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宮中御用達の名店も!花冠陽明庵・松本栄文さんおすすめの御所ゆかりの京都土産

2019.9.18
宮中御用達の名店も!花冠陽明庵・松本栄文さんおすすめの御所ゆかりの京都土産

御所周辺では公家の食文化の名残を感じさせる「料理」が堪能できる。公家と武家の文化が合わさり変化を遂げた有職料理は日本料理の歴史そのもの。御所ゆかりの美食は、お土産にもぴったり。有職料理に使われる食材はじめ、案内人の松本さんおすすめの味を紹介する。

松本栄文
花冠陽明庵主人、作家。日本食文化会議理事長。「日本文化を愛でる会」を主宰し日本の伝承・伝統文化の普及に努める。著書『日本料理と天皇』(枻出版社)は、料理本のアカデミー賞と称されるグルマン世界料理本大賞の2015年度最高位を受賞。

有職料理を伝える「西陣魚新」ではその味を気軽に楽しめる弁当を販売。「出汁巻のほか、有職料理に欠かせない松風は必ず入っているんですよ。京都で一番好きなお弁当で、京都駅構内で買えるのも魅力です」と松本さんも太鼓判

西陣魚新
住所|京都市上京区中筋通浄福寺西入中宮町300
Tel 075-441-0753
営業時間|11:00~15:00、17:00~20:00
定休日|年末年始
料金|有職弁当3240円~

京都市内には、長きにわたって宮中の期待に応えてきた名店が点在している。「どちらのお店にも共通しているのは、禁裏御用達の立場にきちんと向き合った仕事をなさっていること。覚悟が感じられますし、それが信用につながっていますね」と松本さんは語る。

そんな松本さんが、京都へ来るたび必ず買って帰るのが有職料理の老舗「西陣魚新」の弁当だ。味はもちろんだが「掛け紙にも心配りがある」と、細部にまで料亭らしさを貫く姿勢に惚れ込む。秋は紅葉の細工物や、菊花のご飯で季節を楽しませてくれる。

京都といえば白味噌。本田味噌本店は杜氏だった先祖が麹造りの腕を買われて京都に移り住み、やがて禁裏御用の店となった老舗。「すっきりと上品な風味が好きです。汁用だけでなく、基礎調味料としても使い勝手がいいんですよ」。西京白味噌648円/500g

本田味噌本店
住所|京都市上京区室町通一条上ル小島町558
Tel|075-441-1131
営業時間|10:00~18:00
定休日|日曜
https://www.honda-miso.co.jp/

料亭の味に欠かせない調味料や食材にも御所ゆかりの店がある。豊かな水脈の走る京都で、味噌づくりひと筋に励む「本田味噌本店」は、西京白味噌で名を馳せる。

「明治天皇の二度目の東京行幸を機に、京都御所に永きにわたり奉仕してきた女官たちが、東へ御一緒せず、御里帰りをするようになりました。この時、慣れ親しんだ御所の味噌を御里でも食べたいと、白味噌を求めたんです。これが西京白味噌の広まりなんですよね」と松本さん。

季節を映す生麩は有職料理の名脇役。御所のそばで店を構える麩嘉は宮中や料亭の味を支える老舗として愛されてきた。「実は生麩は上級の公家の十二単にも必要とされました」と松本さん。御身が傷つかぬよう、縫製には生麩から取った糊を使ったのだという

麩嘉
住所|京都市上京区西洞院堪木町上ル東裏辻町413
Tel|075-231-1584
営業時間|9:00~17:00
定休日|月曜、最終週日曜
※完全予約制

そんなストーリーを秘めた味はほかにもあり、江戸時代後期創業の麩の老舗「麩嘉」の麩饅頭は、明治天皇に請われて世に送り出した。青海苔を練り込んだ生麩で小豆あんを包んでいる。

川端道喜の「水仙粽」。ほんのり甘みをつけた吉野葛を練り上げている

甘いものはもちろん公家たちに好まれた。菓子を任されたのは、「とらや」と「川端道喜」だ。「とらやは日常的なお菓子を、川端道喜は行事食をはじめとした7割を任されました。御所には道喜門という専用の通用門があって、明治維新が起こるまでは〝御朝物〟と呼ぶ朝食の餅を届けていました」。

粽をかたどった「水仙粽」は川端道喜の名物。とらやは羊羹のほかに、季節を愛でる生菓子もおすすめだ。松本さんは例年秋(2019年は10月1~15日)販売される、江戸後期の天皇が御銘した「本練柿」を心待ちにしている。

文=古都真由美 写真=板野賢治
2019年10月特集「京都 令和の古都を上ル下ル」


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