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写真で残すニッポン - ④

杉の町が雪化粧した日

鳥取県・智頭町(ちづちょう)

鳥取県智頭町は、人口約800人の小さな町。面積のおよそ93%が山林に覆われており、そのほとんどが杉であることから、別名「杉の町」としても有名だ。見渡す限りの目が覚めるような緑、鳥取砂丘を育んだ千代川の源流、懐かしき日本の面影を残す山村集落……。こうした地域資源や景観は、未来にまで残すべき価値のあるものとして、「『日本で最も美しい村』連合」に登録されている。そんな智頭町が、近年打ち出しているのは“疎開のまち”としての魅力。なにかと目まぐるしい現代社会に背を向け、ゆるやかに流れる時間と美しい自然の中で、本来の人間らしい生活のリズムや感性を取り戻す。言葉にしてしまうと簡単に聞こえるが、ただ歩いているだけでそれを体験させてくれる場所は、あまり多くない。加えて智頭町では、豊かな自然資源を活かした「森林セラピー」にも積極的に取り組んでいる。これは森林浴を一歩進めた概念で、森の中に身を置き、森を楽しみながら、歩行や運動、リラクゼーション、ライフスタイル指導などを実施するという試み。単純にリフレッシュできることはもちろん、医学的にも心身の健康維持や増進、疾病の予防などに効果があることが実証されてきている。このように“緑”のイメージが強く根づいている町に、今年、記録的な大雪が降った。もともと智頭町は「雪まつり」などのイベントを行なっており、決して雪に縁遠い場所ではなかったが、その地元の人々でさえ驚くほどの降雪量。そこに浮かび上がってきたのは、町並みも、山々も、ふわふわの雪化粧をした“白”の世界だ。いつもとは異なる地域の表情に心を惹かれて、写真家の柄木孝志さんは智頭町に足を運んだ。手にしたCanon EOS 5D Mark Ⅳで、まだ、誰も知らない智頭町を切り取る。

芦津渓谷

記録的な大雪後、スノーシューを履いて芦津渓谷へ向かう道すがら、ふと、杉に積もった雪の落ちる音で足を止める。「EOS 5D Mark Ⅳの高解像力が、きらきらと陽光を反射しながら舞い散る雪の粒までを再現してくれました」

DATA

  • 鳥取県智頭町
  • 面積:224.70km2
  • 人口:7383人(2017年2月1日現在)
  • 特産品:諏訪酒造「諏訪泉」、杉の木工製品、銘菓「紅どうだん」

全国の町の魅力を写真で伝えています

今回、雪の降る鳥取県智頭町を訪れたのは、写真家であると同時に、地域活性プロデューサーとしての顔を持つ柄木孝志さん。日々、写真を通じた地域活性化の活動に尽力している。「本当のところ、自分が写真家であるという意識はあまりないんです。地域の魅力を引き出すために写真という手段を選択して、それをひたすら突き詰めてきたという感覚ですね」。柄木さんの考える「写真を通じた地域活性」とは、外に向けたPRでありながら、内側の人々の意識を変えるインナーブランディングでもある。外から来た人間がいきなり改革をしようとしても話を聞いてもらえないが、まず最初に地域の人たちが知らない自らの町の魅力を切り取った写真を見せることで、「もっとこの地域をよくしたい、この魅力を発信したい」という前向きな気持ちを芽生えさせるのだ。だからこそ、普段から馴染みのある地域以外の依頼を受けた際には、まず1週間から10日程度をかけて自由に撮影して回ることにしている。先入観にとらわれることを避けるために、事前の情報は仕入れず、自分の感性に頼って魅力的なポイントを探す。これによって、まだ知られていない地域の隠れた魅力を見つけ出すことができるのだ。

写真家

柄木孝志さん

鳥取県米子市にIターン。鳥取の名峰・大山を中心に、さまざまな地域の美しい風景や隠れた魅力を切り取るなど、写真を通じた地域活性化に尽力。東京カメラ部10選

その1枚が、人の流れを、地域の意識を変える

住まいのある鳥取県を中心に、北は北海道から南は沖縄まで。全国から相談が寄せられている柄木さんだが、もともとは自身が、都会の慌ただしい毎日から離れるために鳥取へ来た移住者だった。その当初の経験が、現在の活動の原点になっている。「地元の人たちが、『なんでこんなところに来たの?』って言うんですよ。外から来た僕にしてみれば、暮らしやすくて、風景はきれいで食べ物も美味しいし、どうして自虐的になるなのかが分からなかった。もっと自慢したらいいのにって」。そんな折、柄木さんが目を奪われたのは、朝焼けに染まった鳥取県の名峰・大山や、夜になると空一面に広がる星々。当時、新緑や紅葉の写真を目にする機会はあったが、そうした美しい瞬間があることは、実際に暮らし始めてみるまで知らなかった。そのとき、「誰も撮らないなら自分が写真を撮って、こんなに美しい場所なんだと地元の人たちに伝えよう」と、カメラを手にとったのだ。「不思議なもので、言葉でいくら説明しても理解してもらえないのに、写真を見せた瞬間に伝わることがある。事実、僕の写真が自治体のポスターなどで使われるようになってから、鳥取に星空を撮影しにくる人がものすごく増えました。たった1枚の写真が人を動かす、意識を変える。その可能性を信じているんです」。

智頭宿

大雪のなか、隣近所でどこか楽しそうに会話をしながら雪をかく人々。「超望遠レンズで、雪に染まった杉林とたくましく生きる人々の遠近感を表現しました」

在りし日の日本をいまに伝える美しい村

伝統的建造物群保存地区に指定されており、昭和30年代の山村集落の姿をいまに伝える板井原集落。落葉広葉樹林内に、杉や檜の天然木が混在する雄大な芦津渓谷。智頭には、古き良き日本の面影や美しい自然が色濃く残っている。「坂井原集落の雪景色は、明るい月が雲に隠れた瞬間を狙って、星空を表現。夜間撮影に強いEOS 5D Mark Ⅳが、茅葺屋根にやわらかな雪の積もる、幻想的な夜を浮かび上がらせてくれました。雪に阻まれ、徒歩でしか向かえなかった芦津渓谷も、めったに見られない瞬間を切り取れたと思います。

杉と雪と、ともに生きてきた人の営み

「センスのいい町」。智頭町を歩き、人々と触れ合う中で、柄木さんはそんな印象を抱いた。「店の絶対数は少ないけれど、全国に誇れる名店が多い。そこを目的として人がやって来る“わざわざなお店”があるのは、町の人々が元気な証しです。以前と比べて需要が少なくなってきた地元の智頭杉を使って曲げわっぱをつくる「mockats」の草刈庄一さんをはじめとして、地域に根ざしながらも、みんながよりよい方向に変わろうという意思をもっている。だからこそ、若い人たちが移住したくなるような雰囲気が生まれてきているのでしょう」。冷たい雪に覆われながらも、どこか温かみがある風景と人の表情。写真を通じて切り取ったからこそ触れられる町の空気、新しい一面が、そこにはある。

雪は抗うものではなく、愛でるもの

かつては鳥取県内で最大の宿場町として栄えた「智頭宿」で、毎年開催されている恒例行事の「雪まつり」。手づくりの雪灯籠が立ち並び、どこか江戸時代を思わせる町並みをあたたかく照らし出す。「三脚を立て、じっくり行き交う人々を撮影する際は、モニターに触れるだけでピントを合わせられるタッチパネル機能を活用。雪まつりの写真はこれまでにもたくさん見たことがあったので、それとは異なるアングルで、新たな表情を引き出そうと試みました。16-35mmレンズのよさをフルに生かした写真が撮れたと思います」

町の魅力を発信するために、一歩ずつ進む

江戸から明治、大正、昭和それぞれの時代の建築様式や技術の変遷をいまに残し、国の重要文化財に指定されている「石谷家住宅」を2001年から一般公開するなど、智頭は全国に先駆けて町づくりの取り組みを行なってきた。智頭宿まちづくり協議会を立ち上げ、ガイドとして町の魅力を発信してきた河村集司さんもそんなひとり。「協議会の拠点である塩屋出店前での撮影は、雪の粒をきれいに表現できるようシャッタースピードは速めに。やさしい笑顔と人柄を表現できるよう、会話しながら撮影しました。また、建物の中でこれまでの十数年に渡る活動を語ってくれる河村さんは、その背中のシルエットから、積み重なってきた数多くの苦労と、町づくりを担ってきた誇りを伝えようとしました」。

智頭を通して知ったEOS 5D Mark Ⅳの実力

夜間や明け方の撮影をすることが多いため、もともと、最高ISO32000(常用ISO感度)という高感度を誇るEOS 5D Mark Ⅳには信頼を寄せていました。今回の大雪というシチュエーションで実感したのは、その解像力の高さ。はらはらと降り続く雪の様子を、見た光景そのままに、ともすればそれ以上の臨場感で再現してくれたことに驚きました。

まだ誰も知らない地域の魅力を引き出す1枚

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Canon EOS 5D Mark IV

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Canon EOS 5D Mark IV