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《テラバース》京都大学がバーチャル仏教世界を開発へ。ブッダと話せるメタバース

2023.5.9
《テラバース》京都大学がバーチャル仏教世界を開発へ。ブッダと話せるメタバース

仏教とメタバースを掛け合わせてつくられたバーチャル仏教世界「テラバース」。AR(拡張現実)やAI(人工知能)などの最新技術を用いて仏陀(ブッダ)と直接対話ができる、日本文化を新たな角度から体感するプラットフォームとは?

右)熊谷誠慈(くまがいせいじ)
1980年広島県生まれ。京都大学大学院博士課程修了、文学博士。京都大学白眉センター助教、京都女子大学発達教育学部専任講師を経て、2013年4月より京都大学こころの未来研究センター上廣こころ学研究部門特定准教授。2017年4月より同研究部門長。2018年9月よりウィーン大学ヌマタ教授を兼任(~同12月)。2020年4月より京都大学こころの未来研究センター准教授。専門は仏教学(インド・チベット・ブータン)およびボン教研究。

左)古屋俊和(ふるやとしかず)
1986年広島県呉市生まれ。2012年データ解析の研究会社として、DataScience,inc(現:Quantum Analytics,inc)を設立し、自然言語処理技術を用いた株の運用モデルを研究。京都大学情報学研究科博士課程にて医療画像×DeepLearningの研究を行う。2016年に株式会社エクサインテリジェンス(現エクサウィザーズ)を創業。2020年にxR×AIの研究開発会社Quantum Analytics合同会社を新設。2021年に京都大学・熊谷誠慈氏と共同でブッダボットの研究発表。VR等を手掛ける株式会社エスユーエスのSUSLab所長就任。2022年に株式会社テラバースを創業。

AI×仏教×メタバースで
現代人の悩みを解決!

photo=Chiristsumo

コロナ禍やロシア・ウクライナ戦争などを受けて現実世界に窮屈さを感じる人が増える昨今。物理的制約のない仮想空間の可能性や社会的期待は日を増すごとに高まりをみせている。そうした中、京都大学「人と社会の未来研究院」准教授・熊谷誠慈氏と、データ解析を専門とするテラバースCEOの古屋俊和氏が率いる共同研究グループは、仏教とメタバース技術を融合させた仏教仮想世界「テラバース」の開発を開始した。

テラバースという名前の由来は「一兆(テラ)の宇宙(バース)」という意味で、伝統知とテクノロジーを融合させ、重層的な精神世界を構築していく予定だ。
その端緒として、AR(拡張現実)やAI(人工知能)などの最新技術を用いて、現実空間上に仏教対話AI「ブッダボット」のアバターを召喚し、ブッダと直接対話出来るプラットフォーム「テラ・プラットフォームAR Ver1.0」を2022年9月に開発した。

「テラバース」は「テラ(寺院)」という裏の意味も含んでいる。
いま国内にある多くの寺社仏閣が、本堂などの建築物の建設や維持に関する困難を抱えている。しかしながら、VR(仮想現実)やARなどの技術をさらに応用すれば、将来的には、物理的資材を用いることなくサイバー空間上でも寺社仏閣を建築・維持でき、遠隔地からの訪問に困難を抱えつつある過疎地の寺社にとって地理的なハンディを克服出来るようになるなど、さまざまな可能性が広がる。このように、現実空間に窮屈さを感じている人々を時空の制約から解放するのが「テラバース」なのだ。

利用イメージ

テラバース誕生のきっかけ

photo= Hideo Tsuto

開発のきっかけについて古屋氏は「コロナ禍で人と会うことは出来ないけれどAIで悩みを打ち明けて解決したい、その仕組みの中にブッダの教えがあるとよいのではないかと思いました」と話す。

データ解析の研究やAI開発を行っていた古屋氏は、スピリチュアルには疎かったが、会社設立後、京都のお寺をめぐり、「上場したいです!」と祈ったところ願いが叶い、そのお礼の意も込めて仏教を掛け合わせたサービスの開発に取り組みはじめたと言う。
また熊谷氏との出会いも開発の後押しとなった。仏教関係の知人から、デジタルと仏教の掛け合わせについて相談を持ち掛けられ、広島市中区の浄土真宗本願寺派教順寺の住職でもある熊谷氏を紹介され、共同で開発する運びとなった。

熊谷氏が率いる研究チームは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が実施した、新たなムーンショット目標を検討する「ミレニア・プログラム」に採択され、内閣府総合科学技術・イノベーション会議により、新たに2つのムーンショット目標(8、9)が2021年9月に決定され、そのうちのひとつであるムーンショット目標9「2050年までにこころの安らぎや活力を増大することで、精神的に豊かで躍動的な社会を実現」の内容に、「ミレニア・プログラム」における熊谷氏らの調査研究成果が生かされた。
同目標では、文理融合を強く推奨し、科学技術に人文社会科学等を加えた“総合知”をもって、こころの安らぎや活力を増大することで精神的に豊かで躍動的な社会を実現すべく、こころの状態理解と状態遷移技術に関する研究開発が行われることになる。

2021年にリリースされたテラバースの前身となる「ブッダボット」は、スマホに悩みを入力するとブッダが即座に回答するAI×仏教による対話サービスだった。そこに熊谷氏がムーンショットでも提案している、安定した心で人間が暮らせる方法をアップデート。2022年9月に「テラ・プラットフォームAR Ver.1.0」を作成し、テキスト対話だけではなくブッダに直接会って話しているかのような感覚が得られるメタバースの機能が追加された。

貴重な書物や置物も3Dモデルで後世に伝える

いま建物の維持困難をはじめ深刻な問題を抱えている寺社仏閣。2040年には3割のお寺が廃寺になるとも危惧されていたが、コロナ禍を経て状況はさらに悪化するとみられている。
テラバースは、VR技術でサイバー空間上にアバター寺院の建立など支院の一種として利用することで、建物維持の問題を改善。遠方からの参拝も可能となるなど、ARのテクノロジーを用いた仏教界への支援も大きな目的のひとつだ。
加えて、寺院にある貴重な書物や置物などを3Dモデルにして遺すことで、もし将来的に寺院や美術品が失われてもVR上で見ることが出来る。

古屋氏は今後の展望について語る。
「争いをなくしたい、というのが理念です。国外戦争や社内など世の中には大小さまざまな“争い”が存在しており、それらによって心が不安になることが減ればよいと思っています。そのためにテクノロジーや仏教が助けになると思っています」

本サービスは仏教経典をインプットしているが、技術転用の可能性も広がる。例えば経営者の情報を入れると経営の悩み解決も可能となる。
日本の伝統文化とテクノロジーを掛け合わせによって生まれる、新たな可能性に注目したい。

読了ライン

テラバース
https://teraverse.cloud/

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