き

公演に関するお問い合わせ
Eメール:shihoukai202@gmail.com
Tel:03-3811-4843(宝生能楽堂)

(text : kowloonjoe photo : Akane Yamakita)

※この記事は2017年9月6日発売Discover Japan10月号P94-95から抜粋して掲載しています。